第107話 豆一族殲滅任務
「我々の仕事はその盗賊団を殲滅することでしょうか?」
「まあそうですね。ですがまあ、それは後日に」
大谷さんは領主さんと対等の立ち位置で話をしていた。
……昔とは見違えるようだった。
彼女は力で脅して無理矢理兵団長になったけどさ。
立場が人を育てたってことなのか……?
色々複雑な想いだった。
見た感じ、大谷さんが大きく成長したように見えるから
本来は喜ぶべきなのかもしれないけど。
彼女の暴君のような振る舞いを見ているからとてもそんな気になれない。
……元々彼女は弱気で、嫌なことを嫌とも言えない子だった。
だからいじめのターゲットになったんだ。
ロクな抵抗をしてこないから。
……それが力を得ることで、ここまで堂々として力強い人間になるなんて。
心の強さ、人としての強さって一体何なんだ?
それが少しわからなくなった。
心の強さって、本人の努力で獲得するモノじゃ無く。
他者を圧倒する大きな能力に付随する、オマケみたいなものなのか……?
受け入れがたい考えだけど、そういう風に見える光景だった。
俺がそんな彼女の様子を素直に称賛できない気持ちを持って見つめていると
「それでは明日、よろしくお願いします」
「ええ。今日はゆっくりお休みください」
……大谷さんと領主の会話が終了した。
会話が終了した後、俺たちはまた大きな部屋に集められて。
明日以降に行われる、豆一族を殲滅する仕事について大谷さんから説明される。
どうも明日の昼に、豆一族の集落を襲うらしい。
敵が寝静まった夜間ではなく、明るい昼間に襲うことで「王国に逆らってはいけない」という認識を刷り込むそうだ。
そして重要な事ではあるが
俺たちは別に、豆一族の殺戮を命じられたわけじゃないらしい。
この話を聞いたとき、正直「えっ」と思った。
てっきり「抵抗する豆一族は全員殺せ」と命じられるのだろうと内心思っていたから。
そのことについては正直抵抗があった……というより恐れがあったから少しホッとした。
「荒事は私がやるから、皆は後方支援をお願いね」
そう言う大谷さんに対して
明らかにホッとしている奴らが大勢いた。
正直俺もそんな気持ちが無いわけじゃない。
その後、色々と細々した説明があり
俺は
「村田君は私に同行してくれないかしら?」
……武者修行してて、ドラゴンを討伐して戻って来たという実績が評価されたのか。
大谷さんへの同行を命じられた。
多分だけど……
コバルとゴワケも来るんだろうなという予感がある。
俺はあいつらは大嫌いだから嫌でたまらないが……
「……分かった。大谷さんの万一の警護は任せてくれ」
了承。
折角彼女に認められて接近するためのチャンスなんだ。
逃してたまるかよ。
俺は内心の色々複雑な思いを誤魔化すように。
少し目を逸らしつつ自分の髪を弄りながら。
そう、大谷さんの言ったことに従う旨を口にする。
そんな俺に大谷さんは俺にそっと近づいて
「……頼りにしてるからね」
そんなことを言ってきた。
……正直、馬鹿にされてる気がしないでもない。
これはさすがにちょっと被害妄想が入ってるとは思うけどさ。
だって
災厄級のドラゴンを瞬殺できる人に言われてもねぇ……?




