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23:異世界より来たりしもの

 オコメ。それはオショーユ、ネギと共に初代勇者の故郷を起源とする三大勇者食の一つである。


 初代勇者の数限りない召喚実験でも、彼の故郷である日本から生きた生物の召喚に成功したのはオコメとネギのみである。

 オコメに関しては、この世界に召喚されたのはわずか2粒の種子だけで、それが現在ヤシマ大陸で栽培されているすべてのオコメの始祖となったと伝えられている。


 異世界から光と共に現れたその穀物は、品種名を「イセヒカリ」と名付けられている。

 かつて大賢者が神器イセスマを使用し、「異世界の知識庫」から得たイセヒカリの情報が王国に伝わっている。


「初代勇者の故郷、日本連邦ではオコメは神に捧げる神聖な穀物とされている。その中でもイセヒカリは最も神聖視されている品種の一つである。

 初代勇者の故郷において最高神としてあがめられている太陽の女神が、国家中央大神殿において彼女に仕える神官に与えた霊穀で、当事の関係者によって神賜しんしの際の詳細な文献記録が残されており、日本人ならばそれを読むことができる。


 遺伝子解析ではコシヒカリと神賜品種『瑞垣みずがき』の交配種である可能性が示唆しさされており、当初は最高神、あるいは共に中央大神殿にまつられている食物の女神(トヨウケノオオミカミ)に捧げる神饌しんせんとして、神殿の聖なる圃場ほじょうにおいて門外不出の神穀として栽培されていたという。しかしその後に全国の神殿支社に配布され、限定的ではあるが日本全域で栽培されるに至っている。


 しかしトランスポゾンと呼ばれる突然変異発生スキルを有するため、栽培中に餅米に変異したりするなど、特性変化が高率で発生する。そのため栽培しやすく食味も良いにもかかわらず、基幹品種として広く普及するには至っていない。 農家個人からの通信販売(訳者注:アマ○ンでポチれる)でしか入手できないため、その知名度はきわめて低い」

農業協力のうきょうギルド資料16の9)


 山田に与えられた聖餅は、精白したオコメの実を蒸し炊きにして握り固めたもので、表面に薄く塩がまぶされている。その形はヤシマ大陸各地の教会ごとに差異があり、俵形、球形、平たい丸型などさまざまであるが、エド王国の場合は三角形に握られている。


 こうして山田は二礼二拍手一礼のあと聖餅を領聖し、聖教の信徒として認められた。


(うーむ、旨い……米の炊き方も塩加減も完璧だ……どこで米が売っているのか調べなければ。

 そういえば、この握り飯は誰が作ったのだろう。さっきの美人の巫女さんが巫女服にたすきをかけて、熱さに顔を赤くしながら一生懸命に握ってくれたものだったらいいなあ。作ったのが神父さんだったらちょっと萎える。つーかあの神父、無駄にイケメンで腹が立つ。美男子は全員爆発しろ)


 ちなみに今の山田は地球基準だとそこそこ美男子なので、彼も爆発の対象である。


 その後、記憶複写と細胞採取をうけ、「冒険者の書」への登録は完了である。ひきつづいて王国住民台帳への記載が行われ、山田の場合は奴隷登録も別途に追加された。


 首輪につけるための奴隷登録番号が書かれた鑑札と、予防術式付与済票、主人が玄関に貼る「人」という字が大きく書かれたキラキラ光る札を受け取って手続きはすべて終了である。


「お疲れ様です。あとは首輪と服の新調ですが、その前に食事にしましょう」

「食事……『食べ物』を摂るのですか」

「せっかくの外出ですから、お店で食べましょう」

「お店……料理店があるのですか」

「この先にチキュウ料理のお店があります」

「地球料理」

「前から一度食べてみたかったのですが、今まで一緒に行ってくださる方がいなかったので……女性一人で外食するのはちょっと恥ずかしくて」

「奴隷同伴でも問題無いお店ですか。服装規定ドレスコードは……」

「誰でも大丈夫ですよ。今はまだヤマダは首輪をしていませんから、私の相方のふりをしていてください」

「え、はい……え? あ、相方、と、いうと、その、彼氏……ですか?」

「はい、そういう感じでお願いします」

そう言って錬金術師はにっこり微笑んだ。


 山田は鼻血を流しながら倒れたり復活したり、落ち着かない行動をとりながら錬金術師と共に料理店へと向かった。


「異世界居酒屋ノーブル……ここですか」


 今、二人は地球料理を出すという、不思議な店の前に立っていた。

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