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心からネコを信じなさい〜眠る前の優しい物語〜  作者: 地野千塩


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ネコの国は近づいた

 会社の帰り道、疲れてヘトヘトになっていた。業務は経理事務なので、体力的には余裕があるはずだが、上司には毎日嫌味を言われ、お局には連絡事項をわざと無視されたり、お菓子外しにもあっていた。他部署にも悪い噂を広められたり。上司はともかく、お局との関係に疲れていた。


 もう20時過ぎている。空は、もう真っ暗だったが、丸い月が出ていた。


「ああ、上司もお局もどっかいってくれないかな」


 本気ではない。丸い月を見上げていたら、ポロッと心で思っている事が溢れただけだった。


 しかし、翌日。


 会社につくと、なぜか社員も上司もお局も全員ネコになっていた。


 いつものデスクにネコとして座っている上司やお局。顔はどことなく似ていて、あまり可愛いとは思えないが。


「にゃー」


 当然仕事もできるわけもなく、私が全部業務をしなくちゃならず、死にそう……。


 それでも三毛猫、ぶち猫になった上司やお局に囲まれながら、怒る気も失せていた。


 どうせネコだし。


 彼らをまともな人間だと思うから、イライラするのだろう。無能だが、可愛いネコだと思うとまともに相手をしていた過去がバカバカしくもなってきた。


「佐々木さん! トイレはちゃんと指定の場所でしてください!」


 こんな風にネコバージョンのお局を追いかけ、躾をしている時間は、ちょっと楽しかったりもした。何よりオフィスがネコだらけというのも目に優しい。ネコの国だ。ずっとこんな風に仕事ができたら良いのに。


「課長、わがまま言わないで、ねこまんま食べてください」


 ネコ達に全員に餌を作り、一斉に食べさせていると、ずっとこのままで良い気がした。もっとも業務は滞り、会社は潰れそうになっていたが、まあ、良いか。どうせネコが社員だし。


「ああ、夢か」


 しかし、それは夢だった。夜中の一時過ぎに目が覚めてしまう。窓の外は真っ暗で、丸い月だけが見えていた。


 変な夢だった。あまりにも変な夢で、苦笑しかできない。


 それでも肩の力が抜けていた。上司もお局もネコだと思えば、いちいち言われた事を本気にするのも馬鹿らしい。やっぱりまともな人間だと期待するから、イライラとするのだろう。確か心理カウンセラーのインフルエンサーも、人に期待するからメンタル病むとか言っていた。


 それにネコバージョンの上司やお局の顔を思い浮かべると、ちょっと笑ってしまう。夢だったが、あのネコ達を思えば、明日一日ぐらいは頑張れそうだ。


「さて、寝直すか」


 そう呟き、再び布団の中に潜り込む。


 おやすみなさい。


 明日はきっと良い一日になりますように。


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