↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
心からネコを信じなさい〜眠る前の優しい物語〜  作者: 地野千塩


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
69/85

神は世の知恵を愚かにされた

「神は世の知恵を愚かにされた?」


 教会へ行く途中、キリスト看板を見た。雪保は、キリスト教に興味があり、教会に通って、牧師から聖書を勉強していた。いわゆる求道者という立場だった。


 キリスト看板とは、よく田舎にある聖書の一文が書かれた看板だ。命令口調というか、脅迫文みたいな一文も多く、世間では怖がられていた。


 このキリスト看板もどこの聖書箇所から引用しているのか、すぐにはわからなかったが、五秒ぐらいたって思い出す。確か第一コリントの一章あたりか。神は賢いものより愚かなものを選んでだとか書いてある事を思い出すが、いまいちピンとこない。


 と言うのも雪保は国立大学を出て、化学薬品の研究をしていたバリキャリだ。結婚を機にキャリアは途絶えたが、隙を見ては資格を取得したりして、頭は悪くない自負がある。今は語学系の勉強に熱中し、翻訳の副業もやっていた。


 語学を勉強していると、聖書の話題の触れる事も多く、興味をもち、教会に通っていた。聖書もYouTubeや書籍でバリバリと勉強しているところだった。正直、牧師から教わる内容は「あー、YouTubeで聞いたわ」と舐めていたりもした。また聖書では安息日は土曜日なのに、日曜日に礼拝やっているのも疑問だった。その件については、牧師も納得いく答えをしないので、ますますYouTubeの方が信頼できる気がした。


 今日も求道者向けの聖書勉強をしたが、あくびを噛み殺していた。「私の方が詳しいのに」と心のどこかで声もする。直感か何かが、教会を離れるように訴えているのかもしれない。


 こうして違和感を持ちつつ、日曜日になり教会の礼拝堂に入る。日本ではクリスチャンは少数派のはずだが、大学の中教室ぐらいのサイズの礼拝堂は、満員だった。パイプ椅子が並ぶ質素な礼拝堂で、本当に大学の教室っぽく見える。


「やっぱり、私は教会に通うのやめようと思うのよね」


 礼拝が始まる前、隣に座る高村冬夜と話す。彼もクリスチャン。熱心に礼拝に通っているようだ。年齢は20ぐらいでフリーターだという。発達障害もあるらしく、なかなか仕事に苦労しているらしい。見た目だけでは何が障害かは不明だが、時々空気が読めず、ハッキリとものを言うところがあり、少し浮いている。


「そう悟りました。礼拝はやっぱり土曜日にすべきだと」


 YouTubeでも土曜日礼拝を推奨するものが多く、終末の事も語られ、毎日のように視聴して勉強していた。なまじ語学も堪能で、海外の情報をアクセスできるので、興味は尽きない状態だった。


「悟り? 俺は自分の悟りはあてにしてないよ。箴言にも自分の悟りに頼るなって書いてあるし」

「へえ。確かにそう書いてあるけど」

「安息日の曜日は揉めるトピックだけど、もう少し教会の様子を見てから決めてもよくね? 自分の悟りなんて本当に当てにならんよ。なんか色んな情報に洗脳されてるっぽい。で、あんたみたいのは自己都合で教会離れたあとにSNSで教会の陰口言いまくるんだよなぁ。陰湿だよなぁ、その場言えばいいのに」


 そんな事を言われるとカチンとする。図星だったからだ。しかも学歴もなく十歳ぐらい歳下の冬夜に指摘されるなんて……。


 居心地が悪くなり、礼拝堂を後にする。帰る事にした。


 その帰り道、再びキリスト看板と目があう。古い民家の物置小屋に貼ってあるものだった。


「神は世の知恵を愚かにされた、か……」


 キリスト看板にはそう書いてあった。朝の光を浴び、今日はあまりホラー風には見えない。


 それを見ていると、やっぱり自分の悟りみたいなものに自信がなくなる。知恵もそうだ。必死にYouTubeを見て勉強いた事は事実だが、あくまでもネットの情報だけ。その全てが正しいのか、自信がなくなってくる。


 自分は学歴もあり、頭もいい方だと思っていたが、そうでも無いかもしれない。その学歴だって親のおかげで得られたもので、運の要素も大きい。いつの間にか自分の努力の結果だと思い込んでいた。ネットも頭のいい誰かが作ったものなのに、あたかも自分で情報収集したような気になっていた。


 突然、恥ずかしくなってくる。自分は、全く頭良くない。むしろ、バカの方かもしれないと気づいてしまった。


 雪保は、踵をかえし、教会の方へ向かった。やっぱり冬夜の言う事も一理ある。決断を下すのはまだ早いと思う。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。