決戦
「陛下。アステライゼの駐屯兵と連絡が取れなくなりました」
「そうか」
チャーリーは冷静にその報告を受け取っていた。
驚きもしない。
チャーリーが反カルシア軍の指揮を執るとしたら、同じ行動をとったからだ。
カルシア王国軍が到着する前に、内部の駐屯兵を制圧する。
不死身の兵士さえどうにかできれば、制圧はできそうであった。
レイアにそのような力があったことは驚きであったが、マルクの実験に突き合わせるつもりはなかったので、知らなかったことを後悔はしていない。
イザベルを殺した国を征服し、怒りのまま周りの国を侵略してきた。
レイアを浚われた今、彼の想いはただ一つ。
生きているレイアに再び会う事だった。
イザベラ生き写しの彼女を死なせるわけにはいかない。森の民の怒りは理解できるため、不死身の兵士が押さえられるということは、レイアが裏にいる。それは彼女は生きているという証明にもなり、チャーリーは安堵していた。
数時間後、チャーリーはアステライゼの外門に到着する。
兵士は彼らの姿を見ると、鐘を鳴らしすぐに姿を消した。
★
「来ました!」
「いよいよね」
チャーリーが到着した時、市民の避難と駐屯兵の制圧は完了していた。
不死身の兵士を出すことなく、すべての毒薬を回収、廃棄も済んでいる。
「さて、本来の姿に戻るか」
マリーナこと、マカリオ・アレスティンは髪を一つにまとめ、剣を取る。
「私が後方を守りましょう」
隙あればチャーリーに襲い掛かることもできるし、マリーナ、マカリオを不死身の兵士にするわけにもいかない。
なので、テイラーは彼の後方を守ることを提案した。
「よろしく頼む」
別人のように答え、マカリオは馬を駆る。
テイラーは騎乗し、その背後に着いた。髪は染めており、森の民とは気づかれないはずだった。
「私はマカリオ・アレスティンだ。アステライゼの正式な後継者である。兵を引け。チャーリー王よ」
「アステライゼはカルシア王国の一部である。貴様は反乱分子の一人にすぎない。王女レイアを渡し、投降しろ」
チャーリーはマーカスに敬意を払うことなく、言い放った。
「王女レイアなど私は知らない。交渉は決裂だ。後は戦うのみだ」
「マカリオとやら。今王女を引き渡せば、街は無事に済む。アステライゼのことを考えるなら、そうする方が貴様にとっては得策だぞ」
「ご提案ありがとうございます。王チャーリー。ならば、このまま王都に引き返していただけますか?」
「王女を返還。貴様が投降し、反乱分子が武器を捨てるなら考えよう」
「それは無理な相談です。王チャーリー、あなたを殺し、私は国を取り戻します」
「できるものならすればよい」
交渉で済むなら戦争など起きない。
二人の交渉はすでに破談することがわかっているが、形として両軍の指揮官が言葉を交わす。
テイラーは背後でチャーリーを襲う機会をうかがっていたが、カルシア軍の兵士の中にリアムが混じっていることを目視し、剣を収めた。
そうして、両軍の戦いは始まった。
マーカスたちの戦法は籠城だ。
攻めてくるカルシア軍を門の前で堰き止める。
壁の上には反カルシア軍の弓兵が控え、地上に矢を浴びせる。
しびれを切らしたカルシア軍が毒矢を使い始めた。エディがその場にいたが、彼らの毒矢の量は駐屯兵の比ではなく、何本が打ち漏らし、弓兵が刺され、落下する。
通常であれば、不死身の兵士はカルシア軍を襲わない。
しかし、今回はカルシア軍を襲い始め、混乱を招いた。
「恐れるな」
チャーリーは混乱する兵士を一喝、不死身の兵士の頭へ一本の矢を放ち、活動を停止させた。
「毒矢は使うでない。私に続け、進むのだ!」
チャーリーが馬を駆り、先頭を切る。
雄たけびをあげ、兵士がその後に続いた。
リアムも機会をうかがいながら、歩兵の一人として駆けだした。
★
「レイア」
レイアの顔色は青い。
父チャーリーの声が聞こえ、その後に兵士たちの喧噪。叫び声があがったが、それは一瞬で途切れた。
街の中にいると直接、戦いは見えない。
けれども不死身の兵士対策で、壁近くに待機しているレイアとセオには緊迫した様子は伝わってきた。
両軍の口上からマーカスが戻ってくると、すぐに扉が閉められた。
簡単に開けれないように内側にしっかり鍵の代わりに太い丸太が置かれた。
しかし、チャーリーの怒号の後に、兵士たちの怒声が響く。
そして扉に衝撃が走った。
「矢を放て。扉を守るのだ」
マカリオは指示を飛ばす。
チャーリーは扉の突破を試みている。彼はすぐそばにいる。
レイアは思わず走り出しそうになったが、セオが止める。
「レイア。ごめん。俺は君を守りたい。だからごめん」
レイアが行けば、殺される。
反カルシア軍がすべて敵に回るだろう。
それだけではなく、テイラーもレイアを殺そうとするかもしれない。
セオはそれを避けるために、レイアを止めた。




