第127話 よその女を見ないで下さい
レイトノーフに帰りつき。
その後が大変だった。
まず、領主に誘拐されていた問題の「アイリス」という少女が保護された。
大谷さん主導で助け出しに行ったらしいんだけど。
その少女は領主の城の塔のてっぺんに幽閉されていたらしい。
その少女は別に肉体的な虐待はされていなかったらしい。
それは良かった。
だけど、誘拐されただけで十分だよな。
酷い話なのは変わらない。
少女は保護された後、開拓村の家に帰されて。
無事、家族と対面できたらしい。
そして誘拐の主犯である領主のアーサーは
「運命の出会いだと思った」
「一人の女性として愛していた」
「いずれは妃に迎えるつもりだった」
そんなことを言いながら、地下牢に幽閉された。
いずれは王都の方から新しい領主と、罪人連行のための人員が送られてくるそうだ。
で、それまでは……
「悪い、リスリー。まだしばらくここで暮らさないといけないらしい」
「しょうがないですよ。領主の代わりになる人がいないと、領地の管理どうするんだって話ですし」
宿舎の自室でリスリーに事の顛末を話すと、彼女は俺を労ってくれて。
そんな感じで、しばらくここで暮らすことも受け入れてくれた。
……ここは開拓村だからね。
娯楽少ないし。
だからと言って「先に王都に帰れ」とは言えないし、言いたくない。
なので彼女がここにまだ滞在しないといけないことに不満を口にしなかったことが俺は嬉しかった。
「でさ」
もう1つ。
俺は彼女に言っておきたいことがあった。
「俺、大谷さんにノーザリア語を教えることになった」
一応こういうことは彼女と情報共有しないとさ。
あまりいい気分しないだろ。
そう思ったから言った。
この言葉に彼女は
「……そうですか」
少し、表情が硬くなる。
色々思うところがあるんだと思う。
彼女は大谷さんに嫌な事しか言われてないしな。
でも
「マサヤさんはあの人の部下ですしね」
その言葉で納得してくれたようだった。
だから俺は
「分かってくれて嬉しい」
そう言ってテーブルの上に乗せていた彼女の手に、俺が手を重ねると
彼女は席から立ち上がって、そっと俺に抱き着いて来た。
そして耳元で
「……よその女を見ないで下さいね」
そんなことを俺に言ってきた。
……ええと。
「俺と大谷さんは別にそんなんじゃ」
別に弁解する気は無いけど。
誤解されたくないからそう言うと
分かってます、と言われて。
続けて
「でも、嫌なものは嫌なんです……それに」
そう言ってから
リスリーは俺をジト目で見
「マサヤさんは、私に大いに他の女性と付き合ってくださいとか言われて嬉しいですか?」
……いやまあ、それは。
確かにそれはちょっと嬉しくない。
まるで俺に興味ないみたいじゃん。
腕を組んでそれを考えて
「……嬉しくは無いな」
そう返すと
「でしょう?」
それみたことか。
何だかドヤ顔でリスリーはそう言って。
そして
「私の父は結婚後は母以外の女性とは日常会話以外はしなかったそうです」
そんなことを。
結構重いな……リスリーのお父さん。
まあだからこそ、リスリーのお母さんはあれだけ貴族の鑑みたいな振る舞いをしたのかもしれないけどさ。




