第130話 訪問者の意図
訪問者?
一体誰だ?
「誰?」
大谷さんがドアの方に声を掛けると
ドアから
「五分です。レイコ様」
……ゴワケかよ。
何の用だよ……?
全く想像できなかった。
ゴワケとコバルには暴力以外の仕事は回していないんだ。
大谷さんは。
普段は与えた部屋でずっと待機していろ。
そう命じている。
だから大谷さんは
「一体何の用なの!? 誰が出歩いて良いと言った!?」
すごく棘のある言い方で、ゴワケの訪問に応じた。
こりゃ返答次第で折檻かもしれないな。
……正直気分良くないから、止めるように言いたかった。
だから
「とりあえず、部屋に入れてやったら?」
それだけ言った。
別に可哀想とかじゃない。
いじめに加担してるみたいな立ち位置が単純に嫌なだけだ。
俺の意地みたいなもんだな。
俺がそう言ったからか
「……入りなさい」
しぶしぶといった感じで、大谷さんは入室の許可を出す。
するとセーラー服姿の見た目だけはいい金髪女……ゴワケが入って来た。
ゴワケは張り付いたみたいな笑みを浮かべている。
あからさまな作り笑い。
大谷さんに媚び諂わないと、どんな制裁を受けるか分からないからか。
……何だか本当に哀れだな。
まるっきり、元の世界で大谷さんが味わった立ち位置に堕とされてんのか。
いい気味だ、までは言わないが。
因果応報。
その言葉を思い出さざるを得なかった。
俺としては見てて気分のいいことじゃないから、俺は視線を外して書類を読み始めた。
どうせコイツの用事、俺に対する用事じゃ無いよな。
じゃあ俺、関係無いし。
時間がもったいないから書類読みの作業を再開しよう。
そしてローテーブルに置いてある、次に読む予定だった書類を手に取る。
そちらに視線を落とすと……
ええと……これは。
税収に関する書類で。
開拓民から徴収する米の量が書かれているな。
一応、去年の収穫量と今年の収穫量が並べて書かれているから、税収アップの事実は分かるけど……
こういうの、数年間のデータが要るんじゃなかったっけ?
去年よりは多くても、一昨年はもっと多かったかもしれないだろ。
これ、どうなんだ?
なので俺は
(ゴワケが出て行ったら即訊くか)
そう内心思い、心のメモ帳にそのことを記した。
そのときだった。
「えっ」
急に大谷さんが声をあげたんだ。
驚きの声だった。
……何だ?
そして俺が顔を上げてそれを確かめようとしたとき。
突然、紫色の空気があたりに満ちた。
同時に、急激に自分の身体が痺れていく。
(これ……麻痺……!)
麻痺だ。
どういうことだ……?
身体に力が一切入らない。
動かない……!
手の書類を取り落とし、そのまま俺は横倒しに椅子から転げ落ちる。
床に転がりつつ、俺は何とか動く目玉だけで、状況を確認した。
その場には皆倒れていた。
大谷さんも、ゴワケも……
そこで俺は気づく。
大谷さんが、いつも着ている薬師のローブを着ていないことに。
(えっ)
俺が目を離している間に、一体何があったんだ?
でも1つ、それでハッキリしたことがあった。
それは……
(俺たち、毒を喰らわされた……! 大谷さんが薬師のローブを脱がされているってことは、そういうことだろ……!)
方法は分からない。
誰かがやったんだ。
大谷さんの薬師のローブを脱がして。
同時に毒を使ったんだ。
その誰か。
その一番の容疑者は……!
そのとき。
ムクリ、と起き上がる影があった。
それは
「キャハハハハハハッ!」
そして哄笑する金髪女……ゴワケ。
こいつだ……!
状況から考えて、こいつしかいない。
1人立ち上がり腹を抱えて大笑いし。
ゴワケは
「ざまあみろ腐れモブ陰キャが! これから思い知らせてやるからなドブスがっ!」
溢れんばかりの憎悪が籠った言葉を大谷さんに浴びせたんだ。




