第123話 人攫いの真実
「な、何を馬鹿な。あなた何を言って」
家臣は引き攣った笑顔を浮かべ、俺にそう言うけど
「イルアウチャ、イアナクカエプスノーザリア」(実は俺、ノーザリア語喋れるんですよ)
続く俺の言葉に、領主の家臣と大谷さんの目が見開かれた。
それで全てを察したらしい。
「させるかあああああ!」
領主の家臣は腰の剣を抜き、俺に向かって斬り掛かって来た。
恐ろしく速い抜きつけと踏み込み。
振るってるのは所謂ロングソードだったが、振るい方は居合のようだった。
抜剣と斬り掛かりが同時だったんだ。
ひょっとしたらノーザリアの剣術には日本の武道の知識も入ってるのかもしれない。
だが俺の方もそのリアクションは予想してた。
この子の……ドロシーの話を聞いたとき。
おそらくこれを口にしたら、何が何でも俺の口を塞ごうとしてくるだろうと。
だから俺は既に覚悟を固めていた。
速やかに鉄人化を使用し、家臣の剣を首で止めた。
あまりにも正確な抜きつけと斬りつけ。
鉄人化を使っていなければ、俺の首は切り裂かれていた。
「何だとッ!?」
自分の斬撃で俺の首が宙を舞わなかったことが信じられないのか、家臣はそのまま俺を刺突するべく腕を引こうと
したとき
「そこまでよ」
「ぐぎゃああああああ!」
家臣の悲鳴が響き、そして倒れる。
倒れた領主の家臣は……
その右足の太腿に。
一本のレイピアを突き刺されていた。
「大谷さん、どうも豆一族にこの子と一緒に攫われた友達が、目の前で領主の家臣と思われる人間に引き渡されたらしい」
俺から逃げ出そうとした女の子。
その子の話を聞いたら……
とんでもないことを言われたんだ。
人攫いに関しては、豆一族と領主がグルだった、という。
豆一族に襲われて、一緒に逃げようとした友達と諸共に捕まった。
そこに領主の家臣と思しき兵隊たちがやって来て。
ギリギリ助かったかと思ったら。
その友達だけ豆一族から引き渡され。
家臣たちは引き下がって行った。
その様子には争いなんてなくて。
グルにしか見えなかった。
だから女の子は
このままじゃ口封じで殺される!
そう思い、逃げ出したんだ。
そんな俺の話に。
問題の家臣は青い顔で目を逸らしている。
顔色が青いのは太腿をレイピアで刺されているからだけじゃないだろう。
俺はそこで
「ちなみにもうすでに王都には報告している」
そう付け加える。
ハッタリじゃない。
俺はトオルといつでも脳内会話が出来る。
だから本当にした。
俺のその言葉に家臣は覚悟を決めたのか
「俺が全て計画した! アーサー様は無関係だ!」
……最後の手段。
全部俺がやりました。
上は悪くない。
嘘としか思えない最後のあがき。
俺はその言葉に、冷静に
「何言ってんだ。……戦地への送迎に一般兵士を使わず、領主にかなり近い家臣しか出向いてない。変だろ……?」
ひょっとしたら俺の方が間違ってるかもしれないけどさ。
俺の感覚では、会社の用事の運転手役に部長職の社員が出張る事態。
あまり一般的では無いと思うんだ。
彼らのやってることはその「一般的でない事態」にしか見えない。
彼ら、領主のアーサーにかなり近い家臣みたいだし。
馬車を出す人員として派遣されるのは不自然だ。
だったら何か理由があるんだろ。
……それこそ……
万一、豆一族に攫われた子供たちがまだ生き残っていたら。
それを口封じで殺してしまって、闇に葬れるように、とか。
そんな理由でもない限り……!
そんな俺の追及に家臣は
「……アーサー様はとても有能な方だ」
もはや言い逃れは不可能。
主への追及は止められない。
そう思ったのか。
語り出したよ。
ここの開拓村を任されている領主アーサーが
どんな奴で。
何を計画したのかを……。




