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休養③

次の日、わたしはおばあちゃんの家のリビングにいました。


マナ化した体は、まだ光を帯びていましたが、常時、物に触れるようになる程度には元の状態に戻っています。


が、念のため、布の服は着ないで、今日もイメージを実体化した服を着ていました。


何故かって?


服だけ物体って感じに見えて浮くからです。









さて、今日もごはんは霊酒とルシェナのケーキ。


今日のケーキは、丸い形のチーズケーキです。


フォークで掬って、一口。・・・ん~、うまいっ。


甘酸っぱいようなしょっぱいような、その中間のような不思議な味。


そんでもって舌の上でとろけて、その度にどばっと多幸感が溢れてきます。


あっと言う間に完食。ごちそうさまー。


後は残った霊酒をちびりちびりと行くわけですが・・・。


わたしは立ち上がって、テレビの近くの戸棚を開けました。


中には、わたしの私物であるアニメのDVDが入っています。


その中から、わたしは1枚のDVDを取り出しました。


(・・・花作りの手伝いはお休みだし、見てもいいよね)


ケースから取り出し、DVDプレーヤーに入れ、再生します。


と同時に、おばあちゃんが茶の間に入って来ました。


「あれ?おばあちゃん、今日は午後から?」


わたしの質問に、おばあちゃんは、白くて長い髪を後ろで束ねながら、


「ええ、今日は午前中お休み。家でゆっくりしようと思ってね」


と言って、いつも座っている座椅子に腰掛けました。


「DVD消す?」


「ううん、大丈夫。特に観たいの無いから、癒雫(ゆな)の観たいのつけてていいよ」


「そっか、じゃあつけてる」


わたしもさっきまで座ってた座布団に座りなおし、再生したDVDを観ながら、霊酒をちびちび飲みます。


「何てアニメだい?これ」


おばあちゃんが聞いて来ました。


「わたしが昔から読んでた本をアニメにしたやつ」


わたしはおばあちゃんに、説明します。


旅人の主人公が、しゃべるモトラド(バイクのような乗り物。だけどバイクとは別物。この世界のバイクは空を飛ぶ物らしいので)に乗って、色んな国を旅するお話で、今もたまに本が出てて、その度に買って読んでいる事と、これは、わたしが中学の時に放送された物だと言う事を。


おばあちゃんは、頷きながら聞いてくれました。


そうこうしてる間に、アニメは本編に入ります。


主人公とモトラドは、町の中に人が誰もいない

国に立ち寄り、町の中を見て回っていました。


「何だか不思議なお話だねぇ、淡々としてて、童話みたい・・・」


「うん、不思議なお話・・・淡々としてるけど、この雰囲気好き」


わたしとおばあちゃんは、しばらくアニメを観ていました。


吹雪の中、雪に埋もれたテントの中で、冬の初めから立ち往生していた、飢えた3人の男を、主人公がしばらく面倒見る事になった話を観終えた時、


「・・・何だか考えさせられるねぇ」


おばあちゃんがポツリと言いました。


「・・・うん」


わたしも、一言だけ、言いました。


「雪道には気をつけないとね」


国中が、世界が明日で終わると言う予言を信じてる国に立ち寄った時の話を見た時は、


「怖い話だねぇ・・・」


「・・・うん、巡ってるね・・・」


と、しみじみ言い合いました。


それを観終えると、DVDの第1巻が終了し、わたしは次の第2巻のDVDをプレーヤーに入れました。


2巻目の最初の話。


主人公が生まれた国にいた頃の話を観た時に、


「この子、女の子だったのかい!!」


おばあちゃんが驚いて声をあげ、


「うん、女の子だったんだ・・・わたしも、初めて小説で読んだ時、驚いたよ・・・」


わたしがそれに同意しました。


主人公が森の中にあるレールの上で、仕事をする3人の男に出会う話では、


「何で誰も教える人がいなかったんだろうねぇ・・・」


「・・・・・・」


わたしは、おばあちゃんの言葉に何も返せませんでした。


丁度、2巻目のDVDも観終わる頃、誰かが茶の間に入って来ました。


「2人共、調子どう?」


入って来たのは、お母さんです。


「うん、まあまあ」


「だいぶいいよ」


わたしとおばあちゃんが答えます。


どうやらおばあちゃんも具合が悪かったようです。


「今日のごはんは焼うどんにするから待っててね〜。癒雫も、お昼のケーキはミルクレープよ〜」


「わ〜い」


わたしは喜びの声を上げました。


ルシェナのケーキだったら、なんぼでもお腹に入ります。


お昼ごはんまで後30分。


わたしとおばあちゃんは、本を読んだり、スマホを見たりしながら過ごしました。









そしてお昼ごはん。


わたしは出されたルシェナのケーキと霊酒を前に、手を合わせます。


「いただきます」


まず最初にケーキから行きます。


お昼のケーキはミルクレープ。


クレープ生地にクリームを塗り、何層にも重ねたシンプルなケーキです。


扇状に切られて、上の方にはクリームが丸く絞られています。


わたしは丸いクリームをまず口に運びました。


濃厚で、それでいて甘すぎない絶妙な味。


これだけ延々と舐めていたい気もします。


さて、どんなふうにして食べよう。


まずは、ミルクレープをフォークで縦に切って食べてみることにします。


ケーキの先端部分を切って、口に入れました。


何層にも塗られたクリームが、ぎゅっと一緒になって、舌の上で溶けていきます。


クレープ生地もしっとり柔らかく、とてもおいしいです。


次は、1枚1枚クレープ生地を剥がして食べてみましょう。


フォークで生地を2枚くらいくるくると巻いて、口に運びます。


うん、おいしい。


薄いクレープ生地の甘みと、薄く塗られたクリームの甘みが丁度良く、口の中にひろがります。


これは、どちらで食べてもおいしいです。


フォークで切っては、剥がして巻いてを繰り返し、完食しました。


「そう言えば、また〈ダナ〉が出たんですって、今度は図書館だそうよ」


お母さんが焼うどんの上の目玉焼きを潰しながら言いました。


「昨日の夜、管理番の人が見回りの時見つけて、今日の朝、駆除されたらしいわ」


「あらー、大変ねー・・・」


花雫(かな)ちゃんが、気の毒そうに言います。


「幸い、発見が早かったからか、瘴気溜まりが図書館の結界に突っ込んで来る事は無かったけど・・・クリスマス前に何なのかしらねー」


「きっと天秤さん達が、頑張ってくれたのね・・・」


お母さんのぼやきに、花雫ちゃんがやんわりと答えました。


「・・・ってわけだから、お母さんには午後イチで図書館に行って貰うから、よろしくね」


お母さんにそう言われ、おばあちゃんは、


「わかったわ」


と返事をします。


わたしは霊酒を飲みながら会話を聞いていました。


こんな短い期間に〈ダナ〉が立て続けに2体も出るなんて事、滅多にありません。


大抵、瘴気溜まりの状態の内に〈散らし〉て、浄化するなりするからです。


「・・・午後から1人、か・・・」


霊酒を煽りながら、そう独り言ちました。









おばあちゃんがお母さんに連れられ、午後イチで図書館に向かった後、わたしは少し悩んでいました。


「さっきの続きを観ようか・・・それとも別のを観ようか・・・」


悩んだ末に、わたしは別のを観ることにしました。


(午前中観てたのが、色んな国々を回るお話だったから、国繋がりで、これにしよう)


そう思い、戸棚から取り出したのは、わたしが専門学校に通ってた時に見始めたアニメでした。


世界の国を擬人化して、歴史や、時事ネタ等をおもしろ可笑しく、時々シリアスに描いたweb漫画が原作のギャグアニメです。


元々は、第一次大戦中のイタリア軍の面白い話を中心に、大戦中の歴史ネタを扱っていたのですが、今はその辺どうなっているのでしょう・・・。


途中から漫画の方を追わなくなったからよくわかりません・・・。


DVDプレーヤーに、DVDを入れ、視聴開始します。


第二次大戦の枢軸主要3カ国を擬人化したキャラ達が、忍者について話をする話に始まり、パラレル設定の学園モノ2話と、現在のロシア連邦を擬人化したキャラの幼少期の話が続きます。


そしてその次の話から、作風は一転します。


コミカルな雰囲気からシリアスな雰囲気に変わり、キャラの視点も、国の視点から、国に住む国民の視点に変わりました。


1人の青年が、勤務先の国の首都で、自分の祖国である国に出会うという話で、この世界の国達がどういう存在なのか、その一端を垣間見せる回になってます。


彼らは、遠い昔から存在していて、老いる事も死ぬ事もなく何百年も生き続けていて、その国の人々や国の舵を取る人達、時代によって、運命を左右される存在・・・という事なんでしょうか?


web版や書籍を読んだのも、大分前だから記憶が曖昧ですけど、なんとなくそんな感じで解釈しています。


時間の流れを感じる感覚も人間とは違っていて、人間にとっての数年が、彼らにとってはつい最近の事だったり、また、人間が国の近くに長くいると、時間の感覚が滅茶苦茶になり、発狂してしまうかもしれない・・・なんて情報を、前に作者のブログやweb版の漫画等で見た記憶が、薄っすらとあります。


なので彼らが普通に接する事が出来る存在は、同じ国や、国の中の地方さん達だけなのだそうです。


なかなか過酷な境遇ですね。


「・・・・・・」


アニメを見終え、わたしはふと、空想します。


もしくは、妄想かもしれません。


もし、午前中観ていた、旅人とモトラドのアニメの国達が、さっきのアニメの国達のように、人のような姿であの世界に存在していたら・・・彼らより過酷な境遇ではないでしょうか。


一部を除いて、積極的に他国と交流してる感じでも無いし、それぞれが都市国家のようなものだから、地方さん達もいなさそうだし・・・。


自分と同じ存在が存在する事すら知らない国も普通にいそうだし・・・。


何だか、想像すると、どこまでも孤独な感じがして切ないのですが・・・。


それこそ、発狂してもおかしく無いような・・・。


それとも、みんな基本ひきこもりで、1人でも意外と平気だったりするのでしょうか・・・。


それならまだいいけど・・・いい・・・のかなぁ・・・?


う〜ん・・・。


色々考えを巡らせていると、急に体がだるくなって来ました。


猛烈な眠気も襲って来ます。


・・・午前中は平気だったけど、やっぱり午後になると駄目みたいです。


昨日のように、しばらく寝ていましょう。


わたしは、昨日お母さんに敷いてもらって、ほぼそのままの布団に横になり、目を閉じます。


(・・・夜になったら、おばあちゃんのマナの修復もしなきゃいけないし・・・)


その日は、そのまま夜までぐっすり眠っていました。

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