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その血は人を狂わせる。  作者: ありま氷炎
第二章 殺されるべき娘
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脱出作戦

「採血は二日後だ」

「セオ。一緒に城を抜け出すことはできそうか?」

「できるよ。俺がいつも通ってる穴から出せばいいから。あいつ、俺よりちっちゃいから楽勝だ。森の民だしな」


 森の民を強調したセオに、アーロンたちは内心複雑だった。

 森の民なので、外の人間より身体能力は高い。おそらくレイアもそうであろう。

 けれどもアーロンたちは彼女を殺すつもりだった。

 なので、森の民、仲間であるという意識は持ちたくなかった。

 もちろん、全員セオより大人であり、精鋭であるから、表情は変えていない。


「だったら、地上に出すまでよろしく。そこからは俺も手伝うからね」


 リマムはセオの茶色の髪をくしゃくしゃと撫でるが、セオは子ども扱いされたみたいで、口を曲げて抗議していた。


「番人のことなら、俺に任せて置け。手筈は整えている」


 アーロンは城の番人の関係者と仲良くなっており、彼らの動きを把握している。

 

「私とエディは城の外で待機ですね」


 こうして二日後の計画は立てられ、セオはどうやってレイアに伝えるか考えていた。


「逃げるなんて言うのは、愚策です。どこかへ連れていきたい、それが一番無難な誘いです。彼女が好きな場所は知ってますか?」


 テイラーは眼鏡を触りながら、さりげなくセオに助言する。


「海を見たいって言っていたから、それで誘ってみるよ」


 悩んでいたセオは、いいことを思いついたとばかり目を輝かせる。

 騙している大人たちは、眩しそうに目を瞑ったり、逸らしたり。

 ただエディだけがセオから視線を逸らさなかった。


「おお、それは良い考えだね」

「そうだな」


 大げさにリアムがそう言い、アーロンは相槌を打ち、エディは頷いた。



「海を見たくないか?」

「海、見たいけど、無理だよ」

「無理じゃないよ。俺が連れていくから」


 夜に行って朝には戻ってくる。

 セオは嘘をつくことに罪悪感を覚えたが、現時点で囚われている意識がないレイアに一緒に逃げようと伝えても混乱させるだけだった。それなら受け入れ易い言葉を選ぶのは当然だった。


「明後日の真夜中、来るから」

「うん」


 レイアは嬉しそうに笑い、セオは彼女を騙していることに後ろめたさを覚えた。

 

 二日後の夜、採血を終わらせ少しだけ疲れているレイアの元へ、セオは訪ねる。

 出かけるのであれば、この日は選ばない。

 レイアが元気な日に実行するはずだ。

 そう考えるはずなのだが、レイアの周りの人は、父チャーリー、マルクしかいなかったので、彼女はその考えに至らなかった。


 ベッドの上に椅子を置いて、レイアを無理やり上の穴に押し込む。

 さすが森の民、すんなりと穴の中に入る。

 それは同時に彼女の体が小さいことを表している。

 ベッドの上の椅子をかたずけてから、彼はベッドの上で跳ねて穴にしがみ付いた。

 穴の奥から見守っていたレイアは驚いたようで、目を丸くしていた。

 セオはちょっとだけおかしくなって、そんな場合じゃないのに愉快な気持ちになった。

 騙している心の痛みが少し和らぐ。

 セオは文字通り蛇のように穴の中を進むのだが、彼女の体は小さいため、腕をついて匍匐して進める余裕があった。


「初めまして」

「!」


 穴の先で待っていたリアムを見て、声を上げそうになった彼女の口を慌てて手で塞いだのは、リアムだ。

 口を塞いだまま、彼女の小さい体を穴から引き抜く。

 セオはその後慌てて穴から飛び降りて、レイアに説明する。


「この人は俺の友達だ。海を見る手伝いをしてくれるんだ。怖くないから」

「そうそう。怖くないよ。手を離すから叫ばないでね」


 リアムが確認するように問うとレイアは頷く。

 彼はゆっくりとレイアの口から手をどけた。


「ごめんな。大丈夫?」

「う、ん」


 驚いた顔をしたままだが、レイアは頷いた。


「さあ、行こうか。俺に付いてきて」


 リアムが歩き出し、セオはレイアの手を掴むとその後を追った。

 いつもは門番がいるはずなのに、もぬけの殻で、三人はあっさり城を抜け出す。

 そこから出来るだけ遠くへ逃げる。

 王都を抜けるまでが彼らの目標だ。


「レイア。俺の背に乗って」

「いや、エディの背でしょ?この場合は」


 セオの言葉をさえぎって、リアムがそう言い、仕方なくセオをそれに従う。

 レイアは戸惑っていたが、エディがしゃがみこんで、背中を見せると恐る恐るその背に飛び乗った。

 まるで親子みたいな様子だった。


「エディの娘みたい」


 リアムは普通に感想を述べ、セオがその脇を肘で突いた。


「さあ、行きましょう。できるだけ遠くへ」

「うん」

「ああ」


 レイアだけが無口で、後の三人はテイラーに言葉に賛同して、歩く速度を上げた。

 今までレイアの速度に合わせていたが、エディが背負れば、どんな速度でも関係ない。

 そうして脱出して二時間後には王都を抜け、森の中にいた。

 森と言っても、彼らの住んでいる森とは大分違う。木々は空を隠すほど密集しておらず、頭上に月が輝いているのが見えるくらいだ。


「よくやったな。みんな」

 

 最終的な集合場所は川沿いだった。

 そこでアーロンが石に座って待っていた。



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