心が清い人は幸い
「え、献金すると、年収上がるんだ……?」
明子は、クリスチャンだったが、献金は自由と言われていた。だから、ほとんど献金をした事はなかった。
そんな時、献金したら年収があがった、無職から脱出できたなどというクリスチャンの動画を見てしまった。
明子もたいして金持ちでもない。こんな動画を見てしまったら、心が揺れる。
という事で、昔牧師から一応貰った献金袋を引っ張り出し、今月の収入の十分の一をそこに入れた。
そして日曜日の礼拝の時に、献金袋を出したのだが、なぜか、その直後、強い罪悪感に襲われてしまった。
その帰り道もずっと憂鬱になり、明子の表情は暗くなっていた。
「あ、キリスト看板……」
ふと、顔上げると、民家のブロックキリスト缶バッジがあるのが見えた。今は、ちょっと見たくない。明子はスルーし、駅の方に向かう。
駅の近くには商業施設が多く集まり、書店もあった。好きな漫画の単行本がそろそろ出ている事を思い出し、書店に向かった。
「ひっ……」
書店の入り口周辺には、スピリチュアル系の本が大きく展開さていて、小さい悲鳴が出る。クリスチャンがスピリチュアルに否定的だからではない。
「金持ちになりたかったら、賽銭箱に生活費を入れなさい」
「宇宙銀行に入金される寄付の仕方」
「イメージングで望む年収を引き寄せよう」
そんなスピリチュアル本のタイトルを見ながら、罪悪感はマックスになった。自分がした献金は、神様への信仰心ではなく、自己愛いっぱいのスピリチュアルだったと気づき、顔も真っ赤になってしまう。ご利益目的の献金だった。その心はスピリチュアルと何が違うのかわからない。
案の定、次に教会に行った時、牧師から献金を全額返されてしまった。
「献金する前にする事あるんじゃない?」
そこまで言われてしまい、明子は深く頷いてしまった。
その帰り道、キリスト看板を見かける。先週は無視してしまったキリスト看板だ。怖い事書いてあるイメージで、明子はあまり好きではなかったが。
「心が清い人は幸い、か……」
そんな事が書いてあり、意外と怖くない。聖書通りの文言だ。
「そうだよな、見かけじゃなくて心だよな……」
今すべき事はちゃんと聖書を読む事。最近は読んでなく、カバーに埃がかぶり、祈りもしてなかった。こんな心で見かけだけ献金しても、受け取ってくれないはずだ。神様は全部お見通しだったのだ。
明子はこれからすべき事に気づき、前を向いて歩き始めていた。




