第113話 いじめの連鎖だろ
「ギャーギャー喚くなデブ猿どもが!」
豆一族の威嚇の声に、ゴワケが叫び返す。
猿か。
……自分たちが普段、大谷さんにそう言われてるから他人に言いたいのかもしれないな、と。
そこに思い当たると、すごく嫌な気分になる。
デブ猿というのは、身体のパーツの比率の問題で、彼らがあまりスリムに見えない種族だからだろう。
で、デブ猿と罵られた豆一族たちは
「何がや貧弱な雑魚!」
自覚がない罵倒だからか。
あまり刺さってる感じがしない。
……まあ、そりゃそうだろうな。
俺だって筋肉だるまに近い彼ら魔族たちに
仮に「モヤシ」なんて言われてもさ。
俺自身自分をモヤシとは思って無いから、別に腹は立たないと思うわけで。
そんな感じで、俺が成り行きを見守っていたら
「うるせえゴミが! 俺たちはイライラしてんだ! 俺たちを怒らせたお前らが悪い!」
続いてコバルが怒鳴り返し来た。
大谷さんに虐待を受けている鬱憤を、ここで晴らす気なのかもしれない。
こいつらの振る舞いには嫌な気分にしかならないな。
これまるっきり、いじめの連鎖だろ。
そしてコバルは近場の魔族に雷の槌……大金槌を振りかざし襲い掛かり、力任せに殴りつけてぶっ飛ばす。
「うがああああっ!?」
コバルの大金槌の薙ぎ払いで、だるま体型の魔族の男がまるっきり雑魚同然にぶっ飛ばされる。
コバルのスキル「雑魚無双」の発動条件は本人の気持ちの問題だろうしな。
……多分、これでコバルはこの場では無敵だ。
しかもスキルで致命傷を2回までキャンセルするバフまで貰ってるし。
案の定、その後に矢や氷の槍の雨がコバルを襲ったけど。
コバルは全く何のダメージも受けず、豆一族たちを一対多で無双していく。
完璧に手が付けられない。
そしてゴワケの方も
「焼き払ってやるデブ猿! マヌケ! キモイんだよ!」
左手の指輪から激しい火炎を放射し、周囲を焼く。
灼熱の炎が豆一族たちに襲い掛かり、炎上させる。
「ぎゃああああ!」
「おまえらあああああ!」
吹き上がる悲鳴。
そして怒号。
豆一族からも炎への反撃で矢や電撃が飛んでくるが、ゴワケは自身のスキルの効果とダンジョンアイテム狂戦士の斧の効果で実質ノーダメ。
ダメージを受けた端から再生するし、痛みが無いから怯まないんだ。
ここの魔族は洞窟に住んでいる関係上、焼き払われる住居は無い。
そのせいで、火炎放射の被害はそれほど酷くはならなかったと思う。
前のときよりは。
俺としても、家を焼くのは何か嫌だし。
あと、炎の中で戦うのは避けたいさ。
鉄人化で誤魔化し切れるか分からないしな。
だから少しだけホッとしながら。
ゴワケやコバルから離れて、別の豆一族の相手をするべく一歩踏み出した。
俺たちのいきなりの襲撃に豆一族の男が、槍を手に目を吊り上げて怒り狂ってる。
俺は一応
「降伏するんだ」
そう呼び掛けつつ立ち向かった。
そしてそれに対して
「何がや! 舐めんなや!」
身体中に大きな枝豆の鞘で作られた防具を身に着けた、達磨のような男が応え。
ソイツから突き出される力強い槍の一撃。
それに対して。
俺は避けるよりも受けた方が良いと思い。
俺はスキルを発動させてその突きを弾く。
渾身の突きみたいだったけど、流石に鉄の塊には刺さらないよな。
腹に命中したが弾かれる。
それに驚愕する魔族の男。
そこで俺はもう一度、降伏を呼び掛ける。
「勝ち目はないぞ! 王国領に手を出すのはやめろ!」
無駄に他者を傷つけたくないのと。
あとは……
俺としては、あまり戦いたい相手じゃないのがある。
大谷さんは「王国の家畜や子供を攫う奴ら! 人の形をした獣と思え!」って言ってたけどさ。
セレーネさんが滞在してた魔族の集落で、俺はそれなりの扱いを受けていたからな。




