第4話 異能
「ん……?」
目が覚めると、朝になっていた。
何故か、頭がズキズキと痛む。
「昨日は……」
何かを忘れているような……?
思い出そうにも頭痛がひどく、思考回路までもぐちゃぐちゃにされる。
「ダメだ……」
ふと、時計を見ると『AM 7:00』と表示されていた。
「朝飯……」
とりあえず、朝飯を食べよう。
そう思い、冷蔵庫に手を伸ばした時、既視感を感じた。
「?」
その既視感を無視し、俺は冷蔵庫を開けた。
そこには、何もなかった。
「あれ?昨日の晩飯で使い切ったか?」
んー、ん?
昨日、晩飯食ったけか?
いつの間にか、頭痛も納まりちゃんと思考はできるようになっていた。
「……」
昨日は……確か晩飯を作ろうとして、材料がなかった。
それで、飯を……コンビニまで買いに行ったはず……だよな?
「でも、食った後のごみはねぇし……」
なんか、忘れてるような……?
その時、チャイムが鳴った。
『神也ー、朝ごはーん』
凛花だった。
俺はドアを開け、言いにくいことだったが、凛花に向かって言った。
「わりぃ、朝飯ないんだわ」
「え?」
凛花は硬直してしまった。
「だから、材料がないの」
「えぇー!?」
「ファミレスかどっかで食えばいいだろ?」
「……」
無言の凛花は、なんでこんなに怖いんだろうか?
「……神也の奢りだから」
「なぜそうなる」
コイツ、いつもただ飯じゃん。
「神也の朝ごはんが食べたかったのにー」
「はいはい、分かったから、準備してくる」
「神也、奢ってよー」
「あー、もう、わかったから。さっさとしろ」
さっきまでの不機嫌さはどこへやら。
凛花は「ルンルン」という効果音を付けても違和感のない足取りで、自分の部屋に戻って行った。
「さて、俺も準備しなきゃな」
俺は、さっきの既視感の事なんか、キレイさっぱり忘れて準備に取り掛かった。
昼休み。
俺は、凛花と春川の2人と昼飯を食っていた。
その時突然、凛花に来客があった。
「凛花ちゃん、ちょっといい?」
「橘先輩?どうしたんですか?」
「こっちこっち」
「ごめん、ちょっと行ってくる」
「おう」
そして、教室の入り口付近で話し始めた。
それから数分後、凛花は困ったような顔をして、帰って来た。
「神也、ちょっと来て」
「あ?どうして?」
「橘先輩が話したいって」
ドアの方を見ると、橘先輩らしき人が手を振ってきた。
「はぁ……しゃーねぇな。一応話を聞くだけでもしておくか」
「いってらっしゃーい。陸、これもらっていい?」
「いいぞー」
そして、俺と凛花は橘先輩の元へ向かった。
「君が陸君だよね?僕は橘幹也。よろしく」
「よろしく。で、話ってなんです?」
「あぁ、ちょっと来てほしい所があるんだ。道中で話はするよ」
「?」
とりあえず、橘先輩の後ろについて行くことにした。
「君はさ、昨日の夜11時頃、何してた?」
橘先輩は、振り向かずに突然質問してきた。
「11時、ですか?」
「うん」
「11時は……」
何してたっけ?
えーっと、確か飯を作ろうとして、材料がないことに気が付いた。
ここまでは思い出せる。
「……」
「どうかしたのかい?」
「あ、いえ……」
……そうだ、コンビニに向かったんだった。
「コンビニに向かってたはずです」
「コンビニに、ね。君の家は?」
「こっから近いですけど」
「ふーむ、なるほど、なるほど」
何が「なるほど」なのか、まったく分かりませんが……。
「他に、何かあった?」
「何か、とは?」
「例えば、工事してた、とか、泥棒が家から出てくるのを見た、とか」
「……なかったと思いますけど?」
「そうかい。着いたよ」
そこは、化学準備室だった。
「さ、入って」
俺達は言われるまま、準備室に入った。
俺達が入ったのを確認した橘先輩は、準備室のドアとカーテンを閉めた。
そして、パソコンを開き、ある動画を再生し始めた。
「これを見て欲しかったんだ」
「なんです、これ」
「まぁ、見てれば分かるよ」
カメラを持ってる人は必死に走っているのか、かなり揺れている。
そして、揺れが収まったと思ったら、突然既視感のある映像が映った。
「え……?」
そこには、俺が壁にもたれかかっていた。
そして、それに近づいていく怪物。
「こ、これは……?」
「昨夜、この近所で起きた事件だよ」
「じ、事件?」
画面に視線を戻すと、俺が何かに食われかけていた。
その時、突然怪物は吹き飛び、もがきだした。
『古の……出現……』
所々聞こえてくる声は、俺の声によく似ている。
というより、俺本人の声だ。
「な、なんだよこれ……こんなの知らねぇぞ……!!」
「これは君だよね?というか、もう君だってわかってるんだ」
「これが、これが俺だっていうなら、なんだってんだ!!捕まえるのか!?」
「いやいや、勧誘するんだよ」
「勧誘?ふざけてんのか!!」
ダメだ。思考回路がショートして、普通に考えれない。
「ふざけてないよ。ねぇ、凛花ちゃん」
「ちょ、なんで私に振るんですか!?」
「凛花、お前も知ってたのか……?俺がこんなことしてたって」
「え……?その、えと……」
「知ってたよ」
凛花の代わりに、橘先輩が答えた。
「……そうか、もういい」
「神也!?」
「もうたくさんだ!!俺には、こんなことした記憶はないし、もしあったとしても認めねぇ!!」
「君の力は珍しい。どうか、僕達『退魔事務所』に所属してほしい」
「ふざけんな!!」
俺はドアを荒々しく開け、教室に戻って行った。
クラスに戻る途中、ずっと頭の中でさっきの映像が繰り返し、再生されていた。
夜。
俺は家には帰らず、ずっと街をぶらぶらしていた。
「はぁ……」
時刻はPM 11:48と携帯に表示されている。
「そろそろ、帰らないとな……」
そうわかっていても、なかなか家に帰ろうという気にはならない。
「はぁ……」
未だぶらぶらと歩き続けていると、いつの間にか路地裏に迷い込んでいた。
「やべ」
方向感覚もなくなってしまってる。
どうしたもんか、と思っていると、人の声がした。
「?」
よくわからないが、とりあえずそちらに向かって歩き出した。
そして、角を曲がった時だった。
「ぶはっ!?」
「きゃっ!?」
人が飛んできて、避ける暇もなくぶつかってしまった。
「な、なんだ!?」
「ご、ごめんなさい!!」
俺の上から、飛んできた人が起き上がった。
「え?」
「あ」
その時、初めて顔を見ることができた。
飛んできた奴は、凛花だった。
「り、凛花!?」
「神也!?どうして!?」
「それはこっちの……!!」
セリフと続けようとしたら、俺と凛花の間にポリバケツが飛んできた。
「神也はそこにいて!!」
「お、おい!?」
凛花の向かった先には、昼に見た映像に出て来たような、怪物がいた。
凛花は地面に落ちていた鉄パイプを拾った。
「ふっ!!」
次の瞬間、鉄パイプが槍に変わっていた。
「はぁ!!」
そして、一気に踏み込み、突きを連続して放った。
「ガァァァァ!!」
怪物は掻き消えた。
「神也、こっちに来て!!」
「お、おう」
俺は腕を引かれるまま、走り出した。
しばらく走ると、廃工場のような物の近くに出た。
「ここまでくれば……」
「はぁ、はぁ」
普段なら、この程度で息を上げることは無いのに、上がってしまった。
「神也、どうしてあそこに?」
「ぶらぶら歩いてたら、な」
「そ、そうなんだ」
一瞬気まずい雰囲気が辺りを支配した。
「ま、まぁ、帰ろう!!」
「そうだな」
そして、俺達が帰ろうとした時だった。
『グォォオォォォォ!!!』
廃工場の方から、咆哮が聞こえてきた。
「な、なんだ!?」
「そんな……!!あそこが巣だったの!?」
「は!?」
そんなことを言っている間にも、咆哮は聞こえて、さっきと同じ怪物が数匹出て来た。
「な、なんだよ、コレ!?」
「トイフェル」
「と……?」
「トイフェル。早い話が魔物だよ」
そう言っている間にも、トイフェル達は近寄ってきていた。
「と、とりあえず、逃げよう!!」
「お、おい!?」
俺の腕を引っ張りつつ、凛花は手にしていた槍を一番近くのトイフェルに投げつけた。
「ギェェェェ!!」
そして、逃げようと走り出そうとした時、囲まれているのに気が付いた。
「そ、そんな!!」
「くっそ!!」
俺に、俺に力があれば!!
凛花を守れるのに……!!
『力を欲するか?』
その時、頭の中に声が響いた。
『汝、力を欲するか?』
(……当たり前だ!!俺に力を!!)
『よろしい、力を与えよう。力を望め、さすれば与えん』
「……俺に、俺に力を!!」
「神也?」
「俺に、力を!!」
俺は、力の限り叫んだ。
すると、右手に重みを感じた。
「!?」
そこには、刀が握られていた。
「し、神也?」
「これで、これで活路を開くぞ!!」
「う、うん!!」
そして、俺は目の前のトイフェルだけを斬りつけていった。
その時、自分の体じゃないような感じがした。
刀なんて初めて手にしたのに、これが初めてとは思えない。
「うらぁぁぁぁぁ!!」
そして、トイフェルたちを撒くことができ、無事家に帰ることができたのだった。
トイフェルは、ドイツ語です。
意味は、魔物
まんまですねw




