第109話 お呪いと地獄の移動時間
そして次の日。
「それじゃ行ってくる」
俺用の軍服は無いけど。
砦で保有していた予備の軍服で、サイズが近いのを借りて着替えてきた。
大谷さんに命じられているから。
今日、俺は戦場に出ることになっている。
なので朝、俺はリスリーに部屋から送り出されるわけだけど。
「マサヤさん、これを」
出かけにさ。
部屋のドアのところで彼女に何か渡された。
確認してみると。
……パンツだった。
白パンツで、素材は何だろう……?
絹?
というか……
何でパンツ?
「これ、どういうこと?」
思わず訊ねると。
リスリーは少し恥ずかしそうだったけど
「今回は私がマサヤさんについていくことができないので」
……どうもお呪いらしい。
無事に戦場から帰って来れるように、女性の下着を持っていくって。
「これ、キミの下着?」
そう訊ねると彼女はコクンと頷いた。
なんか、どっかで聞いたことあるな。
戦地に向かうときに恋人とか奥さんの下着を持っていくっての。
……これも日本から伝わったお呪いなのか?
俺が知ってるってことは。
まあ、リスリーは俺に無事に帰って来て欲しいから、こうして下着をくれたわけで。
そんなの受け取るしか無いよな。
……無論、ちょっとドキドキする。
これはお呪いのアイテムで、リスリーの気持ちなわけで。
加えて好きな子の下着でもあるわけで。
ぶっちゃけると、要らないわけないし。
どこに入れるか少し考え、ズボンのポケットは違うと思ったので、上の胸ポケットに入れることにした。
胸ポケットの方が大切に扱ってる気がするし。
それに致命傷関係は圧倒的に胸が多いだろ。
頭は狙いにくいし、腹部も無論深刻なダメージを受ける部位だけど、致命傷のイメージにあまり入らないし。
だからやっぱり、胸ポケットが相応しいよな。
……まあ、本当のところは頭と腹部に忍ばせるのが難しいのが大きいけど。
彼女が見ている前で胸ポケットに丁寧に畳んだ彼女の下着をしまい込んで。
「じゃあ、行ってくる」
「ご武運をお祈りしています」
俺たちは抱き合ってキスをして。
そこで俺はリスリーに送り出して貰った。
そして集合場所で集合した後、馬車に乗せられて。
俺たちは出撃した。
戦闘の実行班は俺と大谷さんと
コバルとゴワケ。
この4人が同じ馬車に乗り。
その他、サポート役に役立つスキルを持ったクラスの奴が他の馬車3台に分乗。
そんな感じで現地に向かうことになった。
正直、気まずいというか。
軽く地獄だった。
狭い馬車の中で。
俺の隣で大谷さんが座ってて。
彼女は自分のメモ帳にメモした内容を真剣な顔で読み返していて。
俺たち2人の向かい合う席で、コバルとゴワケが黙って座ってる。
息がつまりそうだ。
大谷さんは兎も角。
俺はコバルとゴワケが死ぬほど嫌いだ。
馬車の向かいの席にいる2人。
こいつらはカレカノの関係性だけどさ……
大谷さんがいるからか、イチャイチャするような真似はしていない。
2人とも、俯いて座っていた。
いたけど。
……目立たないように、手を繋いでいた。
(何なんだよ、カスの癖に)
少しイラっとした。
こいつらはいじめを行い、横暴に振る舞い、周囲に嫌な思いを振りまいていた奴らで。
しかもセックスで出来た命を、消費アイテムとしか捉えないようなゴキブリ野郎なくせに。
何こっそり、愛し合ってますみたいな真似をしてんだよ。
ムカツク。
俺はそう思いながら胸ポケットを握った。
ここには、リスリーがくれたお守りが入ってる。
……彼女に愛されてる実感があって。
それだけで俺は
これから向かう戦場で、きっと上手くやれると信じられた。




