163話 未踏破地域での邂逅
「グスタフッ。前へ出て抑えろっ。ハノン、マリアナ、スランは下がれっ」
すぐさま襲いかかってくるティラノサウルスに対して、後手に回ってはいるが、指示が飛ぶ。
最前線のパーティであれば、問題ない相手ではある。
大抵、一匹で行動するしね、あれ。
「うおぉぉぉぉっ」
ティラノサウルスの噛みつきを盾を使って上手く弾いた。しかし、続く尻尾の振り回しで盾の男は吹き飛ばされる。
痛いんだよなぁ、あの尻尾。噛みつかれるよりはマシだけど。
「グスタフっ!」
崖の壁面に叩きつけられて崩れ落ちる盾男。
代わりに前に出たのがリーダーの剣士。
ティラノサウルスの頭部を剣で斬りつけ、左へと回り込む。
「マリアナはグスタフの治療を。スラン、ハノン、魔法の準備だっ」
「ど、どの魔法を?」
「何でもいい、強いやつだ」
そうして詠唱に入る魔術師二人。
男の方は炎の魔法。女の方が氷の魔法。
うん、連携がなってないね。炎と氷の同時攻撃は威力を打ち消し合うだろ。時間差を入れるならまだ解るんだけど。
しかも、こいつには熱の攻撃があまり効かない。
ふっ、素人め。
詠唱の完了と共に二つの魔法がティラノサウルスを襲うが、まだ元気だな。
「くう、なんてタフなやつっ」
「テムジンっ、合わせろっ」
リーダー剣士が声をかけ、槍使いとティラノサウルスを前後から挟む。
「ライトソードっ」
「炎龍槍撃っ」
多分技の名前? を叫んで二人の攻撃が同時にティラノサウルスに放たれる。
ぐぉあぁぁぉぁ。
ティラノサウルスはこれに回転しての尻尾攻撃。
こっちの技は名前が聞き取れないな、さすがの神様翻訳でも。
そして、打ち負けて地に伏す二人。
残るは魔法使いが二人に治癒術士が一人。
……ま、ここまでだね。
「く、ちくしょう。スランッ、なんとか奴をっ。グスタフ、まだ立てないのかよ」
剣を地面に立てて立ち上がろうとするリーダー剣士。それを無視して後ろの魔法使い二人に向かうティラノサウルス。
そして、その鼻先へ吹き上がる土砂の爆発と地下から飛び出す黒い影。
それはダメージこそ無いものの、ティラノサウルスを一瞬怯ませるには十分だった。
「ボルダーパーンチッ」
ティラノサウルスの顎を打ち上げる、下からの拳撃。アッパーカット。
新たに現れた敵に警戒を示すティラノサウルス。
「な、なんだ、お前はっ」
「通りすがりの、仮面ボルダーだ」
そう名乗る姿は、人の形をしてはいるものの、甲虫を連想させる。
ブラックボルダー・カトゥーラを纏った俺だ。
……さすがに、見捨てたりはしないよ。ちゃんと危ないときは助けられるように待機してたんだって。
「お、お前言葉が……」
「ゆくぞっ、邪悪なる敵よっ」
声をかけてくるリーダー剣士は無視して、ポージングと共に言葉を放つ。話をしてもろくなことにはならないだろうからな。
「ま、まて。一人では……」
「我が必殺のぉぉ」
「おいっ、お前っ!」
「ボルダー・シューティング・ドリル・キィィィィックッ」
ボルダーシューティングドリルキックとは、対峙した敵に向かってエアライフルの弾丸を発射し、その弾丸と自分自身をスイッチして入れ換えることで、全身を弾丸として相手にぶつけるキック技である。
足にはドリルパーツがついて高速回転。
ドリルによる掘削パワーに、ライフル弾の速度、さらに俺自身の体重分の質量をもって炸裂するその威力は、ティラノサウルスの首元に命中し、その体躯をも貫いた。
注意。人に向けて撃ってはいけません。




