第104話 辺境に向かいつつ
王城からの出発時間の夕刻がやって来たので。
何台かの馬車に分乗し、俺たちは辺境に出発した。
リスリーは別の馬車に乗って貰ってる。
一応彼女は俺に与えられた従者だから、同乗してても何も問題無いんだけどさ。
……さすがに目が痛いんだよ。
そっちの方が俺にとって都合がいいとはいえ、俺の方がその視線に耐えられない。
親友を殺されたことの引き換えに手に入れた女奴隷に夢中ですか。
どこからどう見てもクズです本当にありがとうございます。
生きてて恥ずかしくないの?
アンタ人生舐めてない?
そんな、咎める視線。
別に男女別で馬車分乗じゃなかったんだけど。
俺はそういう理由で、リスリーとは別の馬車に乗った。
移動の間。
誰も俺に視線を合わせようとしない。
俺の他にも男子数人、女子数人が乗っていたけどさ。
男子同士、女子同士でボソボソ喋るだけで。
俺には誰も話し掛けて来なかった。
しょうがないので俺は窓から外を見ていた。
……流れる景色には真っ直ぐ続く道があり。
キチンと整えられてる気がした。
流石に舗装は無いんだけど、馬車で通るために都合のいいように厄介な障害物……木だとか、大岩だとか。
そういうものが取り除かれてるように思えた。
たまに徒歩で歩く旅人も見るから。
見たところ治安は良さそうだ。
だけど……
(そういや、俺とリスリーが王都を出てしばらくの距離で、人攫いに出会ったな)
俺はその中で、あのときのことを思い出した。
あのとき、運悪く人攫いに遭遇して。
俺がリスリーを矢から守るために、スキル「鉄人化」に目覚めた。
それに関して
(ひょっとしたら俺、実はあのときからリスリーが好きで、好いてもらおうと思っていたのかもな)
今となってはその可能性もあるかな。
そんなことを考えた。
あのときの俺は、目の前でまた他人の命が無くなるのを見たくなかったという想いだったけど。
ひょっとしたら、それもあったのかもしれない。
……リスリー。
どこの馬車に乗ってるのかちょっと今は分からないけど。
ひょっとしたらほぼ日本人の兵団の中に、1人だけ従者として混じらされて。
居心地悪い気分を味わってるんじゃないのか?
そこに気づいて。
その様子を……居心地の悪さを感じつつ、黙って座ってる彼女を想像して。
(降りたら謝ろう)
俺はそう思った。
ちょっと自分の事ばかりで、彼女のことを思いやれてなかったかもしれない。
そして馬車は3日間走り続け。
3日目の朝を迎えた後。
俺たちの馬車は、辺境に辿り着いた。
辺境の開拓地「レイトノーフ」に。
デカイ無骨な石造りの城壁と、その城壁に守られた向こう側に広がる田園地帯。
開拓地と言われて、納得の風景。
……馬車内の会話を盗み聞きしたんだけどさ。
ここの領主はおそらく実力者が配置されているそうだ。
何故なら、魔族領の近くで、王国的には危険な地域に該当するから。
王国でも腕利きと認められた人間が、領主として配置されている可能性が高いらしい。
「辺境ってくだらない土地ってわけじゃないんだよ」
馬車内で、これから自分たちが行く場所がどんな場所なのかを話題に話をしてた奴が。
辺境を軽く見ている奴に向かって、そう言っていたんだよ。
……多分、正しいと思う。
江戸時代でも、外様の大名は実力者揃いだったはずだし。
ソウジからの受け売りだけどな。




