第101話 知らなかった大谷さんの一面
「魔族の盗賊団ですか」
ハゲの言葉に大谷さんが口を開いた。
この場では大谷さんだけが発言を許されてるのかね。
空気的にそんな気がした。
大谷さんの言葉にハゲが頷いた。
「ええ。魔族は部族差が大きく、ただ明確な決まりを持たないだけで比較的穏やかな部族も確かにいますが、そればかりでは無いんですよ」
魔族について口にするハゲは、別に「私は大きな問題意識を持ってます」と顔を顰めるような「偉い人間」の顔はしておらず。
微笑を讃えたいつもの顔だった。
そういえばソウジを焼いたときも同じような顔をしていたな。
こいつは。
(……取るに足りない、同じ感覚だってことかよ)
怒りが蘇ってきたが、俺は奥歯を噛み締めてそれを抑え込む。
やっぱあの男の傍にいるのは危険だ。
そのうち暴発しかねない。
大谷さんに近づいて、彼女から色々情報を手に入れないと。
(今に見ていろクソ野郎)
控える姿勢のまま俺は心でそう呟く。
そして大谷さんが、続けてハゲがベラベラと任務の詳細を話そうとする前に。
「レフィカル様、今からあなたが仰ることを今メモしてもよろしいでしょうか?」
メモ取りの許可を求めた。
ハゲは
「構いませんよ。それがあなたたちの習慣なんですし」
それを快諾する。
……彼女は真面目だな。
いや、しっかりしてるのか。
向こうに居たとき、大谷さんはあまりちゃんと向き合わなかった相手だから、俺は気づかなかったけど。
ただの「不良共にいじめられていた可哀想な女の子」だったんだ。彼女は。
彼女にはこういう面もあったのか。
聞いたことを几帳面に記録して、あとで困らないようにするような。
(すごいな。ちゃんとしてる)
俺は感心に近い気持ちを抱き。
少しだけハゲへの怒りが紛れた。
彼女はこうやって後で困らないように動ける計画性みたいなものがあって。
自分が有利になるまでコバルとゴワケの横暴に耐え抜く忍耐力もある。
……皮肉にもこの世界に呼ばれなければ、俺は彼女のそんな一面を知ることはできなかっただろう。
そして大谷さんが胸ポケットから手帳みたいなものを取り出して。
一緒に鉛筆モドキも取り出して、メモ取り準備をする。
ハゲはそれを確認してから任務の詳細を話すことを再開した。
どこに行けだの。
誰に聞けだの。
日程だの。
時間にして10分くらい話していたかもしれない。
話の合間に大谷さんが疑問点を質問し。
ハゲがそれに答え。
それが済んだ後ハゲが玉座の間から引き揚げていき。
俺たちの初任務を伝える……業務連絡って言えば良いのか?
それはお開きになった。
正直。
ハゲからの命令というのが不愉快だったが。
俺はこの任務に少しだけワクワクしていた。
不謹慎かもしれないけど、自分の力を試す機会だと思っていたんだ。
……ここで大きく活躍できれば大谷さんに近づくことが出来るし。
ついでにいえば、ハゲ討伐決行を決断する目安にもなるはずだからな……!




