ある就活生の独り言
就職活動が辛すぎる。特に面接で自己PRするのが苦手。長所よりも短所の方が話しやすい。私は、自信が全くない人間だった。
こんな調子なので、就職活動は長引いていた。受けた企業はそろそろ三桁に入るが、全く手応えがない。
派遣か、バイトか、それともニートか。どんどん悪い選択肢が頭に浮かぶ。これから面接の為、とある企業のオフィスに向かっていたが、緊張で心臓はドキドキしてきた。
母は就職できなかったら結婚すればいいというが、今の時代共働きが当たり前。そんな呑気な事は言ってられないだろう。
リクルートスーツが居心地悪い。ストッキングやパンプスもそう。にきび跡をコンシーラーで隠した顔も、全てが居心地が悪い。
「あれ? 何この看板?」
駐車場の塀に看板が貼ってあるのが見えた。変な看板だった。「キリスト以外に救いはない」と書いてある。白、黒、オレンジ色のデザインで、妙に目につく。
それにこの文言は何?
キリストってあるから、宗教関係だろうが、それ以外は救いが無いと言い切ってしまってる。
すごい自信だ。
私は普通の日本人。キリスト教より仏教の方が身近だが、「ブッダ以外に救いはない」とか聞いた事がない。やはり外人の宗教は意味不明だと思いつつ、こんな自信は自分にはないものだった。
「なんか縁起が良さそうだし、この看板の画像、待ち受けにでもしてみようかな」
スマホで写真を撮り、本当に待ち受けにしてしまった。ホラー風の看板だと思っていたが、見れば見るほどジワる。これだけ堂々と言い切ってしまっているのも面白いし、他の宗教に一切忖度していないのもジワる。宗教色が強い国にこんな看板があったら、戦争に発展しそうな地雷にも見えたが、なぜか目が離せない。
今の自分に必要なのは、これぐらいの強い気持ちだったのかもしれない。
「なんか緊張感抜けてきたかも」
あの変な看板ぐらい強気になるのは無理だが、もう少し堂々と自己PRしても良いと思う。
「私以外に内定に値するものはいない」とか言ってみる?なんてね。
「よし、面接頑張ろう!」
前を向き、再び歩き始めていた。




