第125話 教えて欲しい
そこから先は俺の出る幕は無かった。
領主の家臣はそれ以上暴れることはなく、黙って馬車を出し。
そのままレイトノーフへの帰路についた。
コバルとゴワケを置き去りにして、俺たちは先に帰ることになった。
大谷さんと……豆一族に攫われていた7人の子供たちとだ。
……ハッキリ言ってギュウギュウ詰めだけど。
しょうがないよな。
俺たちと別にしたら、この子たちが……
腹いせで殺されるとか。
最後の悪あがきで殺されるとか。
そういうことが起きかねないし。
俺たちの中で間違いなく最強の強さを持つ大谷さんと同じ馬車が一番無難だ。
しかし……
「暑いわね」
ギュウギュウ詰めの馬車の中で大谷さんがそんなことをポツリと。
まあ、これだけ人が乗ってりゃな。
体温で暑くなるのは避けられない。
それにこのくらいの子供って体温高い気がするし。
だから俺は言った。
「窓、開けられないの?」
暑いなら窓を開けるのがセオリーだろ。
まあ、どうやって開けるのか分からんけど。
そう思い、馬車のドアのガラス窓を見つめる。
しかし大谷さんは
「そこまでしなくていいわ……熱の精霊フレイアよ」
暑いから涼しくして頂戴。
その一言で。
馬車内の気温が一気に下がった。
ちょっと寒いくらいに、ひんやりと。
大谷さんが魔法を使ったんだ。
「シハトシオスグニハセァレフェル!」(うわ涼しい~!)
子供たちがそう喜びの声を上げた。
「大谷さん、子供たちが喜んでるよ。涼しいってさ」
俺は別に何も思わず、聞いたままを翻訳して話す。
それに対して
「村田君、あなたノーザリア語本当に分かるのね」
大谷さんはそんなことを言ってきた。
俺は頷き
「従者にノーザリア語の会話を丸投げして、内容が全く分からないのが引っ掛かって」
必死で勉強したんだ。
そう返す。
そのとき、リスリーのことを言うのはやめておくことにした。
大谷さんはリスリーを何故か人間扱いしていない。
名前を出したら絶対にろくなことにならん。
今はリスリーは俺の大切な恋人だし。
悪く言われると俺の方も平静で居られるかどうか。
「そうなんだ」
で、大谷さんは。
幸いなことにリスリーのことに触れたりせずに
「……思えば、私たちが呼ばれたのは……ノーザリア語が分からない暴力装置だからかもね」
そんな、俺たちが今回開拓地に呼ばれた理由を口にする。
多分そうだろうな。
俺もそう思う。
……普通に王国兵を派遣したら、拉致された開拓民に生き残りが居た場合にそいつの口から悪事がバレる。
だからノーザリア語が話せず、高い戦闘力を持つ新規の召喚騎士兵団の出動を要請したのか。
だけどその召喚騎士の中に、ノーザリア語をほぼ完全に話せる俺が居た。
そのせいで全部露見した。
……なんだか、運命めいたものを感じてしまう。
たまたまノーザリア語が分かる俺が居た、って部分に。
そして少し感じ入っていたときだった。
「あのね、村田君」
大谷さんが俺に目を向けて、言ったんだ。
真剣な目だった。
真剣な目で、こう言ってきた。
「私にノーザリア語を教えてくれない?」
さすがに驚愕する。
教える……?
俺が……?
大谷さんに……?




