第106話 領主の話にて
「私はこのレイトノーフを任されておりますアーサー・ティリビーン・ライタンドリジンと申します。アーサーとお呼びください」
アーサー・ティリビーン・ライタンドリジン。
多分名前が3つあるから、やっぱりおそらく貴族なんだろう。
そしてミドルネームがティリビーンだろうから、召喚騎士の家系でもないんだな。
つまり生粋の貴族か……。
召喚騎士になったときに貴族の仲間入りしたわけじゃない人たち……
(少し気になるし、あとでリスリーにその辺を訊ねてみよう)
そんなことを話を聞きつつ考える。
領主アーサーは人格者の風格を見せる人物だった。
話し方は穏やかで、優しそうに思えた。
その領主アーサーの話曰く。
ここレイトノーフの地は数年前から開拓地になり。
入植者を募って開拓していたのだけど。
そこに「元々この土地を所有していた」と主張する豆一族という魔族の盗賊たちがやって来て。
「ここは我らの土地なのだから、その収穫物は全て我らの財産である!」
……と主張し、略奪を繰り返すようになったとのこと。
(なんか俺たちの世界でもありそうな話だな)
領主の話を聞いてて思った。
どこの世界でもある話なのかもしれないな、って。
領土問題を持ち出して、そこで得られた資源の所有権を主張するってこと。
わりとあるあるなのかもしれない。
そこに
「……元々、彼らの持っていた土地だったのですか?」
大谷さんは質問を飛ばす。
俺たちの代表で聞くつもりなのか
領主アーサーは
「それは分かりませんよ。まあここの土地が王国領になったのは十年くらい前ですが」
何でそんなことを訊くんだ?
そう言いたげな顔で。
……彼らにしてみれば、戦争で獲得した時点で既に自分たちの土地なのだ。
何で前の所有者の話が出てくるんだ?
そういう意識なのかもしれない。
ちょっと気になったので周囲を見ると
明らかに眉を顰めている奴が何人かいた。
じゃあ王国が魔族から奪った土地なのかもしれないのかよ。
その魔族たちの主張が、いくらかは正しいかもしれないっていうのかよ。
……そんな思いなのかね。
まあ、気持ちはちょっと分かる。
俺は領土ってそういうもんだろと割り切ってるところがあるから、気にしないでいられるけど。
そうじゃない奴、結構多いもんな。
……でも、大谷さん。
そこを訊ねるってことは……
(もしかして……!?)
俺はそこで嫌な想像をする。
全てを知った後に。
魔族の盗賊団側にこそ正当性があると感じたら、ひょっとして豆一族とかいう連中に手を貸すとか言い出すんじゃ……?
そんな心配をしてしまった。
いや、さすがに。
それは無いよな……?




