■第32話 〜シンジを救え〜
ミコトが目覚めた土曜日の朝、不意に居間の電話がなった。(誰だろう、こんなに早くから。)朝食をとっていたミコトは、受話器に手を掛けた。
「もしもし、神崎です。」
「こんにちは。小山ですが、ミコトさんはみえますか?」
「えっ、僕ですが、もしかしてシンジ君のお母さんですか?」
「ええ。いつもシンジがお世話になっています。」
「いいえ。どうしたんですか?」
「あの、昨日、シンジが…。」
電話の奥で急に嗚咽を堪える声が聞こえた。(何かあったんだ…。)ミコトの脳裏に浮かんだのは、昨日死闘を繰り広げた虚無の姿であった。その勘がはずれていることを願うミコトだった。
「大丈夫ですか?落ち着いて聞かせてください。シンジに何かあったんですか?」
「…今、総合病院にいるんですが、…シンジが、事故にあって…。」
シンジの母親の話を整理すると、シンジは一昨日あたりから調子が悪く、精神的にも不安定だったそうだ。母親がパートに出ている間、昨日の昼過ぎにシンジの乗っていたスクーターがはねられ、意識不明で病院に運ばれた。今朝になってようやく目を覚ましたシンジは、俺の名前を口にしたそうだ。
「分かりました。一度そちらに伺ってもいいでしょうか。」
「ええ。きっと息子も喜ぶと思うので…。」
ミコトは母親に用件を伝え、急いで着替えを済ませ、バスに乗って総合病院へ向かった。母親がありあわせのタオルやら果物やらを持たせてくれた。
『ポンポン、どう思う?』
『シンジ君のことポン?…なんとも分からないポン。もし気になるなら少し様子を見てきてもいいポン。』
『えっ、そんなことできるのか?』
『できるポン。たぶん10分くらいで行ってこれるポン。』
そういうとミコトの守り神であるポンポンはバスの窓を通り抜けて総合病院のある方へと向かっていった。ポンポンとミコトは青色に光る一本の線でつながれていた。
総合病院はミコトの家から30分ほどバスで行ったところだ。バスから神城高校のある丘が左側に見える。その中腹には山神セイラの家があるはずだ。
休日といっても土曜日は普段なら午前中に部活がある。剣道部であったミコトは、昨日、退部届けを出してきたところだ。寂しい気持ちもしていたが、昨日のようなことが続けば、どちらにしろ部活をしていられない。色々と聞かれるよりも、初めからやめておいた方が賢明だったんだ。ミコトはそう自分に言い聞かせていた。
バスの中でふと頭をよぎることがあった。(もしシンジが虚無羅にとりつかれていたらどうする。)
ミコトはシンジが精神的に参っているという言葉を聞いたときに、何か違和感を覚えていた。やはり、考えてみると、虚無羅がシンジにとりついているという可能性は少なくない。
(虚無羅がいた場合を考えておかないと…。まずは、シンジから影を引き離すのが先決だな。この前セイラがやったように、一人が影をひきつけて、その間に本人に触れて祓いの詞を唱えるのが一番いい。でも、セイラがいない一人のときは…影と戦いながら本人に祓い詞を唱えるのか。…厳しいな。しかも、影を消したらシンジも死んでしまうんだったよな。あとは、シンジの体に虚無羅が乗り移った場合か、シンジを動けなくして祓い詞を唱えればいいのか…。今のシンジは、きっと動けるような状態じゃないから、乗り移られることはないだろう。)
一人考えをめぐらしていると、ポンポンが帰ってきた。
『やばいポン』
『どうした?』
『強そうな虚無羅がいたポン。』
『やっぱりか。…ポンポンはどうすればいいと思う?一人で対処する方法が、なかなか思い浮かばないんだ。』
『うーん、セイラに頼んでみるポン』
『そっか。セイラには悪いけど、それが一番だな。一度バスから降りて、電話をかけようか?』
『その必要は無いポン。ポンがリリィ(セイラの守り神)に念をおくるポン。』
『えっ、そんなことができるのか?』
『フッフッフ。できるポン。』
『ちょっと待ってるポン』
目を閉じたポンポンは何かブツブツと唱えだした。
『かけまくもかしこき いざなぎのおおかみよ わがおもいを そのみこころにより つたへたまふことを かしこみもうす』
暫く目を閉じていたポンポンの目が開き、
『リリィもセイラもその病院にかけつけてくれるポンよ。』
とミコトに伝えた。
『そうか。やったな。サンキュ。』
(これでどうにか虚無羅に対応できそうだ。)
シンジにとりついている虚無羅との戦いがせまってきました。ミコトの成長振りは見られるのでしょうか?
★筆者コーナー★
本屋って楽しいですね。いつまでいてもあきません。
雑誌読んでると時間を忘れてしまいます。
科学雑誌とかも好きです。ニュートンもいい。けど、高い><




