第120話 連鎖呪法とは
「連鎖呪法って何だよ……?」
「ヒトの集団に掛ける魔法」
連鎖呪法を知らない俺に、淡々と大谷さんが説明してくれた。
連鎖呪法とは……
人間の集団に掛ける魔法らしい。
集団のリーダーが誓ったことを集団全体に強制させる魔法だそうだ。
必要なのは
1.連鎖呪法を使うために作った契約書。
2.呪法対象者の血判。
3.呪法対象者の誓い。
この3つ。
これが揃ったとき、呪法対象者が誓ったことを、呪法対象者だけでなく呪法対象者を上位者と仰ぐ人間全てに強制させることが出来る。
だから「連鎖呪法」なんだ。
「だから、構造上ごまかしが出来ないのよ。豆一族のオサが誓ってしまったからね」
つまらさなそうに大谷さんはそう言う。
俺の方は「何て恐ろしい魔法があるんだ」と戦慄したのと。
何故俺たちは連鎖呪法の使用対象にならなかったんだという疑問で頭がいっぱいになる。
……召喚直後に連鎖呪法を使えば、俺たち全員を奴隷にできただろ……?
何故そうしなかったんだ……?
何か理由があるのか……?
「なぁ、大谷さん」
連鎖呪法を掛ける手順って詳しくは分かるのか?
無視してはいけない気がしたから、俺はそう訊ねようとした。
だけどその前に
「そんなことより」
大谷さんは話を切り替えた。
それは……
「……豆一族に攫われた人間の所在をしっかり訊いておいて。無視するわけにもいかないでしょ」
確かに。
今はそっちの方が大事だ。
連鎖呪法について訊ねるのは後でも出来る。
まずはその、攫われた人たちを保護しないと。
「分かった」
俺はそう返し。
近場の豆一族を捕まえて
「攫った王国民はどこにいる?」
俺は訊ねた。
「こっちですわ」
若い豆一族の男に連れられて来た場所。
そこは
酷いものだった。
人間が囚われていた。
裸に剥かれた少年少女たちが数人、木で出来た牢屋みたいなものに入れられていた。
全員俺より年下に見える。
年齢で言えば小学生くらいだ。
悪臭がした。
どうも糞便も牢屋の中ですることを強制されてるみたいだ。
(トイレ……あと、何で裸なんだよ……酷過ぎるだろ)
お前たちは動物と一緒って思い知らせるためか?
ふざけやがって。
だけどその怒りをコイツにぶつけてもしょうがない。
なので俺は
「……少ないな」
気持ちを抑えてそう訊ねる。
こいつらは俺たちに逆らわない。
そこは理解していたので
これで本当に全部なのか?
そんなつもりで訊ねたんだ。
こう訊けば全部喋るだろうと
それで「これで全部」ならおそらくそう。
これで全員なんだろう。
だけど
「他は死にましたんで」
俺は豆一族の男のその言葉でショックを受けた。
死んだ……?
「何で死んだ!?」
反射的に訊ねる。
返って来たのは
「仕事の手伝いを失敗するたびに殴りつけてたら死にました」
手伝い……
ようは奴隷として使って、失敗するたびに暴力を振るっていたら死んだ。
そう言ったんだ。
俺はそれを理解して発作的に
「クズがッ!」
……そいつの顔面に拳を叩き込んでいた。
許せなかった。
多分俺は……
魔族たちに攫われて、裸に剥かれて。
ここで無理矢理奴隷奉仕を強いられていた子供たちに
自分たちの境遇を重ねたんだと思う。
一瞬、あのハゲの顔が脳裏に浮かんだ気がした。
だから手が出てしまったんだ。
「ぐへえ!」
豆一族の男は俺の拳を喰らって派手に地面にぶっ倒れ
「スミマセンスミマセン!」
そのまま俺に、地面に額をこすり付けて謝って来る。
鼻血を垂れ流しながら。
……思わず殴ったけど。
コイツをぶちのめしても何も変わらない。
だから俺は大きく息をして自分を抑え
「……この子たちを外に出せ。あと、布か何かを持ってこい」
俺は平謝りするそいつにそう命令した。
怒りを爆発させるだけじゃ何も変わらないしな。




