第七話 Sideフレリア
私の人生は女神様が助けてくれた日から始まったのでス。
ここには私の力を搾取する人はいなイ。
人を助け、女神様に仕える染の道を歩み、幸せを享受することができル。
それを他の人にも伝えたくて私は教師を始めましタ。
時に道を誤ったものの粛清する異端審問官をし、そのなかで教え子をこの手に掛けることも決して多くはありませんでしたが、ありましタ。
かつてそこにあった笑顔が消えてしまうのは辛いこト。しかし、教えに背いた教え子は誰一人幸せそうじゃなかっタ。
もちろん、ラッカも。
「ラッカ、少し眠りませんカ?」
「ダメです。俺は女神さまに背く行いをした。なのに、貴方も女神さまも罰してくれない。だから女神さまのためにもっと働かないと…!!」
ラッカはあの聖堂で女神様にどこかに連れて行かれて、戻ってきたと思ったら、自分を処罰するように懇願してきましタ。
何を見たのかは分かりませン。女神様の神託もありラッカを殺すことはできないと告げても子供のように処罰してくださいと私や神官長に頼み込んできましタ。
間違いを理解するのは素晴らしいことですが、女神様から与えられた命を蔑ろにするのは頂けませン。
その場でラッカを縛り上げ、痛めつけましたが、ラッカはそれに安心したように身を任せましタ。
この子はもう罰を求めるほど壊れてしまったと私はようやく気づいたのでス。本当はもっと段階を踏んで従順にするつもりでしたが、この子は罪の意識に飲まれてしまっていましタ。
痛めつけられても傷を治す素振りすらなイ。
ただ女神さまに向かって謝罪を繰り返す姿は哀れでしタ。
今日も眠らずに冒険者の治療や呪いの解呪、事務作業に動き回るラッカに、もう監視はいらないでしょう。しかし、いつかは倒れてしまウ。
「ラッカ、今日はそこまでにしなさイ。
また罰を与えて上げますかラ」
私の言葉にラッカは歓喜に口元を震わせましタ。
罰を与え無ければラッカは眠ることさえしなイ。
私が居ないと生きられないのでス。
可哀想で可愛らしイ。
『ちゃーんと反省できてるね、ラッカ!』
女神様がラッカの背後に現れ、ラッカを抱きしめる。
『私は信じてたよ、ラッカが改心できる子だって。だから助けたんだもの!』
流石は女神様。先見の目をお持ちでいらっしゃル。
「女神さま、俺を殺してはくれないのですね…」
『うーん、やっぱ、魔物が心の大部分を占めてたから、拠り所を失っちゃってるんだね。大丈夫、貴方は神殿のモノだから。これからは私のことさえ考えてくれればいいの!』
「はい、女神さま…」
『あ、でも、貴方があの魔物を信じたままだったら、新しい魔王が誕生してこの国が危なかったかも!』
ラッカが震える。今度こそ恐怖で。
「お、おれは…」
『そうならないように加護を与えて上げる!頑張って罪を償おうとしてる子は大好きなの!与えていいかな?』
「はい、俺でもいいなら。俺は許されるなら貴方のものになりたい」
『うん、いい子!』
女神様はラッカに口づける。
ラッカの足から力が抜け、若草色の目が閉じられる。
女神様は倒れ込んだラッカを支えつつ、私に向き直る。
『今度こそこの子が間違えないように導いてあげてね。貴方もこの子も私の大切な子。貴方方に幸あらんことを』
ええ、必ずやラッカを正道に導きましょウ。




