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その血は人を狂わせる。  作者: ありま氷炎
第四章 アステライゼ
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駐屯兵との戦い

 チャーリーが率いるカルシア王国軍は、王都近くの港町へ上陸。

 王都には寄らず、そのままアステライゼに向かった。


 王女の奪還を最優先にする。

 チャーリー王の指揮の下、その軍が負けたことがない。


 この二点を踏まえ、兵士たちから不満が出る事はなかった。

 王女奪還の後には休暇と特別給金が出ると伝えたことも、兵士たちの士気を高め、勢いを持ったまま、アステライゼに進軍する。


 リアムは新兵の中に埋もれ、軽口を叩きながら他の兵士たちと歩む。

 話ながらも考えることは、テイラーたちの動きだ。

 アステライゼからテイラーやレイアたちに関する情報は入っていない。

 港街に入った時に、何らかの情報を手に入れると期待していたのだが、リアムの耳に届くことはなかった。


 アステライゼへの道筋で、何度か休憩を取る。

 その際に、おかしな動きをする兵士をリアムは何人か見た。用を足してくるといって軍から離れ、おかしな連中をおっかけているとアーロンと出くわした。お互い何も話さず、気配を悟られないように彼らの後を追う。


「これを向こうに」

「わかった。最終的な陛下の場所がわかったら、また知らせてくれ」


 兵士を待っていたのは、フードを深くかぶった男だった。男は兵士から小さな紙を受け取った後、森へ消えていく。

 兵士に気が付かれないように、繁みに隠れ、二人は声を出さず会話した。

 口の形をお互いに読む方法で会話する方法だ。


『誰に知らせたと思う?チャーリーの場所?ってことは、敵側?あ、でもそれなら、陛下って言い方はしないよね』

『そうだな。そうなると、宰相かもな』

『宰相?なんで?』

『これはいい機会だと思わないか?王もその叔父のマルクも不在、唯一の後継者の王女もアステライゼだ』

『……一気に殺して、国を乗っ取る気ってこと?』


 アーロンはただ頷く。

 リアムはしばらく考えた。


『今までマルクが幅を利かせて、目障りだったかもね。その可能性にかけてみる?』

『ああ。俺たちは内部で裏切りものが出た瞬間を狙い、一気にチャーリーを殺す』

『了解』


 二人を肩を叩き合い、その場で別れ、それぞれの持ち場に戻った。

 リアムは兵士の中へ、アーロンは商人の中へ。



「やはり王チャーリー率いるカルシア王国軍は王都に戻りませんでした。現在こちらに向かっています」


 マリーナは偵察に出していた者から報告を受けていた。

 

「どらくらいで到着するかしら」

「恐らく明朝には到着するでしょう」

「そう。急がないとね」

「はい」


 マリーナたち反カルシア軍は、市民の避難と駐屯兵の排除の両方の作戦を始めていた。

 市民たちの移動は進んでおり、不死身の兵士の毒薬も今のところ被害を出していない。

 活躍しているのは、テイラーとエディだ。

 二人の強さは秀でている上に、毒薬が効かない。

 不死身の兵士を眠らせることができる王女に、毒薬に耐性がある者達。

 関連性を見出せるが今はその時ではないと計画遂行に集中する。



 飛んできた矢を素手で受け取り、それを折って使えないようにする。

 矢に塗られていた毒薬は地面に擦り付け、再利用されないようにする。


 テイラーとエディの活躍は目覚ましいものだった。

 特にエディは、ある女性の周りに常にいて、彼女を完璧に守っていた。

 彼女は品がある女性で、元アステライゼの騎士であった者だ。襲われているところマリーナに助けられ、反カルシア軍に参加した。


「すべてを終わらせて、森へ帰りましょう。エディ」

「理解している」


 エディは短く答えた後、飛んできた矢をへし折る。

 森の民の血は、外の人間にとっては毒薬だ。

 おぞましい不死身の兵士に変えてしまう血。

 森の中にいると意識しないが、こうして外の世界に出ると己の血の禍々しさに悲しくなることが多かった。 

 特に恋などすると最悪だ。

 好きだから、近づけない。

 近づかない。

 テイラーは横目でエディのことを見て、少し同情していた。

 リアムなら何かいい言葉をかけられたかもしれない。

 一瞬そう思ったが、彼なら傷口に塩を塗る言葉を言いかねないと、戦いに集中した。



「大丈夫かな」

「うん。エディたちなら大丈夫だよ。レイアは俺の後ろにいて」

「うん」


 不死身の兵士が出現した時のことを考え、レイアとセオは部屋から出され、戦闘地区へ駆り出されていた。 

 彼女がカルシアの王女であることをすべての兵士が知っているわけではない。

 しかし、邪心を持って彼女に近づく、不届き者がいるかもしれないとセオを目を光らせていた。


「何があっても俺が守るから」

「ありがとう」


 セオはレイアの心細そうな笑みに胸がきゅっとなる。

 この先、彼女を傷つけようとするものが誰であっても彼は抗うつもりだった。

 逆にレイアはセオにこれ以上迷惑をかけるつもりはなく、時が来たら潔く死を受け止める覚悟ができていた。

 しかし、その前にすべての不死身の兵士を眠らせ、己の血で作られた毒薬を見つけ、すべてを処分する。

 これだけは死ぬ前に完遂するつもりだった。



 

 

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