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73:天へと還る戦士

 魔族と騎士団の乱闘が続く。

もはや山田アキタに注意を払う者はいない。


 山田アキタはすかさず錬金術師をお姫様抱きすると、地面の上で気絶していた召喚士の羽毛竜を一角獣の角で引っかけて拾い上げた。

 そして混乱に乗じて素早くその場を離れた。少し離れた建物の上に上がって現場のほうを眺めると、炎と煙が上がっている。


「これはひどい」

(うわあ)

 呆れる山田アキタの横で、錬金術師は現場の幻像を望遠魔法で撮像する。


 ひとしきり攻撃したあと、巨人騎士は魔族を手に乗せて抱きかかえるように持ち上げた。直後に巨人の背中、両肩、両足から排気口のようなものが現われて、ごうごうと熱風を噴きはじめる。


「何だ! 何をするつもりだ!」

 騎士団員の叫びに答えるかのように、魔族はまたもや高らかに笑う。

わははははは、という魔族の笑い声と共に巨人の体から吹き出る熱風が急激に強まっていく。


「今回はこれで終わりにしておこう。諸君、さらばだ」

 魔族の言葉が終わると同時に巨人の体が宙に浮きあがった。魔族シュタインをかかえたまま上空に向かって徐々に速度を速めながら一直線に飛んでいく。

 そして王都上空の防護障壁を轟音を立てて打ち抜くと、夜空の彼方へと消えていった。


 錬金術師と山田アキタは、離れた場所からただ呆然ぼうぜんとそれを見送るのみであった。


「なんと……我輩の時代とは魔物も様変わりしたものですな」

 巨人騎士が飛び去った方角を見ながら、山田アキタは錬金術師に語りかける。


「あの、ありがとうございました。ヤマダ……ではなくグレートアキタ公爵閣下?」

「正確にはその残留思念である。義によって助太刀すけだちさせていただいた」


 そう言う山田アキタの体から、しだいに赤い光が消えていく。

「……どうやらお別れの時が来たようである。娘子むすめごよ、闇の者の手からそなたを守れた事、嬉しく思う」

「ああ、まだ何もお礼をいたしておりません!」

「礼ならば体を貸してくれた彼に。 ただ、もしそなたが知っていれば教えてほしい。魔王とは誰なのだ? 冥王は今どこにいる?」

「冥王? ……冥王は初代勇者様……異世界から降臨なさった正義の戦士が滅ぼしてくださいました。魔王というのはそのあとに現われた闇の者でございますが、今は封印されております」


 それを聞いて山田アキタの目は大きく見開かれた。

「何と!? 冥王はすでに滅びたのか!? ……では姫は、姫様はどうなされた! ご無事であらせられるのか!」

「ロリリーヌ様でございますか? 初代勇者様と結ばれ、お幸せに暮らされたと伝えられております。この新生エド王国は、お二人がお創りになった国でございます」


 山田アキタはそれを聞くと、おお、と言って片手で顔をおおった。


「ここは……この発展した国はエド王国の未来の姿であったか!

 そうか……姫様もご無事でお幸せに……それさえ聞けばもう思い残す事は無い! あの時、我輩が命をかけた事は無駄では無かったっっ!!!!」


 山田アキタは右手を握りしめ、勢いよく天に向かって突き出した。


「わが生涯に一片の悔い無し!!」


 ドコーンという大音響と共に一筋の光が天に向かって立ち上り、光が消えたあとには全裸になった山田が一角獣の角をにぎりしめ、ボロボロの状態で心停止して転がっていた。

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