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新世界  作者: 北極星11
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■第31話 〜闇からきた者〜

 シンジにはもちろん見えていない。ただその姿かたちを目にしていたら、おそらくほとんどの人間がその場に腰を抜かしてしまうだろう。サトミを自殺に追いやった虚無羅きょむらがシンジの肩に腕を伸ばしている。

頭には大きな2本の角があり、顔は牛のよう。赤く光る二つの目玉に人間のような体。その背中からはこうもりのような羽が伸びていた。

 シンジは胸の苦しさを何かにぶつけられずにはいられなかった。枕を投げつけ布団をけり、壁を殴りつけた。わけのわからない悔しさと虚しさで目からは涙があふれ出ていた。

 <お前が死ぬことでまた仲間が増える>

 恐ろしく低い声でその悪魔のような虚無羅はささやく。

 

 時計の針はすでに昼の3時を回っていた。シンジはまだ何も口にしていない。シンジはずっと死との戦いに向き合っていたのだ。しかし、それを理解できるものはいなかった。

(ここにいてはまずい。)

 ふと、母の帰りが頭をよぎった。シンジは急いで家を飛び出した。

(どこへいく?できるだけ人のいる所へ行こう。)

 シンジはスクーターに乗り駅の方へと向かった。その姿はまるで何かに追われているようだった。交差点に差し掛かったところで信号が赤になった。信号機の赤いランプの色が先ほどの左手首に赤い血の傷跡を思い出させた。

 ちょうど中学生のグループが横断歩道をわたっている。笑いながら話をしているのが目に付いた。

(「あの人がサトミに告白したからサトミさんは自殺したんだって。」「えー、信じられない。あの顔で?よく告白なんてするよね。」「ありえなーい。」「終わってるよね。」)

(な…なんであんな中坊がそんなこと知ってるんだ?)シンジの額はいつの間にか汗が滴るほどにじんでいる。心臓の鼓動が早い。もちろんこれはシンジにしか聞こえない幻聴だ。しかし、シンジには幻聴を幻聴としてとらえるだけの気力は失せていた。

(「そうそう。こいつ、自分の母親を刺そうとしたんだぜ。」「そんなやつが生きていてもいいのかよ。」「死んでくれたほうがよっぽどいいよな。」)行き交う人全てが自分のことを嘲笑あざわらっているかのようだ。(「どうして私を殺そうとしたの?あなたのような子は生まなければよかったわ。」)

 シンジの息遣いはどんどん荒くなり、喉がからからに渇いていた。頭の中は今にも貧血を起こすときのような、白と黒のモザイクのような映像がちらついている。耐え切れなくなったシンジの精神は赤信号を無視してスクータのアクセルを全開にしてしまった。車の流れがとだえていないその交差点では、シンジのスクーターをよけようとした車同士が接触をし、それを避けようとする車のクラクションの音が響き渡っていた。かろうじて出会いがしらの接触を避けたスクーターであったが、後ろから追突された車がシンジのスクーターにぶつかり、シンジは反対車線の急ブレーキをかけた車のフロント部分まで弾き飛ばされてしまった。

 車から降りてきた青年が叫んだ。

「誰か、救急車、救急車を呼んでくれ。」

 騒然となったその場所には、15分ほどで救急車が駆けつけた。救急隊員が駆けつけてもまだ、黒いヘルメットの内側の青年の目は、閉じたままであった。


シンジは大丈夫なんでしょうか?自分で書いておいてよく言いますが・・・。シンジのキャラをもうちょっとはっきりさせたほうがいいとも思いますが、それは後々にします。

★筆者コーナー★

今、見てみたいのが、銀色の髪のアギトです。

自然が人を襲う未来・・・過去からやってきた少女。うーん、DVD借りてこようかなあ?

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