表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/28

第四話:最悪の遭遇

私たちは、王立図書館へやって来ていた。

王都の中心部にそびえ立つその建物は、白い石造りの荘厳な図書館であり、この国の人々に長く愛されてきた歴史ある場所でもある。巨大な柱が並ぶ正面玄関には繊細な彫刻が施され、重厚な扉をくぐれば、古い紙と木材が混ざり合った独特の香りが鼻をくすぐった。静寂に包まれた館内には、今日も多くの学者や学生たちが足を運んでいる。


「まずは手当たり次第、貴族名鑑や家紋を調べてみましょう。何かピンと来るものがあるかもしれないし」


私はそう言いながら、分厚い王国貴族名鑑を机へ広げた。ぱらぱらと紙をめくる音だけが静かな空間へ響く。

ラドは私の隣をふわりと漂いながら、真剣な表情でページを覗き込んでいた。

だが、数時間ほど調べても、それらしい手掛かりは何一つ見つからなかった。


「どれも違うな。俺とは関わりがない」


ラドは迷いなく言い切る。


「…………」


いや、なんでそんな断言できるのよ。私は思わずツッコミたくなった。

けれど不思議なことに、彼の勘は妙に当たりそうな気がしてしまう。それが根拠のない自信なのか、本当に何か感じ取っているのかは分からないけれど。

だが、数時間ほど調べても、それらしい手掛かりは何一つ見つからなかった。


「今日はここまでにしましょうか。また明日、別の資料を探してみましょう」


そう言って、私たちは図書館を後にした。


外へ出ると、夕暮れの王都には柔らかな橙色の光が降り注いでいた。石畳の道を行き交う人々の声や、遠くから聞こえる馬車の音が、どこか穏やかな日常を感じさせる。

そんな中、隣を漂っていたラドが感心したように口を開いた。


「しかし、その格好は本当にモッサリしているな……。見事なまでにお前の美貌が消し飛んでいる」


面白そうにこちらを眺めながら、彼はくつくつと喉を鳴らした。


そう、今の私は完全なるモッサリ系令嬢仕様である。

地味な灰色のワンピースに、必要以上に背を丸めた猫背姿勢。視線は常に下向きで、黒髪はボサボサのまま一つに結び、仕上げに瓶底眼鏡。

完璧だ。どこからどう見ても陰気な令嬢である。


「まぁね。いつあいつらに遭遇するか分からないもの。外では常にこのスタイルよ。いい加減、慣れてちょうだい」


私が肩を竦めると、ラドは楽しそうに笑った。

そんな他愛ない会話をしていた時だった。ふいに、ラドの動きが止まる。彼は何かに引き寄せられるように、じっとある建物を見つめていた。


「あそこは博物館よ。どうしたの?」


不思議に思って問いかけると、ラドは珍しく真剣な顔をする。


「……気になる魔力を感じる。行ってみたい」


低く落ちた声には、先ほどまでの軽薄さがなかった。私は一瞬だけ迷ったものの、その表情を見て小さく頷く。


「分かったわ」


そうして私は、博物館のチケット売り場へ向かった。



館内は思っていた以上に賑わっていた。どうやら現在、隣国から発掘された遺物の特別展示が行われているらしい。大理石の床には無数の来館者の足音が響き、展示ケースの周囲では貴族達が興味深そうに談笑している。


「色々展示されてるわね。どこから見たい?」


私は周囲を見回しながらラドへ声をかけた。その時だった。


「あら、イリンカ様じゃない?」


鈴を転がすような、甘く可愛らしい声が背後から響く。

その聞き覚えのある声に、私の背筋が凍りついた。嫌な予感しかしない。


恐る恐る振り返った先にいたのは。

物語の主人公、ソフィア・コドレア。そして、その隣にはダリアン王子の姿まであった。


私は内心で盛大に叫んだ。


(いやぁぁぁぁぁぁっ!?)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ