第122話 王国の闇
逃げ出した女の子は……
そばかすのある顔の、金髪の子だった。
開拓民の子なのか、手入れはそんなにされてるようには思えなかったけども。
もう一度言うが、逃げ出したのは小学生くらいの女の子。
まぁ、だから。
数秒で追いついた。
俺は元々日常的に身体を鍛えてる。
だから足もそれなりに速い。
その状態で
年齢差。
性差。
追いつけない道理が無かった。
パタパタ裸足で駆けていた小さい体を、俺は瞬時に捕獲する。
「オン! テッグフォイア!」(嫌! 放して下さい!)
激しく暴れる女の子。
でも、体格差その他で何の意味も無い。
俺はその子の腕を掴んで
「イウワーエラウオーグニヌルヤワ?」(何故逃げるんだ?)
その意味不明の逃亡を問い質す。
救出に来たのに、何故逃げるのか?
家に帰れるんだぞ!?
だけどその子は
「オン! イアトノウエイド! イアリウルエブデリック!」(嫌! 死にたくない! 殺される!)
そんなことを大声で叫んだ。
引き攣った顔で。
……は?
そしてそこからしばらくして。
俺は子供たちを全員連れて、大谷さんたちが待つ集合場所に戻って来た。
馬車で乗り付けて、作戦行動を開始したあの場所だ。
俺がそこに辿り着いたときには。
作戦の一環でスキルで張った結界はもう解除されてて。
あとは帰るだけの状態になってた。
「ご苦労だったわね村田君」
そこで大谷さんが兵団長らしく、俺を労う言葉を掛けてくる。
俺はそれに黙って頷いて
その場に進み出る。
一緒に来た実行部隊の他のクラスメイトたちは、ほぼ全てもう馬車に乗り込み済み。
大谷さんだけが兵団長の責務か、外に出ている状態。
腕組みして仁王立ちで待ち受けていた大谷さん。
俺の帰還を待っていてくれたのか。
今、この場では。
開拓地の方から一緒について来た領主の家臣団数人だけが外で事後処理を行ってるみたいに見える。
何をやっているのかあまり良く分からないけれど。
そして
「いやはや、ご苦労様です」
……ここまで馬車を走らせてくれた、開拓地の領主の家臣の人の1人が
「お先にお帰り下さい。我々が後から馬車を用意させて、その子たちを開拓村に送り届けますから」
そんなことをにこやかに言ったんだ。
つまり、子供を置いて先に帰れと。
そこで、俺の中で色々と確認が取れたと思った。
なので俺は念のために
「いや、この子たちは俺が連れ帰ります。俺自身が責任をもって親元に返します」
ハッキリとそう伝える。
その瞬間、家臣団の男性の顔が強張ったのを俺は見逃さなかった。
――ビンゴだな。
「どうしたの村田君? 攫われていた人間の連れ帰りなんて別にあなたの仕事じゃ」
大谷さんが俺の言葉を不審に思ったのか、そんなことを言ってきた。
だから俺は
「大谷さん、ひとつ問題発生だ」
ハッキリと言った。
それは
「……この開拓村の領主、魔族の襲撃に見せかけて領民を攫っているぞ」
その俺の言葉に、大谷さんの目が大きく見開かれた。




