↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
心からネコを信じなさい〜眠る前の優しい物語〜  作者: 地野千塩


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
34/85

キリストは永遠の命を与える

 彼女が死んでから一年がたった。元々身体が弱く、長くは生きられない身体だった。


 僕は看護師をしていて、入院中の彼女と出会ったのが、付き合うきっかけだった。いろいろと事情があり、今は介護施設で働いているが。


 今日は久々に休日。


 近所に散歩に行く。この辺りは、田舎だ。古い家々や野菜畑があり、のんびりとした所だった。


 散歩に行く目的もあった。キリスト看板野撮影。

 キリスト看板とは、よく田舎にある黒と白の聖書のメッセージが書かれた看板だ。


 彼女はクリアスチャンだったから、あの看板を撮影した画像を見せると、とても喜んだ事を思い出す。


「死後さばきにあうとかって怖いんですけどー」


 一人で文句を言いながら、キリスト看板を撮影していく。ホラー風のメッージに思わずたじろぐが、彼女の事が目に浮かぶ。僕が撮影した画像を見せると、無邪気に喜んでいたっけ。クリスチャンの中には、キリスト看板が嫌いな人も多いそうだが、彼女は「見るだけで面白い」と笑っていた。


 辛い治療の中、笑顔を見せる彼女の為に、僕もせっせとキリスト看板の写真を撮影していたっっけ。


 今日、久々に撮影をしていると、当時の記憶が蘇ってくる。


「なんで神様がいるなら、病気なんてあるのさ。っていうか神様と喧嘩した覚えもないし、和解とか言われてもね」


 僕もついつい苛立ち、そんな事を言ってしまう事もあった。


 そんな時、彼女は薄く微笑みながら、聖書の壮大なストーリーを教えてくれた。


「だから、私は死ぬのは怖くはないの。どうか、私が死んでも悲しまないでね」


 なんて事も言っていたが、一年たった今もやるせない気持ちは残っていた。僕は無宗教だったし、十字架とか永遠の命とか言われても、よくわらから無いというのもあるが。


 あの時もっとこうして居ればよかったとか、後悔の気持ちも拭えない。


 彼女はいない喪失に飲み込まれそうだった。悲しまないなんて無理だった。


 後悔や悲しみで胸が占められた時、あるキリスト看板がに目があう。


 ボロボロの空き家の壁に一枚だけ張り付いていた。なぜかそのキリスト看板だけは劣化しておらず、ピカピカだった。周囲には色褪せた紫陽花が咲き、全然写真ちして映える光景ではなかったが、撮影する。


「キリストは永遠の命を与える」


 キリスト看板には、そう書いてあった。


 太陽の日差しのせいで、キリスト看板は余計にピカピカしているように見えてしまった。


 なぜか、泣きたいような気持ちになってくる。


 確かにもう彼女はいない。死んでしまった。


 それでみ神を信じている彼女は、天国では生きているだろう。そう看板が伝えてくれている気がして、悲しみや後悔ではない涙がポロリと落ちる。


 もう一枚、このキリスト看板を写真におさめる。


 もう。誰もこの写真を見るものはいないだろう。それでも今の僕は、救われていた。宗教なんて悪いイメージしかないが、本当のそれは心を救うものなのかもしれない。要はそれを使う人の心の問題なのかもしれない。どんなに良いものも扱い方を間違えば凶器にもなるのだ。逆に正しく使えば、悪いものでは無いはずだ。特に人間の死に関わる時は。


「どうか元気で」


 涙を拭い、天を見上げながら、お別れの言葉をつぶやいていた。


 今はまだ悲しみは消えないだろう。それでも心にほんの少し光が差し込んでいた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。