158話 ほうれんそうは大事
「ホルダーパーンチっ」
「バ、バカなぁ」
あえなくリングアウトするジャスティスガード。
まあ、ブシドーさんの時もそうだが、不意をついたとはいえ成人男性を何メートルも突き飛ばすのは困難だ。
踏ん張られたら威力は殺されてしまう。
だから、パンチが命中する瞬間、足元の石タイルを一瞬収納して地面を下げている。
相手を宙に浮かせてしまえば、押せば飛ぶのだ。
六メートルのリングから押し出せばよいのだから、三~四メートル飛ばせばよい。
どれだけ重量があろうとも、斜め上四十五度に向けて初速六メートル毎秒で押し出せばよいことになる。
気付かれないようにやるのがミソ。
「ほほう、やるではないか。次は俺だな」
そう言ってリングに上がるワイルドライオン。
「ヨシツグー。ボコボコにしちゃってー」
だから、そういう応援いらないんだってば。わざとやってるんじゃないだろうな。
「う、うおぉぉぉぉっ」
あー、突っ込んでくるじゃないか、ワイルドさん。目の端に涙が浮いているぞ。
「どれだけ、強力なパンチであろうとも、当たらなければどうということはないぃっ」
スピードで翻弄するかの様に左右への移動を混ぜつつ迫ってくるワイルドライオン。
その判断は正しい。カトゥーラスーツではパワーは上がってもスピードはあまり上がらないからだ。
「ホルダーパンチッ」
「ぐ、ぐおぉぉぉっ」
そして、武術を身に付けた相手に俺の攻撃なんてかわされて当然であるのは前二戦も同じだったわけで。
パンチを繰り出すときには、新スキルであるフリーズを一瞬だけ使っている。
一秒にも満たない時間なので、見ていても解らないだろう。それでもパンチをかわすことはできなくなるし、飛ばされるまで踏ん張ることもできない。
パンチを受けた本人は、こちらの動きが急に速くなった、と感じることだろうな。
「ワイルドライオン、リングアウトです」
アイリスパパのジャッジも、すでにやっつけ仕事感が出てきたな。
「全く、情けない連中よ」
最後に出てきたのはヒグマのようなミスターパピィ。
「ここまでやるとは思わなかったぞ。良いっ良いぞっ、たぎってくるわっ」
を、どうやら武器を使わずに素手で来るようだ。
「まずは、その一撃、受けてやろうっ」
両腕を広げて迫ってくるミスパピ。
「ホルダーパンチ」
パンチはその胸板へと突き刺さる。
「ここだぁっ」
その場で柔軟に体をよじるミスパピ。
パンチが命中した後にその威力を反らす。
「ふっはぁ。さあっ、次はこちらの……」
「ホルダーキーックッ」
地面から打ち上げるかのような高い前蹴り。
パンチとキックの連続攻撃でミスターパピィはリングアウトした。
さて、もちろんキックと言えば飛び蹴りだろうと懸命なる諸氏は思うであろう。
だが、宙に浮いてしまっては、俺の力はほとんどが役に立たなくなってしまう。
だから、蹴りを警戒しなかった判断は正しい。
しかし、最近は飛び蹴り以外のキックだって日曜朝には使われているのだ。
その事を知らなかったのがミスターパピィの敗因よ。
「なんか、すごく突っ込みたい気分なんだけど、何なんだろうねぇ?」
いいんだよ、勝てば。
「さて、勝負は以上で宜しいですな。各々、敗者である以上反論は認めません」
「まあ、仕方なかろうな」
「ふんっ。力を示したのだから異存はない」
「仕方ないですね」
「解っておるわ。この借りはいずれ」
四人とも、何か納得したらしい。
「では、大陸全国家の総意を持って、ヨシツグ殿を外大陸探索の責任者とします」
おい、……聞いてない、それ……。
この世界って報連相がなってないと思うぞ。




