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第2話:町の名物、そして炸裂する壁魔法

転生(物理的に壁へ)してから数日。

私・佐藤玲奈は、城下町におけるちょっとした名物観光スポットになっていた。


「ほれ、喋る壁の精霊様じゃ。今日も元気に壁から生えとるのう」

「お供え物のりんご、ここに置いておきますねー」

「ちょっとおばちゃん! りんご遠い! 手が届かないからもうちょっとこっち寄せて!」


朝から晩まで、私の前には見物人が絶えない。

世話係(という名の監視役)になった騎士のアレンは、隣で深いため息をついている。


「おいレイナ、お前すっかり町民に馴染んでるじゃないか……」

「仕方ないじゃない! 動けないんだから、せめて愛想よくして食料を確保しないと干からびるわよ!」


そんな平和(?)な日常は、近所の悪ガキたちの登場によって破られた。


「あー! また壁女がいるー!」

「こら! レイナお姉ちゃんと呼びなさい!」

「えーい、壁女に攻撃ー!」


カツンッ!


ガキ大将が投げた小さな石ころが、私の少し下、つまり「私と一体化している城壁」にヒットした。


「痛っっっっ!?」

「えっ」

「ちょっと! 今のめっちゃ痛い! すねをタンスの角にぶつけたみたいな痛みが壁から伝わってきたんだけど! こらクソガキ、石投げるな! 壁が凹むでしょ!」

「うわー! 壁女が怒ったー! 逃げろー!」


きゃあきゃあと逃げていく子供たち。私は痛む壁をさすりながら涙目になっていた。

そこへ、さらなる厄介者が現れた。


「ヒック……なんだぁ? この邪魔くせえ出っ張りはよぉ……」


顔を真っ赤にした、やたら体格の良いドワーフの石工らしきおっさんだ。その手には、身の丈ほどもある巨大な大ハンマーが握られている。


「おいおっさん、彼女は壁と一体化してるんだ。妙な真似はするなよ」

「あぁん? 騎士様が何を寝言言ってんだ! こんなもん、俺様の自慢のハンマーで一撃でぶっ壊して、そこの嬢ちゃんもひきずり出してやらぁ!!」

「違う! 壊したら私が死ぬの! やめて! 話を聞いて!」


私の叫びも虚しく、酔っ払ったドワーフは「どりゃあああ!」と雄叫びを上げ、私(の腹のあたりに相当する壁)に向かって大ハンマーを全力で振り下ろした。


(あ、終わった。私、異世界に来て数日で粉砕骨折——いや、粉砕壁折して死ぬんだ……!)


恐怖で目をギュッとつむり、悲鳴を上げた。


「いやああああ!! こっちこないでええええええええ!!」


ゴゴゴゴゴゴゴ……ッ!!!


その瞬間。

私と神経が繋がっている分厚い城壁が、まるで生き物のようにドクンと脈打ったのを感じた。


「……え?」


恐る恐る目を開けると、信じられない光景が広がっていた。

私の目の前の城壁がニュルリと形を変え、巨大な「石の拳」となって飛び出していたのだ。


ドゴォォォォォンッ!!!


石の右ストレートを顔面にモロに食らったドワーフのおっさんは、「ぶべらっ!?」という奇声と共に、綺麗な放物線を描いて空の彼方へ(星になって)飛んでいった。


シーン、と静まり返る城下町。

見物人たちも、アレンも、そして私自身も、ポカーンと口を開けていた。


「……い、今、壁から手が生えて殴ったぞ……」

「な、なんだ今の!?」

「レイナ、お前……魔法……『壁魔法』が使えるのか!?」


壁魔法。

そんなダサい名前の魔法がこの世界に存在するとは思えない。だが、確かなのは、私が無意識に「防御したい」と念じた結果、壁の形を自在に操ってしまったという事実だ。


「す、すげえ! 壁の精霊様が怒りの鉄槌を下したぞー!!」

「やっぱり只者じゃなかったんだ! ありがたやー!」


町民たちが一斉に私に向かって拝み始めた。違う、そういう宗教じゃない。


「あのさ、アレン」

「なんだ」

「これ、練習したら壁を足みたいに動かして、このまま城壁ごと歩けるようにならないかな?」

「……お前、最終的に動く要塞にでもなるつもりか?」


かくして、物理的に詰んでいた私の異世界ライフは、初の「壁魔法」開眼により、さらに明後日の方向へと突き進んでいくのだった。

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