7 新たな出会いは、最悪のようだ
-セントレア-
そこは、町人や村民が住まい、各世界各国からの貿易を担う場所である
俺ことルカ·ハイリッヒはシルヴァ先生と共に、先生の師匠が開いてるという道場に向かっている
道場は、セントレア内部で区切られている4つの地区のうち、東側の地区【イースト】にある
英語で東の意なんだけど、まったくの偶然らしい
イーストは冒険者の町と言われている
歴史に名を残した戦士や英雄、現在も王都の騎士として活躍している者もここの生まれであることが多いからだ
この世界には冒険者ギルドと言うものがもちろんある
王都で冒険者ギルドが設置されているのは、イーストだからという理由もあるのだ
そのためイーストは、冒険者のための店が立ち並び
筋肉マッチョやローブを羽織りいかにも魔術師アピールをしている冒険者達が練り歩く町となっている
道場は、そんな町の外れ...周りには道場以外の建物がない、街道から外れた木々の奥にひっそりと建っていた
「ここですか?先生のお師匠様がいるのは?」
パッと見、町のほうにある民家と変わらないのだが...
「あぁ...そうだが...」
先生は少し困った顔をしていた
「...不在、のようですが」
扉に掛かっている板に、この世界の言語で【留守】と書かれている
転生者である俺が何故異世界の言語を理解できるのかというと
頭の中で意味が自然に理解出来ている、としか表現の仕様がない
人は生まれた国の言語が一番理解しやすいというあれだろうか...
確かに体はこの世界産だしな
それに家にもこの国の国語辞典があったから暇な時に読んでた
親、ここではベルモンドやマリア様の事、が国語辞典を見ている幼児を見て苦笑する所はシュールだったな
回想の途中、コンコン、と言う音がする
先生が扉をノックした音だ
返事は、ない
「今の時間なら居るとは思ったんだが...」
先生は踵を返して早々に街道の方へ歩き出す
「先生!どこ行くんですか!」
俺は叫んで小走りで追いかける
「...待って!待ってシルヴァさん!」
突如背後から【女の子】の声がして
先生と俺は振り向く
道場の、もはや家だが、二階から顔を出す少女は
「今そっちに行きます!」
そう言って顔を引っ込めた
俺は唖然として立っている
すると先生は家へ足取りを向ける
我に帰った俺もそれについていく
ドタドタと家から音が響く
ガチャ、と鍵が開けられ
扉から一人の少女が飛び出てきた
「ハァ...ハァ...」
その少女は
来ている服は町で見た町民と同じような感じだったが
朱色の目、金色に煌めく髪をポニーテールにまとめ
俺と同じような背丈から年はそうそう変わらないと予想出来る
二階から慌てて下りてきた事が良く分かる、息を荒げ顔を赤くしている【幼女】、その様子は
俺の心にドンピシャでヒットする
「可愛い...」
俺はそう呟いてしまい
「「は?」」
「ん?」
雰囲気を、氷点下まで下げてしまったようだ
そこから、数秒、俺にはもっと長く感じられたが
先生は俺を見つめ
少女は俺を睨み
俺は目の前が真っ白になった
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それから俺と先生は、お師匠様の家に入れて貰った
「お茶です♪シルヴァさん♪」
笑顔でお茶を出す少女
「ありがとう...君がエレナちゃんか、初めましてだな」
先生はその少女を知っているらしい
「私の事知ってたんですか!?嬉しいです!握手!握手してください!」
はしゃいで跳び跳ねているその様子も何と可愛らしい...
抱き締めたい...
「師匠に子供が出来たという知らせは故郷で知った、エレナちゃんも俺の事をよく知っているようだな」
差し出された手を握り、少女に微笑みかける
まるで叔父と孫だな...
「はい、お母さんから聞いてました!シルヴァさんがお母さんが鍛えてきた弟子の中で一番強かったとか、かっこよかったとか...色々聞いてます!」
それにしても大きな声で話す子だなぁ...
先生は近くで聞いてて煩いと思わないのだろうか
元気がある女の子は嫌いじゃないけどな
「...シルヴァさん、所でそこのヘンタイは、何ですか?」
は?
「ヘンタイか...エレナちゃんも知ってるだろう?ハイリッヒ家の所の子供だ」
「ハイリッヒ家長男、ルカ·ハイリッヒと言います、宜しくお願いします」
右手開いたまま左胸に当て、45度のお辞儀をする
こっちの世界での貴族の挨拶をする
「ベルモンドさんの所のですか?意外です、初対面の女の子に可愛いとかいきなり外見を誉めてくるようなやつがベルモンドさんのご子息なんて...年は?」
先生に見せた笑顔とうって変わって、俺に向けられたのはゴミを見るような目だった
初対面の印象は最悪らしい
「五歳です」
作り笑顔で答えた
「は?ごめんなさい、貴方に聞いてません」
は?
聞いたの俺の年齢でしょ?
「エレナちゃん...そんなに嫌ってやるな、エレナちゃんが可愛いのは誰から見ても思う事だ、俺に免じて許してやってくれないか?」
「まぁ...シルヴァさんがそういうなら...あとちゃんは要らないですよ、エレナとお呼びください!」
エレナは顔を赤らめさせる
先生は肯定の意味で頷く
それにしても、この世界じゃ初対面の女の子に可愛いと言うのはそんなダメなことか...?
いや、元の世界でも良くは思われないか...
「ルカにもお茶を出して貰えないか?」
「シルヴァ様がそういうなら♪」
あ、そう言えば先生に出されているのに俺にはない...
ていうか、先生のこと、さんから様に変わってるし...
「はい、お茶」
早い...あと先生のより薄い...
「あ、ありがとうございます...」
どうやら、人生初のヒロインからの俺の印象はかなり酷いようだ
あと出されたお茶の味も何か雑巾っぽい味をしていて酷かった
これ以上飲むと病気になりそうだ...
「エレナ、俺達は最低でも1ヶ月はここに滞在する、その間だけでもルカと仲良くやってくれ」
シルヴァはフォローしたつもりだろうが、エレナの嫌そうな顔は変わらない
「こんなやつと一緒に生活するなんて考えられない...シルヴァ様だけだったら良いのに」
つくづくイラつくなこの小娘は...
そろそろ切れるぞ...?
「今回の目的はルカの身体能力の強化だ、こいつは将来立派な魔術師になる。エレナのライバルにもなるんだ、今からルカの実力を見ておいても損はないだろう?」
「いえいえ、そんな大層な事では...」
俺は少しテレてしまった
「こいつがぁ...?しかも魔術師?ないない、お母さんの修行について行けないと思いますし、実際ひ弱そうですし」
怠慢にしていた俺に突き刺さる言葉
「まぁ確かに体力は無いが、それを鍛えるために来たのだからな、体作りは早めにやるべきだからな」
「シルヴァ様がそんなに言うなら私はいいです、我慢します」
我慢するほど嫌な存在になったようだ
「所でエレナ、師匠はいつ帰ってくる?」
「そうですね...今日帰ってくるはず何ですが...あ!シルヴァ様の分の食事の買い出し忘れてました...」
まて、俺が入ってないんじゃないか!?
「買いに行かないと...」
「ぼ、僕が行きますよ!」
俺はすかさず立ち上がる
「え?あ、別にいいけど...あんた町来るの初めてじゃないの?」
「そうですが、初めての町も見て回りたいですし、汚名も挽回したいですし...」
それに俺がいるとどんどん悪くなるし
「あんたって難しい言葉使うのね、本当に五歳?まぁいいわ...はい、買うものとお店の名前よ、場所は街道真っ直ぐ歩いてれば着くわ」
意外と優しい所もある
所謂ツンデレ?
「ご、五歳ですよアハハ」
年齢については誤魔化しておく
ていうかお前だって本当に俺と同じくらいかよ
「俺も行こう」
先生が立ち上がるのを、俺は制止する
「ここは僕に任せて下さい、一人でも大丈夫ですよ」
「しかし、お前を一人で行かせるわけには...」
「先生はエレナとお話して待っててください、積もる話もあるでしょうし」
「...分かった、だが危険な時の魔法の使用は許可する、くれぐれも気をつけてな」
「はい!」
俺は棚に置いてある入れ物と、買うものと店の名前を書いたメモを手にして
居間から出る
「...中々気が利くじゃない」
そう呟いたエレナの声は残念ながら俺には聞こえなかった
俺は家を軽い足取りで出る
今回の出会いは最悪だったが
町ではまた新たな出会いがあることを俺は願いながら
街道を走り、俺は町を目指した
その後、お金を持つのを忘れていた事に気付き家に走って戻った
【四期】
この世界でも1年12ヵ月365日が用いられている。
冬から夏に掛けての移り変わりの春
夏
夏から冬に掛けての移り変わりの秋
冬
という認識で4つに期間が分けられている
移り変わりの季節に差異が無いところから四季とは呼べないため四期と呼んでいる
ちなみに今話は夏に当たる7月終盤の出来事である




