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淫魔さんの人間暮らし  作者: 仲田悠
第十話「淫魔さん、夢の生活」
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07-優しい悪魔-

 ウチに懐かしい顔が訪ねて来てくれた。

「おおお!お嬢!」

「バルフル!久しぶり!どうしたん!?」

「理由は色々とあるが、お嬢に会いたかったし、奥方にも挨拶したくてな!」

 魔王軍最高司令官の悪魔族バルフル。

 フィルより背丈が高く、凄い体格をした大男。

 義理人情に厚く、仲間思いで優しい奴だ。

 ボクの事をお嬢と呼び、フィルの事を若と呼んでる。魔王になっても若。

「皆、紹介する。魔王軍最高司令官のバルフルだ。見た目はいかついけど魔王城で一番まともな優しい奴」

「宜しく頼む。いやはや、本当に喜ばしい。お嬢にこんなに多くの家族が出来た。今後とも、何卒お嬢を宜しく頼む」

 一番まとも、と言うか唯一クセが無い奴。

 まともな奴でも何かしらクセが有るんだけど、バルフルは表面的なクセが無い。

「おおお!貴殿が!実は貴殿に会う為にも尋ねさせて貰ったのだ!」

「おお?ってこたあ、キューか。用意するから欲しい大きさを教えてくれ。その体格じゃフィルと同じのは小せえだろ」

「ありがたい!頼む為に私が愛用しているキューを持ってきているのだ!」

 あー、それでか。

 まあ欲しがるよね。一番の古株だし。

「親方の台凄えだろ」

「凄いでも済まんな。あまりの出来に丸一日泣き続けた」

「「うあ」」

 だよね。だと思った。

 予想通り大泣きか。

「若が町の者からも歓迎されたと喜んでいたが、私が訪ねても大丈夫だろうか」

「大丈夫じゃないかな。最近じゃケロスが行っても歓迎してくれるくらいだし」

「ケロスすら!?ちょ、案内してくれ」

 唯一のクセの為に案内するか。

 クセと言うか趣味と言うか。

 今は丁度良い時期だし、それ見せれば皆も解ってくれるはずだ。


 そんな訳でバルフルを連れてイキシアの町へ。

 で、思った通りの流れになってくれたよ。

「「わあああああああああああああっ!!」」

 イキシアのヒト達はちゃんと歓迎してくれた。

 強そうとか大きいとか、頼れそうって言葉も。

「おぉおぉおぉぉ…っ!!皆、ありがとう…っ!本当に、ありがとう…っ!ここは、なんて良い場所なんだ…っ!」

 だからバルフル男泣き。大号泣。

 これ見ただけで解るって言うのに、中に入ったら完璧に理解。

「お、お嬢!あれ!お嬢!」

「「うわっ!?」」

「この町の名の由来になった、イキシアの花だ。綺麗だろ」

「綺麗だ…っ!イキシアと言うのか…っ!」

 イキシアの花に大喜び。

 これがバルフル唯一のクセ。可愛いクセ。

 花壇の前にちょこんと座ってまじまじとイキシアの花を見つめ始めたよ。

「見た目に反して、バルフルは花の栽培が大好きでね。専用の大きな温室で色んな花を育ててるんだよ」

「「えええっ!?」」

 面白いって言うか可愛いでしょ。

 バルフルが反乱軍に入ったのも、ボクが魔法肥料でムスペルにも農業を齎せられると知っていたのが一番の理由。

 結成すると決め、最初に加わった仲間の一人でもある。

「お嬢…っ!」

「町長さんに会わせるから頼め。育て方は皆に聞くと良い」

「そうする!育てたい!」

「「わあああああああああああああっ!!」」

 大抵はこれで順応する。

 最高司令官を務めるだけあって反乱軍では三番目の強さ。見た目もあって魔族でも最初は怖がられるんだけど、これ見せると一発で馴染む。いや和む。

「隣町のアイリスも町の名の由来って事でアヤメの花壇があちこちにあるし、反対側のアッサムでは香水向けの花の畑を広げてる。ウチや近くにサトウカエデもあるから一年通して良い景色が見られるよ」

「羨ましいにも程が有るぞ。料理も酒もビリヤードも有ってそれなら引っ越したいくらいだ」

「だろ。何より肥沃なのが最高。魔法肥料無しで普通に花が育つんだぜ?」

「楽園だ…っ!一面の花畑を作れる…っ!」

 夢は自分の手でお花畑を作る事。

 その為に色んな花を育てて元手にしてるんだ。


 町長さん達に会わせながらバルフルが好きそうな場所を色々と案内。

 どこも歓迎してくれたし、バルフルの趣味に和んでもくれた。

 そして郊外にも連れて行く。

「お、おお、おおおおお…っ!」

「肥沃でしょ」

「素晴らしい…っ!なんて素晴らしい光景なんだ…っ!」

 花畑が出来てるのを覚えてたんで見せてやったよ。バルフルが育ててる花は基本的にボクのお土産だからね。後はバルフルの趣味を知ってる奴からのお土産。

 見た目が見た目なんでムスペルから出た事が無いんだ。

 お花畑の事もボクから聞いて目指してる。

 本物のお花畑を見て感動しきり。

「引退したら引っ越してこいよ。後任も大分育ってるだろ?」

「真面目に考える。植物園とやらを経営してみたい。ここなら出来ると確信した」

「余裕余裕。何かあった時にバルフルが居れば安心するし、材料集めを頼む冒険者を鍛えて貰いたいし。色々と稼ぎ方が有るから引っ越して来い」

 バルフルはほんと歓迎出来る。良い奴だし。

 軍勢がここを踏み荒らすってだけで撃退に進んで参加するだろうし。

 さっさと後任育てて引っ越して来い。


 バルフルもフィルと同様に満足して帰った。

 イキシアの他にも気に入った花を鉢に植え替え、熱心に育て方を聞いてマジックポケットに入れてた。親方から受け取ったキューも大事そうにマジックポケットへ。

「良いヒトだったなー」

「ああ。花好きの魔族ってなあ意外だったが、それだけに良いヒトって感じだった」

「あいつの温室が結構凄いんだよ。ボクの家くらい有るの。休日はこもりっぱなし」

「「へええ」」

「魔王城で唯一まともな奴」

「「ぶふぅっ!?」」

 他は一癖も二癖も有る。良い奴等なんだけど。

 いや、多少ねじ曲がってるのも居るか。エロ男爵とかボクの服を作った奴とか。

「他は全滅か…っ!」

「良い奴ばかりではあるんだけどねえ…。魔族の性って言うか」

 種族的な要因も有るから仕方ない。

 国はちゃんと機能してるから良し。多分。

「バルフルの次にまともなのがボクって時点で大丈夫なのかと思う」

「いや、アイラさんかなりまともだろ」

「「うんうんうん」」

 それは嬉しい評価だけど。

「可愛い子猫ちゃんとすれ違ったら瞬時にスリーサイズと指輪の大きさを見抜いて覚えて機会を待つナンバーツーってまともか?自分で言うのもアレなんだけど」

「「ぶふぅっ!!」」

「前に見せた司令官風で颯爽と歩いてるのに頭の中はそれだぞ?しかも野郎どもの集まりだと普通にエロ話してるし。まともか?」

「「はははははははははははははっ!!」」

 いや、他の淫魔と比べればまともだけど。

 城内の二番手でそれはどうかなと思う。

「でも三本柱は嫌だ。って言うかナイアムと並べられるのが嫌だ」

「「はははははははははははははっ!!」」

 ナイアム抜きなら気さくな中枢と言えるけど。

 あいつのせいで全て不安に感じる。怖い。

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