74:黄金髑髏の正体
~前回までのあらすじ~
魔族が錬金術師の履いている下着を強奪しようとしたが、騎士団が来たので逃げた。
「……と、いう事があったのでございます召喚士様」
「うーむ、そんな面白、いや大変な事件であったとは。わしも一緒に行くべきであった。やはりおぬし一人では荷が重かったようだの山田」
「今回は心停止で済みましたが、錬金術師様の手当が遅ければ脳死に至っておりました」
さんざん事情聴取された錬金術師達が自宅に戻ってきたのは、翌日の夕方になってからであった。騎士団に話すかどうか悩んだが、結局聞かれなかったのでハチ・グレートアキタの話は伏せておくことにした。
意識不明だった山田は騎士団の詰所に一晩収容され、次の日に目を覚まして状態鑑定をうけたあと錬金術師と一緒に帰ってきた。今は留置場の服を借りて着用しているが、その様相は控えめに表現して不審者である。
連絡用の小型羽毛竜が一足先に召喚士におおまかな状況を報告しに戻っていたが、詳細までは伝わっていなかった。そのため召喚士は二人が帰ってくると根堀り葉堀り、昨日あった出来事を聞き出していた。
「情報部から資料をもらってきました」
錬金術師は仕事の顔になって記録石板を魔法の鏡に差し込むと、操作して情報を鏡面に映し出した。そこには黄金の骸骨の姿が表示されている。
「不死王のシュタイン。魔王の右腕と呼ばれる魔王軍の大幹部で、高位の魔道士が自我を保ったまま屍人化した存在です」
それを聞いた山田が首をかしげる。
「魔王の右腕? あれ? 魔蜂遣いのプリキユアさんが、確か右腕って呼ばれていたような気が」
それを聞いた錬金術師がうなずく。
「そう、二人とも『魔王の右腕』と呼ばれています。最高幹部『暗黒七本腕』の一員です」
「七本腕」
「つまりあれぐらい強い魔族が、少なくともあと5人います」
「少なくとも?」
「魔族に関しては情報が乏しいのではっきり判りませんが、幹部以外にも未知の強者がいるかもしれません」
「そうじゃのう、もしかすると『淫魔四天王』だの『泡姫十二神将』だの『巨乳十傑衆』だのと名乗る連中が次々と出てくるかもしれん」
「うわあ勘弁してください」
錬金術師は魔法の鏡を操作し、さらに情報の表示を続ける。
「あの魔族は『腐乱拳のシュタイン』という二つ名でも呼ばれる、伝説の殺人拳を駆使して闘う武闘家です」
「あれ? 高位の魔道士じゃないんですか?」
「魔道士はもう極めたので、武闘家に転職したそうです」
「うへえ、どこまで強くなる気なんだ」
「得意技は魔法拳」
「まほうけん?」
「拳に魔法攻撃を乗せて相手の体内に叩き込む技で、魔法障壁で跳ね返せません。決め技は極大消滅双拳」
「何ですかそれ」
「右手に氷系魔法、左手に炎系魔法を発生させ、相反する魔法力を相手の体内に同時に送り込んで対消滅させる技らしいのですが……」
「ですが?」
「詳しい事は判りません。使われた者が全員消滅しているので」
「うえええええ、あの時に使われてたらどうなってたんだ俺」
「当たらなければどうという事は」
「そういう問題なんですか!?」
錬金術師は続いて「魔法の鏡」に黒い鎧の巨人騎士を映し出した。
「あ、これはあの時の……魔族に仕えている家来?……巨人族の騎士ですか」
「巨人族の鎧です」
「よろい?」
「『動く鎧』。屍人系の魔物で、中身は空洞です」
「え、つまり……中の人などいない」
「ただの魔物なのでせいぜい5歳児か、出来の良い犬程度の判断力しか無いようですけれど」
山田は意外な情報に驚きを隠せなかった。




