第133話 コバルの真実
「脱走? どうやって!?」
信じられなかった。
大谷さんから逃げるなんて無理だろ!?
攻撃は毒以外一切効かないし。
その毒にしたって、ゴワケがフルブッパで使い切ったって言ってたじゃないか!?
俺の困惑混じりの声に大谷さんは
「コバルの奴が外で待機してて、乱入してきて強引に搔っ攫って行ったのよ」
苦虫を嚙み潰した表情で呻くように言う。
どうもあいつら、ゴワケの作戦が失敗した場合の策も練ってたらしいんだ。
大谷さんの表情は、本当に悔しそうだった。
完全に侮っていたんだろう。
……まあ、そりゃそうかもな。
だって最強の武力と最強の防御力を持ってるんだ。
自分には誰も勝てないと思うのは自然だ。
でもそういう心持ちはこういうことを呼ぶんだ。
それを俺は痛感した。
だけど
「……一応聞くけど、コバルはどうやって逃げたの?」
そこが疑問だった。
ちょっと想像がつかなかったからだ。
大谷さんの凄まじい魔法から逃げるなんて……
どうやったんだよ?
だけど
「元々コバルには私の攻撃は効かないわ。だから普通に私からゴワケを奪って、そのまま全力で逃げていったのよ」
……えっ?
じゃあ、どうしてコバルは今まで大谷さんに従っていたのか……?
おかしいじゃないか。
そこで俺は
気づいた。
コバルのヤツは大谷さんをどうこうできない。
だけど大谷さんはコバルを直接魔法でボコボコにできなくても、ゴワケをボコボコにするのは楽勝で出来て。
しかもそれは魔法だから防ぎようがない。
……そういうことだったのか。
あいつ……
(ゴワケを守るために大谷さんに土下座していたのか)
そこであいつらが馬車で一緒になったとき。
ずっと手を繋いでいたことが脳裏に蘇った。
……俺は
「あのさ」
俺は大谷さんに視線を向けた。
そして
「……ちょっと、やり方が酷過ぎるだろ」
俺は大谷さんに。
思わず言ってしまった。
てっきり俺はコバルは大谷さんの魔法にビビッて、大谷さんを雑魚認定できなくなってボコボコにされて従っているんだと思っていた。
違ったのか。
あいつ……
ゴワケをやられないようにするために、大谷さんに土下座してたんだ。
自分1人なら、そんなことをしなくても良かったはずなのに。
俺の言葉に大谷さんは
酷く驚いた顔をした。
そして
「えっ、どういう意味?」
本気で分からない、という顔でそう言ってきた。
それに俺は
「あいつ、別に大谷さんに土下座しなくても良かったんだろ! ゴワケを見捨てれば自由にやれたはずなんだ!」
若干怒鳴り気味で、足りない言葉を補足した。
それを聞き
「……何よ……!」
瞬間的に。
大谷さんの態度が冷える。
そしてわなわなと震えながら
「だからどうだって言うのよ!?」
だんっ! とその場で床を大きく踏み鳴らし。
「村田君が何でそんなことを言うの!? あいつらソウジくんの亡骸を踏んだのよ!? いい気味だと思わないの!?」
目を見開き。
早口でまくし立てる。
その様子は……
心外だ。
訳が分からない。
理解できない。
そして……
裏切られた。
そんな気持ちが溢れていた。




