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その血は人を狂わせる。  作者: ありま氷炎
第四章 アステライゼ
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終焉

 外門がこじ開けられ、カルシア軍がなだれ込む。

 先頭はチャーリーで馬上で槍を操り、反カルシア軍を薙ぎ倒している。

 他にもカルシア軍兵士が街へ突入し、一気に乱戦になった。

 その時、異変が起きた。


 反カルシア軍にはあの毒薬はない。

 しかし街中から、カルシア軍に毒薬が放たれたのだ。

 一人の兵士が不死身の兵士となり暴れ始めた。

 矢は数本だった。

 しかし、それをきっかけに、何人かの兵士が狂ったようにチャーリーへ襲いかかる。

 カルシア軍の兵士の動きが鈍った。

 この機を逃さないのは、リアムだ。狂った兵士に紛れ、彼もチャーリーを狙う。

 商人として隠れていたアーロンも兵士の服を奪い参加していた。彼もリアムの動きに追随した。


 チャーリーは強い。

 しかし、不死身の兵士数人、森の民二人を相手にして、苦戦していた。

 内部に裏切り者が出て、カルシア軍は混乱にあった。

 けれども、チャーリーは兵士に尊敬されている。 

 我に返った兵士たちはチャーリーの援護に回る。


 そうなる有利なのは、反カルシア軍だった。

 王チャーリーのことを無視して、他の兵士の駆逐を優先にする。

 

「矢を放て!」


 チャーリーから止められていたが、混乱したカルシア軍からも毒矢が放たれた。

 それをテイラーが、エディが防ぐ。


「セオ、彼女を奥へ連れて行きなさい。もう不死身の兵士は出ないでしょう」


 テイラーはセオに冷静に指示を出す。

 

「わかってる。レイア」

「お願い。いさせて。お願い」

「だめだよ」


 レイアを守るためにセオは頑固と彼女の願いを拒否した。

 そして無理に奥へ連れいこうとする。


「セオ。お願い!」

「だめだ」


 ★


「お前は!やっぱり隠れていたか!」

「お久しぶり、チャーリー!」


 赤毛のままの変装した姿であったが、チャーリーはその黒い瞳、俊敏な動きで、彼が誰だかわかった。

 すでにチャーリー自身で不死身の兵士を全滅させている。中には普通の兵士を混じっていたが、裏切り者には容赦しない。頭や首を狙い、一気に殺した。

 しかし既に馬を失い、槍ではなく剣を使っている。

 チャーリーは残りのリアムとアーロンと相対していた。


「一つ聞かせろ、レイアは無事か」

「無事だよ。場所は教えないけどね」

「反カルシア軍はレイアを殺さないか?」


 戦いながら、チャーリーはリアムに問う。

 すでに息が上がっており、速度もいつも彼よりかなり緩やかだ。


「さあ。だが、俺たちが殺す!彼女の願いを叶えたらな!」


 アーロンが斧を振り下ろす。

 それをチャーリーが避けたら、次のリアムの剣を完全によけきれず、腕を負傷する。


「願いとは、なんだ?」

「すべての不死身の兵士を眠らせること。それに毒薬の全回収だ」

「レイアはすべてを知ったのだな?」

「ああ」


 だらだらと腕から血を流しながら、チャーリーはまだ問いかける。

 カルシア王国軍の兵士達は、人知を超えた戦いに唖然としながらも襲いかかってる反カルシア軍の相手をしていた。


「私を殺して、すべての薬を回収すれば、レイアは生かしてくれるか?」

「約束はできない」

「なら、私はここでは死ねない。レイアだけは殺させない」

「あんなに利用していたのに?」


 リアムは皮肉を込めて笑い、チャーリーに剣を振るう。

 それを片手で受け止めたが、受け止めきれず、リアムの剣を横に流した。

 アーロンがその機を逃さず、斧を振り下ろす。

 

「お父様!」


 場所を移動したはずのレイアの叫びが届く。

 アーロンはとっさに動きを止めてしまった。

 チャーリーはその隙をついて、駆けだす。


「セオの野郎!」


 アーロンは、レイアの声に動揺した自分、レイアをここに連れてきたはずだろう、セオのことを思い、怒りで歯ぎしりする。


「本当」


 リアムは呆れながらぼやく。


「まあ、一気に片付ければいいんじゃない?」


 レイアのことを生かすか、殺すか、リアムは正直悩んでいた。

 しかし、こうなればチャーリーと一緒に殺したほうがいいと気持ちを切り替える。

 アーロンも同様で、二人が合流するのを待つように速度を落として追った。

 二人は、予想していなかった。

 いや、事前に知っていた。

 ただ忘れていたのだ。

 カルシア王国乗っ取りを目論む宰相にとって、レイアも邪魔であった。

 なのでチャーリーの近くに現れた彼女は格好の餌食だった。


「レイア!」


 セオはレイアを連れて街の奥へ移動していたのだが、レイアに何度も請われ、前線付近に戻ってしまった。

 そこで、レイアはチャーリーが殺されそうになるを見て、思わず声を上げてしまった。

 チャーリーが己の血を使って非道なこと繰り返していたのを彼女は理解している。

 しかしレイアは父チャーリーの母への想いや、自分に対しての愛情を忘れられず、セオを振り切ってしまった。

 油断していたセオは必死にレイアを追いかける。

 数本の矢がレイアに向かって飛んでいた。

 

「レイア!避けろ!」


 森の民とは言え、戦闘訓練をしたことがない彼女には難しいことであった。

 しかしセオは自分が間に合わないことに気が付き、叫ぶ。

 血が飛び散る。

 それはレイアではなく、彼女を腕の中に庇ったチャーリーだった。

 

「お、お父様」

「そうだ」


 すでに怪我を負っているチャーリーの背中に数本の矢が刺さっていた。

 それでも彼は気丈に立ち上がる。


「下がっていろ。お前、レイアを頼めるか?」


 チャーリーは必死の形相のセオに問いかける。

 答えは無理にきまっていた。森の民ならば。

 けれども


「はい」


 セオを頷き、レイアを保護する。

 裏切り者の兵士が、レイアを、チャーリーを狙っていた。


「……どうするかな」


 リアムとアーロンは途中で足を止めて、二人で顔を見合わせる。


「本来ならあちら側と共闘だな。だが、面倒だ。あちらを先に片付けよう。チャーリーは俺たちが殺す」

「アーロンならそう言うと思ったよ」


 リアムは溜息をつく。


「じゃあ、煩い奴から片付けようか」


 アーロンとリアムは再び動き出した。

 チャーリー達に襲い掛かる兵士たちを殺す。一瞬驚いた顔をチャーリーは見せたが、理解し、共闘した。

 裏切り者には限りがあり、十人ほど殺すといなくなった。


「さて、殺すぞ」

「うん」

「セオ、邪魔をさせるなよ。娘が邪魔するようなら、俺たちは直ぐに娘を殺す」

「うん」


 今後こそセオはしっかりレイアの体をがっちり掴む。


「レイア。その少年といれば幸せになれそうか?」


 チャーリーに突然そう問いかけられ、レイアは驚く。


「地下にいる時よりは幸せだと思うぜ。俺が責任もってレイアを幸せにする。あんたは静かに死んでくれ」

「セオ!」

「レイア、いいんだ。森の民に殺されるなら本望だ。毒薬の場所はマルクか宰相に聞け」

「お父様」

「それでは遠慮なく」

「セオ。レイアの目を隠したほうがいいよ」

「その必要はないです。最後まで見届けます」


 レイアは抵抗するのをやめ、セオの腕の中で顔をあげ、チャーリーたちを見る。


 チャーリーは剣を地面に突き立てると、仁王立ちになった。


「さらばだ。レイア。我が娘よ」


 アーロンは躊躇することなく、チャーリーの首を切り落とす。

 レイアは目を閉じることなく、彼が死ぬ瞬間をその目に焼き付けていた。



 



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