131話 宗教は怖いよ
そして、やって来たのは最奥。
そこには、ひときわ立派な棺桶と、細かく模様の刻まれたオブジェ。
「ここが、初代教皇様の棺です。あなた方にお願いしたいのはこの場所の守護です」
と、ヒース君は言うが。
「それと、俺の仲間と何の関係があんだよ」
脊椎反射でタケル君は文句を言ってるな。
まあ、同感ではあるんだけど、文句の前に理由とか確認する言い方の方が、角は立たないぞ?
「件の枢機卿が、初代様の秘宝を狙っているようなのです」
え、お宝があるの?
「もし、手を出してくるなら、あなた方の仲間がやって来ることでしょう。そうすれば直接会うことができます。もし、そうならなくとも、時間さえ稼ぐことが出来れば、こちらから糾弾することも出来るようになる手はずです」
「糾弾って?」
「枢機卿であろうと、議会を説得できるだけの証拠さえ揃えば更迭することは可能です。身柄を確保した後であれば、面会の機会を作ることをお約束します」
ふむ、つまり現教皇と枢機卿の一人が対立していて、ヒース君は父親である現教皇の命で動いてるって感じなのかな。
「そんな大事な場所に、俺たちみたいな部外者を入れて良かったの?」
「アイリスとカエデの仲間と聞いていますから、そこは信用しています。むしろ、教会内で誰が信用できるかの方が不明なのです」
組織って、怖いね。
「それに、この後入り口を閉ざしさえすれば、あなた方が逃げることも出来なくなりますよ」
と、可愛らしい顔でニッコリ笑みを向けてくるヒース君。
全然、信用してないじゃん。
だから、黙ってたのかよ。
まあ、石造りの地下室なんて、簡単に逃げ出せるんだけどね、俺。……言わんとこ。
つまり、悪い枢機卿をとっちめるためにもう少し時間が必要で、その間に秘宝が盗まれると不味いことになる。だけど内部の人間は信用できるかどうかの判断が難しくて、逆に部外者の俺たちの方が良い、と。そんな感じか。
これ幸いと使われているな、俺たち。
「まあ当然、此方としてはそんな事になっては困るのだよ」
背後から聞こえたのは、そんな声。
「!?貴方はっ」
出入り口を塞ぐように立っていたのは、幾分派手目な服とちょっと変な帽子を被ったおっさん。
帽子のせいで、一見すると禿げに見える。
そして、その後ろに並ぶ4人の男女。
「お前ら、無事か!?」
やっぱ、タケル君のお友達だよね。制服着てるし。
しかし、タケル君の呼び掛けに対して無反応な4人。
「貴方がなぜ此処に。枢機卿と言えど許可無く立ち入りは許されていませんが?」
「たかが助祭が立ち入っていると言うのに、私の立ち入りを禁ずるという方がおかしな話というものでしょうな」
ヒース君と枢機卿も対峙している形だ。
「そうやって、貴方の勝手な都合で、今までどれだけの教会関係者を……」
「ふん。教会へ多大な貢献をしてきた私を認めぬ輩が悪いのですよ」
うーん、正直話は見えないんだけど、これってあれだ。悪人語りだな。
まあ、自分の悪事を話してくれるなら、そっちはしばらくほおって置くか。
それよりも、今はタケル君の友達の方。
呼び掛けに答えず黙ったまま、という時点でやはりおかしいと見るべきだろう。
まるで、規律正しい軍人のような佇まいで枢機卿の語りを守るように、その後ろで一列に並んで控えている。
なお服装は男子二人がタケル君と同じ学ラン。女子二人はセーラー服。
……今時残ってたんだね、セーラー服。とっくに絶滅したかと思ってた。
まあ、そこに武器も持ってるから、学生服と言うよりもやっぱり軍服に見えるな。
女子の一人は見覚えがあるな。タケル君のスマホ待ち受け画像に写ってた娘。ふんわり系少女。
彼女なのかな? やっぱ。
でも、男子の一人が爽やか系好青年だ。女子としては、こっちのほうを好くのではなかろうか。
柄悪いし、タケル君。
もう一人の男子は内向型少年って感じ。俺よりもたくさん漫画とか読んでそう。
事が収まったら、ニーナに記憶チェックしてもらうか。
最後の女子だけ、でっかいトゲトゲの鉄球を持っている。他の三人は腰に剣なのに。
まあ、スポーツ少女って感じだから、似合ってるけども。
「……いつまでも、そのような暴虐がまかり通りはしませんっ」
「まかり通るのが世の中というものなのですよ。さて、あなた方は少々知りすぎたようですな。ここで死んでもらいましょう」
自分で勝手に喋ったくせにー。




