161話 冒険者事情
「最近、実力不足で燻ってるやつらが増えてきてんだよ」
「ああ、万年Dランクね」
ギルド二階の奥。受付の裏からも繋がるそこは、手の空いた連中の休憩室になっている。
要するに、俺達の駄弁り部屋だ。
「薬草の採取や狩りなんかはしてくれてますから、一概に悪いとは言えないんですが、少し供給過多ぎみですかねぇ」
基本的に計算が必要な業務はアイリスがメインだ。集計なんかも。
アイリスと言えば、最近身長も伸びてるな。さすが成長期。
「今のところは、強い魔物素材の方が需要はあるので、実力の底上げが急務かと」
次点がヒース君。彼は治療要員としても働いてくれている。
「でも、見た感じ結構強そうじゃない?」
迫力はある。世紀末を生き抜くには、だけど。
「戦闘だけ出来ても、行き詰まるのさ、結局」
力自慢が集まっても、あまり効率は上がらず、優秀なパーティに誘ってもらおうとして目立とうとした挙げ句、独特のおかしな外見へと走っているらしい。
髪の毛を逆立てたり、派手な色にしたり、体にペイントしたり、裸同然の格好をしたり。
防具は着ろよ、マジで。
まあ、ギルドにいるときだけの私服だとは思うけど。
刃物を舐めるのも危ないぞ。錆びるし、手入れ用の鉱物油は体に悪いし。
食べるラー油でも売るかな、ギルドで。
「要するに、戦闘ができることにばかり気を取られて、索敵とか補給とか事前調査なんかがおざなりになってると?」
「まあ、そんな感じだね」
「指導とかしないのか? 他の上手く行ってるパーティを参考にするとか」
「それを旦那に相談してるんだろ、今」
「上位のパーティほど、情報を出したりしませんし」
うーん、そりゃそうか。
「あ、それで一つ思い出したわ。この間、Aランクになったパーティが出たのよね」
「ああ、思ったより早かったよな。まあ、状況見て、昇格条件を難しくするとかは考えるとして」
「そのパーティで、索敵と補給を担っていたメンバーが、除籍になったのよ」
「なんで?」
「戦闘に貢献してない足手まといだ、という理屈らしいんだけど。もっと上を目指すためにメンバーを厳選したい、とか」
……追放ザマァですか。
「ちなみに、追放されたって方は、どうしてるの?」
「今はこっちの方に戻ってきてて、新人パーティに加入して面倒を見てるみたいですよ」
……人はなぜテンプレを歩むのだろうか……。
「ちなみに、女の子ばかりの新人パーティだったり?」
「あれ、知ってたんですか? ヨシツグさん」
「いや、適当に言っただけ」
ありがちだな、と。
「でも、あのパーティ、実は全員男の子ですよ」
男の娘ハーレムでしたか。新しいな、それは。
「で、だ。どうすればいいと思う? 旦那」
「そりゃあ、教育するしかないんじゃないか?」
とはいえ……。
「人の話を聞くようなタマじゃねえなぁ」
だよねぇ。シンディには理解できるのだろう、仲間意識とかで。
「なら、仕事をしながら自然に身に付いてくれるって言うのが理想的かなあ?」
オンザジョブトレーニングは、嫌がる人は嫌らしいけど。
「Aランクパーティの方も、どうしたものかしらね?」
「まあ、しばらくは難しい依頼を出すのは控えて、パーティとしての実力を測り直してもらうしかないんじゃないか」
「でも、依頼と関係なく未踏破地帯に踏み込まれると、こっちでコントロールはできないんだよねぇ」
最前線パーティだからなぁ。
冒険者の収入としては、北の地で採れる素材集めがメインだが、活用方法が確立されているもの、いないもので結構ピンキリ。
強い魔物が高く売れるとは限らない。
それとは別に、未踏破地域を確認する実績に対してギルドから報償金が出る。
地図を作成して提出してもらうことになるが、その出来栄えもパーティによる差が大きい。
まあ、地図はマーミャさんが確認して、実際の大きさを測量することでチェックが入り、現地で俺がアースサーチすることで地図としての精度を上げて、全体地図を更新する、という手順になっている。
未踏破地域の地図作成を行うパーティは未知の魔物と戦うリスクもあるため、高い実力が求められるが、冒険者ドリームとして憧れの対象となるようだ。新しい魔物素材や採取物が研究用に売れるのは確かだしね。




