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淫魔さんの人間暮らし  作者: 仲田悠
第十話「淫魔さん、夢の生活」
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08-少しずつ手を広げていこう-

 良い循環が生まれ始めてる。

 少しずつなんだけど、周辺の町から移住者が出始めたんだ。

 それもトアイライトの事をちゃんと知ってるヒト達が。

「会えて嬉しいです!定食屋でアイラさんの話を聞いたり、大勢のヒトを救ったって聞いて引っ越して来たんです!」

「俺も!都でも見た事が無い物ばかりだし!」

「ありがとう。ボクのせいで気軽に引っ越し出来なくなっちゃった場所だから、そう言ってくれると本当に嬉しいよ。今日から宜しくね」

 ボクが居るから来てくれた。

 その事実は本当に嬉しくて、ちゃんとイキシアやトアイライト全域に恩返し出来たって気にしてくれる。

「お。やっぱ鍛冶屋少ねえか。前は小せえ町ばかりだと思ったから、仕事が有るんじゃねえかと睨んでたんだ」

「私も同様です。医者を用意するのが大変ではないかって。故郷は少し余裕が有るので引っ越して正解でした」

「そいつぁ良かった。珍しい店が増えてるっつーから手掛けてみたくてよ」

 育成中の要素も向こうから集まった。

 鍛冶屋も大工も医者すらも。

 勉強中のヒト達が育つまでちゃんと繋がってくれた。行商人の姿も良く見かける。

「夢の様です。新品のアーティファクトと言うでも信じられないのに、それが安く沢山並んでいるのですから。逆に取り扱いに注意しないと」

「だよね。それも見越して普通に売ってるんだよ。売るより自分で使う方が怪しまれないよ」

「ですね。マジックポケットは沢山欲しいですし、水筒も欲しい。他の物も素晴らしい物ばかりですから、ここを拠点にしたいくらいですよ」

 アーティファクト屋に関してはそう言う狙いも有って普通に開店させた。

 ここで王都まで売りに行くってヒトが出るだろうから警戒してたんだけど、少し釘を刺せば諦めるだろうとも見てた。

「そこらの金持ちならともかく、王都で王様とか貴族とかに献上する時はほんと気をつけなよ。新品だから絶対怪しませる」

「ですよね。何よりここが狙われる。そうなっては信用的にも商売的にも大損害です」

 うん、やっぱりそうだよね。

 少しでも頭が回る商人なら解ってくれると見てたよ。安心安心。

「武器屋も見に行ってご覧。ボクが開発した安価でミスリル並の武器が並んでる」

「本当ですか!?」

「色が特徴的なんでやっぱり取り扱いに注意が必要だけど、多分あれが一番儲かる。一本は買っていきな。ミスリル並だと解って貰えれば元手の七倍は稼げると思うよ」

「ありがとうございます!必ず寄ります!」

 セルケナス武器は狙い目。

 馴染みの冒険者は全員揃えたし、ここに来るようになった冒険者もセルケナス武器の為に稼ぐ様になってるけど近辺じゃ稼ぎきれないしで供給に余裕が出来てる。

 ここで行商人を定着させる餌になると色々美味しい。

「でさ。この辺りで見ない食べ物を見つけたらボクに見せてよ。この辺りで育てられる物なら育てて料理を増やしたいんだ」

「お任せ下さい!美味しい話を頂けましたし、拠点にするなら料理が美味しいと嬉しいですからね!私もトアイライトの為に働かせて頂きますよ!」

 更に旅先でも美味しくなる事も商談。

 何でも揃う不自由しない場所が更に近付いてくれたよ。

「料理やお酒の豊富さにも驚いていたんです。アイラさんから教わったと聞きましたが、まだ増やせるのですか?」

「それなりに長く生きてるし、ヒトの姿に変装も出来るから結構世界旅行してるんだよね。だから世界中の料理やお酒を知ってる。気楽に暮らすとなると変装しっぱなしは疲れるし無理が有るから、サキュバスでも受け入れてくれる場所で暮らしたいってこのままな訳」

「そうでしたか…。長年色々な場所で商いをしてきましたが、ここのヒト達は温かくて良いヒトばかりですものね。やはりここを拠点にします。王都で暮らすのが夢でしたが、ここの方が良い人生を送れそうな気がしますよ」

 ボクと話をした商人は皆こんな感じ。

 そこからまた良い流れが生まれるはず。材料集めの冒険者と組ませたら良い動きになるだろう。

 ここを拠点にすると決めた商人を集めてギルドで冒険者達を紹介しようかね。

「おおお?そりゃ面白くなりそうだ。なら俺達が遠征する時一緒に行こうぜ」

「本当ですか!?」

「俺達に合わせて貰う事になるが、アイラさんの頼みとかで結構周辺国まで行くんだよ。あー、アイラさん。俺達に会わせたって事は話して良いって事だよな?」

「勿論。ここの商品に使われる材料には魔物の部品も使われてる。魔物素材って呼んでるけど、魔物素材の方が魔法製品を作りやすいんだ。それを集めるのがトアイライトの冒険者の遠征。冒険者は良い素材を集めて稼げるし、皆はタダで頼れる護衛と旅が出来る。沢山必要な時は長く留まるし、皆にとって良い事尽くめだと思う」

「荷馬車出してくれるなら俺達も楽出来るしな」

「「おおおっ!」」

 暇な時にギルドに顔を出して待ってみたり、逆に冒険者から誘ってみたり、提携しながら動けばお互いに楽しいし美味しい。

「ぼちぼちコンサルトが美味しくなるぞ」

「おっと。シャウトウムって奴か」

「うん。シャウトウムの移住が落ち着いたらしいから、ぼちぼちコンサルトの冒険者達が動きだす頃だ。もうちょっと集めて来てよ。今新しい楽器を売り込んでるとこで、結構注目されてるらしいんだ」

「なんと。楽器まで」

「ほんとアイラさん何でも知ってるんだよ。そんで知りたがりなの。楽器を研究中で、職人囲って良い楽器を作らせてるとこなのさ」

 シャウトウムとの契約も済み、移住の説得にも成功して移住させてる。

 コンサルトとも手紙でだけどやり取りが続いてて、完成したハーモニカとアコーディオンが注目されてると返事が帰ってきたよ。

 イキシア産のアイラコンサルトの需要も高まってるから素材集めをしたい。

「どれ、そんじゃ行ってくるか。これから出発するって行商人さんは早速だが来てくれよ。俺達はコンサルトでシャウトウムを狩る」

「んじゃ俺達は南で素材集めすっか」

「おおお!南でしたら是非私を!南に私の拠点が有るんです!報酬を払うのでここに引っ越すお手伝いもお願いします!」

「私はコンサルトへ!楽器に明るい訳ではありませんが、アイラさんの素材集めでどんな楽器が出来るか興味が有ります!」

 うん、出だしから良い感じ。

 その調子で色々と提携して貰おう。


 アッサムとアイリスでも冒険者と行商人を組ませてみる。

「はっはっは。流石はアイラさんだ。成る程、冒険者と行商人」

「行商人からすると少し不自由さを感じるかもしれないけど、安全に旅が出来るのって大きいじゃん?」

「「うんうんうん」」

「確かにな。それなら逆に行商人について行く形で遠くまで素材集めの旅に出るのも良いだろう。新しい何かが生まれると思えば某達も楽しみが増えるのだし」

「「だな」」

 バランがそう言ってくれたおかげで更に広がってくれた。

 こうなると新しい作戦だ。

 インビジブルエアに追い掛けさせ、更に一つ先の国で分布図を貰ってこいと連絡。

 今では馴染みの冒険者パーティ全てがインビジブルエアを抱えてるんで、こうしたやり取りが楽になって良い。

「また面白くなってきたぞ。アイラさん、エアリーグルを貸してくれ。分布図を届けさせる」

「その手が有った。素材地図にして折り返し届けさせるからめぼしいのを狩ってきてよ」

「「よっしゃあ!」」

 使える物は何でも使え。

 エアリーグルも追い掛けさせてまた新しい展開を迎えよう。


 町長さん達と親方、鍛冶屋のおじさん、ミセリナ、更にバーザム爺さんまで集めて読書室へ。

 折角なんで子爵も呼んで作戦会議だ。

 まずは周辺国込みの素材地図。

「これがここと周辺国の魔物の分布図です。素材地図と名付けました」

「これはまた面白そうな物だ。成る程、こうして集めていた訳か」

「ええ。そしてここ数日でトアイライト地方を気に入った行商人を冒険者と会わせましてね。その結果がこれです」

「「おおおおっ!!」」

 戻って来たよエアリーグル。素材地図が広がってくれたよー。

 良い素材が結構有って、今はそれを目指して旅をしてるところ。

「で、親方。軒先にインビジブルエアの為の小屋を作って欲しいんだ。遠征する時に置いて貰おうと思ってさ。そろそろ到着する」

「よしきた。また面白くなってきたぜ」

 向こうからインビジブルエアを送って貰って相談役として置いて貰う事にもしたよ。

 軒先に置いてベルを着ければすぐ通信出来て凄い便利。

「薬草は流石に荷が重いけど、やる気がある奴は薬草記録で覚えるって言ってるし、魔法薬に使える素材も結構有る。バーザム爺さんは新しい治療薬の調合を頼む」

「うむ!薬が増えるのはありがたい!」

 解毒剤とか解熱剤の調合を教えてるんで、新しい治療薬の調合はバーザム爺さんに任せる。

 良い素材が有るし、町の為と薬草を覚えようとする冒険者もいるから少しずつ増えるはずだ。

「良い毛並みの魔物がかなり居るんだよ。確保したらまずここに集まるから、ミセリナは地方内の仕立屋用にサンプル作って」

「やりますやります!色んな毛並みを使ってみたいです!」

 魔法の服に良い毛皮も有る。秋用に最適なのが有るから確保したい。春用のは居なかった。

 仕立屋が依頼しやすい様にサンプルを用意して貰おう。

「おじさん、朗報だ。ジュラルミンの素材が増えるぞ」

「マジ!?代わりの素材って事か!?」

「そそ。成分が同じ奴を見つけた。こいつとこいつ、それからこいつとこいつもだな。こいつもか。どいつも巨体だから量的にも良い。これなら安定供給が可能になる」

「うおおおおおっ!アイラさん万歳いいいっ!」

「ジュラルミンは助かる…っ!」

 ジュラルミンの素材が増えた。成分が同じと判明してる奴がかなり居たんだ。

 調理器具となると子爵は弱いんで、鉄とジュラルミンのフライパンを持ってきて比べて貰おう。

「こんなにちがうのか!?」

「凄いでしょう。しかもジュラルミンは錆びにくいんです。トアイライト地方では大人気でして」

「需要が高まる一方で困ってやした。こんなに代用素材が有るなら供給も追いつきまさあ」

「これは誰だって欲しがるだろう…っ!縁がない私ですら解るぞ…っ!」

 とにかく軽いからね。

 錆びにくいってのも大きい解ると思うし。

「あと、ステンレスとセルケナスの中間くらいの武装用金属も作れる」

「それもデケえ…っ!鋼より上ってだけでセルケナスまでの繋ぎになる…っ!」

 新しく来た鍛冶屋にも情報を流してるし、生産速度的にもかなり楽になる。

 やっぱり範囲を広げると大きい。

 契約すると便利な魔物も居るから捕獲も頼んじゃった。

「実に面白い。様々な要素を合わせて更なる繁栄が生まれるのか」

「アルカナ文明はとにかく偉大でしたよ。魔物素材の知識もずっと深かった。代用素材も有ると全て知り尽くして居た程です。成分分析の方法が解ればボクも調べたいんですけどね。アルカナ文明人がそうだった様に、ボクも色々と組み合わせて試行錯誤しながらアルカナ文明人に追いつきたいと思っていますよ」

 ちゃんと成分が解ればもっと楽なんだけど。

 まあ、長生きだし気長に構えよう。

 その内分析出来る様になるだろうし。

第十話了

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