53:ビキニアーマーの騎士と虹色の魔石
中隊長の身長は山田の肩ぐらいまでしかない。外見的には地球人の10代前半ぐらいに見える。
銀色に近い金髪、ふわっとした豊かな巻き毛。淡い色の長い睫が金色の瞳にかぶる。人形のように整った顔、血色の良い小さな唇。その容貌は戦闘職とは思えぬ愛らしさである。
そしてその身体は履き物と局部を除いて、何ひとつ身に纏っていなかった。装飾のついた銀色の金属が最小限の部分のみを覆っていたが、それ以外はすべてが露出していた。
ほっそりとした肢体の薄い肉付きの下に、細い肋骨が浮いて見える。
平らな胸の上に、ほんのりと色づいた小さな両乳首。発展途上ながらも訓練で鍛えられた肉体は健康な躍動感に満ち、露わになっている小さな臀部はしっかりと固く引き締まっている。
山田にとって性癖の対象外であったため鼻血は出なかったが、そういう傾向のまったく無い山田ですら、なにやら怪しい気分になってくるほどの美少年であった。
美少年であった。大事な事なので2回言いました。通報案件じゃないと思う。
男性用ビキニアーマーを装備した中隊長は、鑑定してもらいたい物がある、と錬金術師に告げた。そして彼女と山田を案内し中央広場へと向かった。そこには拾い集められた魔蜂の残骸があちこちにまとめられ、整理して並べられていた。
広場の天幕の中で錬金術師が中隊長から見せられたのは、魔蜂の体内から出てきたという虹色の石だった。
「……間違いありません。『ソシャゲ石』です」
錬金術師の鑑定魔法の結果に、近くにいた騎士団員達がどよめく。
「そしゃげいし?」
山田は初めて聞いた言葉に、首をかしげる。
「膨大な魔力を出し入れできる、特殊な魔石。龍種級の強大な魔物の体内から希に見つかる珍しい結晶体なのだけれど、それが魔蜂の体内から……」
「え? そんなに珍しい石なんですか? ここに何個もありますよ?」
「だから変なの。普通なら上級種を何十匹も討伐して、ようやく入手できるような石。それが中級種の体内から次々に」
「確率的におかしい、と」
「……この発見率からすると……すべての蜂が魔石持ちだった可能性もある」
中隊長は錬金術師の言葉を聞いて険しい表情になり、ただちに王都に連絡するよう部下達に指示を出した。そして錬金術師に礼を述べて天幕から出ていった。
残された錬金術師は遮音障壁を展開し、山田と話を続けた。
「……この場で見聞きした事は他言無用。従者も軍属として扱われるから、秘密をもらしたら動物に変えられるわよ」
「うへえ、嫌な刑罰だな……それはそうと、さっきの話ですけど、すべての蜂が魔石持ち、って、そういう事がありえるのですか?」
「残っていた体組織の魔力残滓から推測して……まだ確証は無いから他人に言っては駄目だけど、おそらく……改造手術されてる」
「か、改造手術?」
「魔王復活に使う魔力を集めるために、魔族が作り出した戦術使役獣」
山田は思いもよらぬ話の展開に、どう反応して良いか判らず固まった。
「ええええ、えーとその、そういう技術が、この世界には有るのですか」
「人類圏では条約で禁止されていて、作った者は死罪なのだけれど……さすが魔族、私達にできない事を平然とやってのけるッ!」
「すいませんお嬢、ご口調にシビれや憧れが混じってませんか?」
困惑している山田の耳元に錬金術師はそっと近づいて、甘い声でささやいた
「でもヤマダ、あなた、もっと強くなってみたいとは思わない?」
「……強く?」
『創世の王』と呼ばれる強化改造人間を作る秘術があるのだけれど、うちの収納庫に、それを作るための石があるの」
「え、作ったら死罪なんですよね!? ていうか、何でそんな石をお持ちなんですか!」
「この世界では、どこのご家庭にも1個ぐらいは」
「あるんですか!?」
「普通は無いわね」
「だったら……あれ、お嬢、何を笑って……あ、やられた。勘弁してください。本当にそういう石を持っておられるのかと、焦ってしまいました」
「それは本当。ああ、条約さえ無ければなー」
「ちょっと待って」
ちなみに山田はその後も生体改造されることはなく、この件が伏線として回収されることは無かった。彼が強大な魔物と戦う手段を手に入れるのは、また別の話になる。
そのあと錬金術師達は天幕を出て、村内に負傷者が残っていないか見て回った。
山田は初めて見る王都以外の集落に、興味津々であった。
そして一通りの調査が終わって休憩時間になると、錬金術師は妙に浮き立った様子で山田に言った。
「せっかくだから、初代勇者様ご降臨の聖地も見学していきましょう」
「え? お嬢、そっちは村の外ですよ? あの、聖地ってこの村の神殿じゃないんですか?」
「あれは一般信徒向けに聖教会が作った山麓拝殿で、本殿はあの小山の上にあるの。行くわよヤマダ!!」
「えええ、あそこまで登るんですか? ……とほほ、お嬢が初代勇者様オタクだって事を忘れてました。こういう時だけは行動力が」
そして騎士団から離れて行動した事が、二人の運命を大きく変えていくことを山田達はまだ知らなかった。
*中隊長さんは後日、別の事件がおきた時に再登場します




