第121話 何で逃げるんだ?
木製の牢屋を開けさせ。
そして中の子供たちを解放する。
「クナァトウオーロフグニヴァスイア」(助けてくれてありがとう)
「ウオーディヴァスイアダエフィル」(あなたは命の恩人です)
解放された子供たちの言葉。
ボソボソとしていた。
囚われていた子供たちは風呂にも入らせて貰えてなかったのか、何だか野良犬のような臭いがした。
動物の臭いだ。
酷過ぎるだろ。
お礼は言ってくれるけど、元気がない。
多分、当然だよなコレ。
……どうすればいいんだろうな?
風呂って用意できるのか?
それとも水浴びをさせればいいのか?
だから
「おい豆一族」
牢の解放をさせた豆一族の男に俺は
「……お前ら、水浴びみたいなことをやって身体の汚れは落としているのか?」
なるべく怒りを抑えてそう訊ねる。
するとそいつは
「ここから向こうの方角に川がありますから」
そう、ビクつきつつ返答。
川か……
風呂に入れてあげたいけど、この環境では無理ならしょうがないよな。
なので俺は
「分かった。ありがとう」
一応礼を言って。
豆一族が指差した方角に、助け出した子供たちを連れていくことにした。
一応服代わりに、毛皮を持って来させたけど。
モノがただの毛皮だからちゃんと着れてない。
各々工夫して身体を隠しているけど、限度がある。
それを男の子は多分そんなに問題視してないけど、女の子は嫌だろうな……
なんとかしてやりたいが、何も思いつかないからしょうがない。
「ウォロフイア」(ついてきて)
そう言って俺は川まで連れて来て。
「エタラペスイブレドネグドナエハタブ」(男女に別れて水浴びしなさい)
「エブルフェラックトンオトハサウヤワ」(流されないように気を付けろよ)
暫定的な保護者として、そう子供たちに言った。
川は別に激しい感じじゃなくて。
水はかなり綺麗だった。
元の世界みたいに汚染されて無いんだな。
透き通るような水だ。
……伊勢の五十鈴川を思い出した。
旅行で行って、見たときに感動したよ。
良く見ると小魚が泳いでて。
川底には蟹がいるのも見える。
本来の自然環境って、こういうものなんだろうな。
子供たちは嬉しそうに川に入り、監禁生活で汚れた身体を洗い始める。
俺は近場の石の上に腰を下ろしてそれを眺めて
(これだけは救えた)
なんとなく、満足感のようなものを感じていた。
あまり他人に言えることじゃないけどな。
英雄になったような感覚だと思う。
たった数人だったけど、その数人の人生を守れたって。
(自分の力って、自分のために使ってもやっぱ嬉しくないだろ)
つくづく俺はそう思う。
そう思ったとき。
俺の頭の中で、コバルとゴワケ。
そして大谷さんの姿が過った。
大谷さんの姿が過ったことについて、俺は何だか嫌な気分になり
舌打ちしたい気分になった。
そのときだった。
バシャッ、と。
大きな水音を立てて。
いきなり1人の女の子が逃げ出したんだ。
(へっ?)
わけがわからなかった。
明らかに逃げている。
裸でだ!?
何で逃げるんだ!?
やっと助かったのに。
全く理解できない。
だけど
(ほっとくわけにはいかんだろ!)
俺は駆け出した。
……捕まえないと!




