159話 就任
「まあ、旦那。考えようによっちゃ今までと大して変わんねえって。あたしらも協力するしさ」
シンディはそう言うが……お前は協力するって言えば自分が優先的に冒険に行けるとか、面倒な柵は俺に押し付けられるとか、絶対思ってるだろ。
「いや、そもそもさぁ。行きたい奴が勝手に行けばいいんじゃないのか? 俺に任せるとか言うならそうするぞ?」
リーダー役なんて真っ平ごめんだよ。
「問題はいくつかあるのですが、まず一つとして、探索者を野放しにはできません。これは世界樹からの要請でもあり、条件でもあります」
アイリスパパが引き続き説明するようだ。
……あんたが指揮すればいいんじゃないかな?
「はい。世界樹様からは、エルフの里に作った門で出入りを管理して、侵入者への対策をこちらでせねば門は閉じると言付かっています」
「エルフ族は門を守るが、管理には手を出さぬつもりだ」
ヒースパパとエルフ長が続ける。
入退管理をしろと? 外から偽物とかが入ってくるんだろうか?
「二つ目に、国を問わず探索者を入れなければ収まりがつかない。そのため、探索者を管理するヨシツグ殿には、国の枠を越えた権限を認めるつもりです」
利権の話は面倒なんですけど。
「逆に、特定の国でここを押さえてしまうと、後々の瑕疵となるのが目に見えています。また、責任者には世界樹からの信用も必要です」
……俺って世界樹から信用されてたの?
エレメアはなんて報告してたんだろうか、俺のこと。
「また、このような新たな枠組みを作るには、ヨシツグ殿に知見がある、と娘から聞いてますよ」
……アイリスとはマジに一度話し合った方が良いかもしれない。
けどこれ、断れなさそうなんだよな。
普通は地位と権力をもらって喜ぶのかもしれないけど……いや、マジ大事じゃないの? これ。
とはいえ、最低限メイベルの安全は確保しないといけないか。
うーん……。
「ヨシツグさんの世界では、そういった組織とか無かったんですか?」
「いや、国家を越えた組織なら、無かったわけじゃないけど」
国際連盟とか、国際連合とか。まあ、前者は平和機構として作られて失敗した挙げ句に世界大戦になったし、後者はただ戦争で勝った国が権力を握る組合みたいなものだったしなぁ。
むしろ、創作の方面で何かあっただろうか?
新人類への革新? そんなシステムこの世界にあるか?
四年に一度代表国家をバトルで決める? 獣人族がそんな感じらしいけど、録な事にならなさそう。
ヒグマかライオンか魔王のどれかが勝つか、むしろ山から黒い人が降りてきそうだし。
超能力で人類全てをマインドコントロールなんてのもあったか。無し無し。
あとは完全平和主義? 無理無理。
というか、作るのは平和機構じゃないしな、そもそも。
「まあ、社会構造が全然違うから、当てはまらないかな」
民主主義がどうとか、この面子の前で話すのはマズそう。
「平等にするには、国との繋がりの薄いヨシツグが適任なんだよ。なんとか引き受けてくれないかい?」
まあ、思い付くものが無いわけじゃないんだけどな。
「なら、シンディ。お前に手伝って貰うぞ」
「おう。何でも言っておくれよ」
言ったな。ここにいる全員が証人だからな。
にやり、と笑う俺を見て、僅かに身を引くシンディであったが、もう遅い。
「シンディには、これから作る冒険者ギルドのギルド長になってもらう」
俺はそう宣言した。




