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運命の中に、もう一人

ガサガサと走りながら茂みを掻き分ける音と、自分の息の音が、うるさい。



「っ…っまだ、来るかっ!」



後ろから聞こえてくる足音は、確実に近付いて来て彼を追い詰めていく。



「…はっ、っは……っ!」



崖に出てしまい、彼は下に見える滝を一瞥して崖のぎりぎりに立ち、後ろを振り返った。

あっという間に彼の前に10人ほどの男が現れる。



「指輪をお渡しくだされば、痛いことはしませんよ。皇子殿下」



「ははっ。1つ、母様から奪い取っていただろう?それで満足しておくのが身のためだぞ」



「おや、手厳しい。確かに1つは王妃様にお渡し・・・いただきました。ですが」



にこり。と笑みを浮かべた男が青い石のみで作られた指輪を手に、彼に一歩近付く。



「これは2つ揃わないと王の証にはならない、と聞いたものですから。もう1つをお渡し願おうと」



「白々しいな、大臣の名が泣くぞ」



作り物の笑みで男を見た彼はそう言い、手を前に伸ばすと男の手にあった指輪が風に巻き上げられて彼の手におさまる。



「ちっ、まだ風が使えたか…指輪を渡せ!」



「愚かな男だな。渡すはずが、ないだろう?」



―――いい?相手を怯ませたいのなら姿勢よく、少し顎を引いて前を、相手を見て堂々と話すのですよ。



(…はい、母様)



「俺が最後の王族。俺を最後に、国は永久に“王”を失い、王家の血は途絶える」



一歩、後ろへと下がると、周りにいる男達が慌てたように発砲してきたが、銃弾が片足を貫いても、頬を掠めて血を滲ませても彼は動かず、言葉を止めなかった。



そらの恩恵を受けし我が国はからになり、契約の指輪と王を失うことで契約は破棄される。民には悪いが、国は荒れるだろうな」



訳がわからないと言わんばかりの男の表情に、彼はわらった。



「お前らは“王”を甘く見すぎた。この血はあまりに重く強い。せいぜい血を途絶えさせたことを後悔すればいいさ」



彼はゆっくりと後ろへ体を倒す。崖の下、滝壺へとその身を躍らせ、呑み込まれた。


2つの指輪が水の中で、淡く光を帯びる。



―――我らの空



―――その至高なる血と瞳、交わした契約によりてどうか、生きておくれ…



彼の体を淡い光が包み込んで消えた。


彼の姿とともに…――





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