第116話 トウジッ!
「う、動けねえ……何でだ?」
コバルが膝を折り、呻き声をあげている。
何故だ……?
どうしてだ……?
今、何をやったんだ……?
コバルのスキルは「雑魚無双」
自分より弱いと感じる相手からの攻撃を一切無効化するというもののはず。
豆一族の男が何をやったのか正確には分からないが、コバルは今、動けなくなっている。
麻痺か? 麻痺なのか?
どうして麻痺したんだ!?
そこに答え合わせがあった。
「ぐへへへ。どうだぁ? このダンジョンアイテム『麻痺の指輪』の味はぁ?」
コバルに向かって突撃した実行犯と思しき豆一族の男が、勝ち誇った笑みを浮かべる。
自身の左手人差し指に嵌められている指輪を誇示しながら。
……ダンジョンアイテム!?
あれ、ダンジョンアイテムなのか!?
今、豆一族の男は「麻痺の指輪」という名前を口にした。
そこから考えるに……
さっきの紫色の靄は毒ガスだとか、そういうのだってことなのか?
雑魚無双は毒には無力……?
俺はこの結果にその可能性に思い当たったが
正直、説得力はあると思った。
まず、雑魚無双でも「投げ技」は無効化できない。
理由はおそらく、投げで喰らうダメージは、己の体重由来だからだ。
前の戦いの際、コバルを足払いで盛大に転ばせた際
アイツは「痛い」と口にした。
だからアイツは投げられるとダメージを負うんだ。
そこから考えるに……
雑魚無双のスキル効果の加護は、あまり分厚い壁のようなものでは無いのは予想できる。
ホンの少しでも、判定に迷うような状況になると、たちまち効果なしになるんだろう。
……そう考えると「毒ガス攻撃」は……
空気自体を変質させており、そこで魔法の効果が終わってるという判定になるのかもな。
そしてその変質した空気を吸い込んで、身体が麻痺してしまうのは事故であり、雑魚から攻撃されたことに入らない……そういうことなのでは!?
「死ね!」
「殺してやるわ!」
報復が始まった。
動けなくなったコバルが、周囲の豆一族の男たちに袋叩きにされていく。
寄ってたかって、槍や斧、剣で斬り掛かり、切り刻もうとするが……
「なんやねん!?」
「何で刺さらへんねん!?」
「クソがぁ!」
豆一族たちの困惑、焦り、苛立ちの入り混じった叫び声が響き渡った。
身体が麻痺していても、周囲の豆一族が雑魚であるというコバルの認識がある以上、その攻撃は無効だ。
普通なら即座に命を失っている状況なのに、コバルは生きていた。
(とりあえずは大丈夫か……)
一瞬肝が冷えたけど、最悪の事態にはなりそうもない。
雑魚無双が有効なうちはコバルは無事……
だったらその間に俺は他の豆一族を
そう思ったときだった。
「トウジ!」
……全く予想していなかったことが起きた。
ゴワケの奴が……
袋叩きの憂き目に遭っているコバルに向かって走り出したんだ。
目を見開いた、必死の形相で。
……狂戦士の斧を両手で振り上げながら。
まさか、助けるつもりなのか!?




