58:質問の答えは
ゲゲゲの大先生。
錬金術師はそう書き残しているが、その真名・活動名ともに定かではない。
魔法陣召喚術は大先生が創作し、彼が考案した「魔法陣」という造語と共に、さまざまな異世界に伝播していった術式なのである。
山田が語ったところによれば、その隻腕の大魔道士は、古今東西の妖しき者、怪しげな存在を次々にこの世に呼び出して使役した、不世出の大天才であったという。
その業績はさまざまな記録にまとめられ、日本では「魔法陣」で検索すればその詳細が判るようになっていたと伝えられている。
「なんと、お会いした事があるのか!」
少女は鼻からフハッという音を発した。
「この世界とは時間軸が異なるので、自分にとっては20年ほど前の話ですが。
大先生は自分がこの世界に来る5年ほど前に、天上界に向かわれました」
「そうか……さぞかし偉大なお方であられたのだろうな。
ふむ、どうやらおぬしは、ヤスヒコ様と同郷の者に間違いなさそうじゃ。
……もしや『勇者』か?」
少女の青い瞳が、怪しい燐光に彩られる。
山田は全身をなで回されるような違和感を感じ、変な声を出してくねくねと身もだえする。
「……何じゃこのステータスは。うえ、戦闘力たったの5か……」
「あああ、その次にも何か言葉を続けたそうな顔を」
「粘魔にも負けそうじゃ」
聞いていた錬金術師は思わず苦笑する。
言われた山田は渋い顔をする。
「いや経験値0って、ヒトとしてありえんじゃろ。ステータス偽装なら、もう少しまともな数字にするじゃろうし」
首をひねる少女に、山田はたずねた。
「すみません、ステータス? という意味がよく判らないのですが……経験値って、何の話ですか?」
少女は山田の言葉を聞いて、今何と言った? という表情で絶句した。
「おい、そこの女子。おぬし、こやつにどういう教育をしておるのだ」
話しかけられた錬金術師は、思わず平伏した。
「ははははい、ももも申し訳ございません、実はこの者、わたくしの助手として特殊研究専門で」
「いや、専門特化は別にいいのじゃが、いくらなんでもひどくはないか?
この状態で放置しておくのは、もはや虐待じゃぞ?」
「は、その、時々戦闘はさせているのでございますが、この者は一度も相手を殺めようとはせず」
「……経験値0のままか」
少女は腕組みをし、山田を眺め回した。
山田は妙な雰囲気を感じて身を固くする。
少し間を置いて、少女はくすくすと笑いはじめた。
「……面白い。実に面白い。転生者は大勢見てきたが、ここまで定石からはずれている奴は初めてじゃ。実に興味深い。
おぬしら、わしの屋敷まで来るがよい。ゆるりと話を聞かせてもらおう」
そう言って少女はくるりと向こうを向くと、こちらに来い、という身振りをしたあと、てくてくと歩きはじめた。
山田と錬金術師は顔を見合わせたあと、あわててその後についていった。




