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第4話:夜に輝く壁

あの前代未聞の「巨大岩大反射事件」から数週間。

なんと、我が王国とグランベル帝国との間で、奇跡的な和平条約が結ばれることになった。


理由はシンプル。帝国の偉い人たちが「あの喋る迎撃要塞(私)がいる限り、あの城壁は落とせない。まともに戦ったら軍が崩壊する」と完全にビビったかららしい。まさか壁に埋まっただけで国際平和に貢献してしまうとは。


そして、和平の調印式当日。城壁の前には両国の重鎮たちが集まっていた。


「両国の平和の礎となり、帝国の猛攻を退けた奇跡の城壁……。敬意を表し、この壁を『和平の聖女ミリア・ウォールナイト』と命名する!」

「お色直しの白いペンキも塗っておいたぞ!」


お偉いさんの宣言と共に、パチパチと盛大な拍手が沸き起こる。


「ちょっと待って!? 私の名前は佐藤玲奈! ミリアなんてお洒落な名前じゃないし、ウォールナイトって何よ! 直訳して『壁騎士』!? あと勝手にペンキ塗るなー! ちょっと冷たいし、匂いがきついー!」


私の猛抗議も、平和の歓声にかき消されて誰の耳にも届かなかった。こうして私は、戸籍上(壁籍上?)「ミリア」という聖女にされてしまったのだった。


大戦争を止めた「喋る聖女の壁」の噂は一気に大陸全土へ広がり、城下町には各地から押し寄せる観光客で溢れかえるようになった。


「うわあ、本当だ! 壁から女の子が生えてる!」

「ミリア様、握手してください!」

「握手はいいけど、そこのおじさん! 壁の隙間にお賽銭コインをねじ込むのはやめて! 地味に痛いし、挟まって気持ち悪いの!」


すっかり観光地化した我が城壁。昼間はアレンが「はい、立ち止まらないでくださいー。お賽銭は手前の箱へー」と、完全に観光地の誘導スタッフと化していた。


しかし、毎日ただ壁として見られるだけなのも退屈である。

私は暇を持て余した結果、独自の『壁魔法』の特訓を始めることにした。自分の意思で壁の形状や性質をどれだけコントロールできるか、毎日のように試行錯誤を繰り返した。


その結果、私の壁魔法は驚くべき(そしてやっぱり雑な)進化を遂げた。


「みんなー! 夜の部にようこそー!」


日が暮れてあたりが暗くなると、私の見せ場がやってくる。

私がフンッと気合を入れると、城壁に埋め込まれた魔鉱石や水晶の成分が私の魔力と共鳴し、赤、青、緑、黄色と、ド派手なネオンカラーでピカピカと発光し始めた。


「おおおっ!! 光った!!」

「なんて幻想的な……いや、なんかちょっとチカチカして人工的だな!?」


そう、壁魔法を応用して、城壁全体をまるで夜のデコトラか、あるいはエレクトロニカルパレードのように激しく明滅させることに成功したのだ。リズムに合わせて点滅する城壁。もはや中世ファンタジーの情緒はゼロである。


さらに、私のサービス精神は夜だけにとどまらない。昼間は子供たちのために一肌脱ぐことにした。


「ほら、おチビちゃんたち! 順番に並んでねー!」


私が念じると、私のドレスのすぐ下あたりの城壁がニュルニュルと変形し、なめらかな傾斜を持った特製の「石の滑り台」へと姿を変える。


「わーい! 壁お姉ちゃんの滑り台だー!」

「キャッキャ!」


子供たちが私の体(の一部である壁)をシュルーンと滑り降りていく。


「ひゃっ、あははは! ちょっとズボンの摩擦がくすぐったい! お尻が擦れる感覚がダイレクトにくるー! でも楽しいからオッケー!」


子供たちの笑顔に囲まれて、私はすっかり町のアイドル(遊具)として定着していた。


そんな様子を、遠くから見つめるアレン。


「……和平の象徴になったと思ったら、夜はピカピカ光って、昼は滑り台か。レイナ、いやミリア、お前もう城壁としてのプライドは残ってないのか?」

「何言ってるのアレン! 敵が来たら迎撃要塞、平和な時はテーマパーク! これぞ次世代のハイブリッド城壁よ!」


ウインクを決める私(壁)の横で、子供たちが今日も元気に滑り降りていくのだった。

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