第3話 非日常
凛花の制裁をくらった後。
「お、おい、大丈夫か?」
「あぁ、大丈夫だ。あの川を渡ればいいんだろ?」
「だ、ダメだ!!それは渡っちゃいけない!!」
春川が必死に俺を蘇生してくれたおかげで、三途の川を渡らずに済んだ。
「ふぅ……まったく、凛花のやり過ぎな所は変わらんな」
「も、もしかして、昔から?」
「あぁ、昔は目つぶしとかされてたな。ハハッ」
「そ、それは笑いながら言える事か?」
今現在、凛花は自分の席で頬杖をついている。
……負のオーラをまき散らして。
「春川、お前これでも凛花と仲良くなりたいか?」
「え?……まぁ、できればなりたいな」
「は?マジか?」
意外だ。コイツMか?
「Mじゃねぇ!!」
「人の心を読むな」
「読まなくても、お前の顔に書いてあんだよ!!」
「な、いつの間に……」
「実際に書いてあるんじゃなくて、例えだよ例え!!」
「で、なんで仲良くなりたいんだ?」
「相変わらず、切り替え早いですね……」
「褒めるなよ、照れるだろ」
「いや、褒めてないから!!」
「それより、何故だ?」
話が進まんだろうが。
「それは、陸のせいだろ……。だって、面白いし、可愛いし」
「なるほど、自分にも制裁をしてほしいと」
「違ぇぇぇぇぇぇ!!」
うるさいなぁ……。
「ま、どうにでもなっちまえ。凛花ー」
「……なに?」
う……。負のオーラが……。
「春川がお前に告白をしたいんだとよ」
「ちょ、何言ってんだよ!!普通に仲良くしたいって言ったじゃん!!」
「こ、告白!?」
俺の言葉に、凛花はもちろん、周囲の奴らもザワザワし始めた。
「陸、どうしてくれんだよ!!変な空気になっちまったじゃん!!」
「えーっと、春川君、だよね?」
「え、あ、うん」
「ごめんなさい、私には好きな人が……」
「ちょ、凛花さんまでも乗らないでくださいよ!!陸のいたずらだって!!」
「え?」
「だから、俺はただ単に凛花さんと「お付き合い」したいんだ!!って、陸ぁぁぁぁ!?」
「……神也」
あ、やべ。やり過ぎた。
凛花に、負のオーラが再来。
「じょ、冗談だ。やり過ぎた」
ここは素直に謝っておこう。
そうすれば、いくら鬼と化した凛花であろうとも、少しは納まってくれるはず。
「……辞世の句は、それだけ?」
「辞世!?」
ユラッと動き出した凛花。
「まだ、まだ死にたくねぇぇぇぇぇ!!」
「……ニガサナイ」
「ヒィィィィィィ!!」
この後、俺の悲鳴が響き渡ったのは言うまでもない。
「まったく、昔っから変わってないんだから」
「すまんのぉ」
今、俺達は帰宅途中である。
「春川とは、どうなった?」
「あ、一応話したよ」
「そうか、春川の願いも叶ったわけだ」
「今日の昼は炒飯だよね」
「あぁ、そのつもりだけど」
「じゃ、直接神也の部屋に行く」
「了解」
そして、俺達は昼飯を一緒に食って、その後別れた。
俺は、なんとなくテレビをつけて、ニュースを見ていた。
『次のニュースです。昨日、B県で起きた惨殺事件です』
「ん?そんなことがあったのか?」
『犯人は未だ逃走中……』
気をつけなきゃな。
その後、凛花から今日の晩飯はいらない、と連絡がきた。
なんでも、両親に呼ばれたとか。
「1人で飯か」
何しよう。
「ふぁぁぁぁ……」
とりあえず寝よう。
俺は布団にもぐりこみ、目を閉じたのだった。
「ん……」
目を開け時計を見ると、PM11:00と表示されていた。
「やべ、寝過ぎた」
とりあえず、軽く飯を食って寝よう。
冷蔵庫を開けると、ほとんど材料はない。
「あ、買ってくるの忘れてた」
仕方ねぇ、コンビニ行こ……。
財布を後ろポケットに突っ込み、部屋を出た。
外に出た途端、強い風が吹き付けてきた。
「……」
嫌な予感がするな。
ま、気にしない、気にしない。さっさと行こう。
俺は、コンビニに向けて歩き出した。
「ふぅ……」
なんとなく空を見上げると、満月が浮かんでいた。
「綺麗だな」
しかし、故郷の方が星は綺麗に見えた。
それを思い出し、少しホームシックになりかける。
「はぁ……」
そこから5分程歩いた時だった。
グチャ……ピチャ……
「ん?」
変な音が……それに臭いも……
「こっちの方からか?」
俺は音のした方に行ってみた。
角を曲がった瞬間だった。
ペチャ
「ん?」
水たまりを踏んだみたいな音がした。
足元を見ると、紅いものが流れてきていた。
「え……?」
それが流れてきた方に、顔を向けた。
そこには、紅い塊を貪っている何かがいた。
「グチャ、グチャ」
「うっ!?」
その光景を見た瞬間、胃液が逆流してきた。
紅い塊が何か分かってしまったのだ。
あれは、人間。いや、人間だった。
「オエェッ!!」
肉片が塀や地面に張り付き、腕らしきものは怪物の口から垂れている。
「げほっ、げほっ!!」
「グ?」
俺の咳に怪物が気が付いた。
ソイツが俺に向き直った時、俺の体は硬直してしまった。
「グルルル……」
唸り声をあげ、俺ににじり寄って来ているというのに、俺の体は言うことを聞いてくれない。
(動け、動けよ!!)
「グァァァァ!!」
「がはっ!!」
俺は怪物の腕に吹き飛ばされ、塀にぶつかってしまった。
意識が沈んでいくのが分かる。
(ここで死ぬのか……)
特に面白い人生でもなかったが、満足はしている。
でも、
(あぁ、まだ死にたくねぇな……)
怪物はもう目の前で、口を開けている。
そこで、俺の意識は完全に沈んでしまった。
――『ったく、見てらんねぇな。オレに任せな』
オレは怪物を、掌底で吹き飛ばした。
『久しぶりだな、外も』
オレは右手を前に突き出し、詠唱をする。
『古の力よ、我が右手に出現せよ』
オレの右手には、刀身が深紅に染まった刀が出現した。
『さぁ、始めようぜ。化け物さんよぉ!!』
オレは立ち上がったばかりの怪物に斬りかかった。
「グオォォォ!!」
一瞬で相手の邪魔な腕を切り落とし、逃げれないように足を切り落とす。
『面白くねぇな。じゃあな、糞が』
その瞬間、数千の刀が怪物を取り囲み、切り刻んでいった。
「ガァァァァァ!!」
『ちっ、もう限界かよ。……家に帰っておいてやるか』
オレは刀を消し、家に向かって歩き出した。
よし、何とか更新できたぞ!!




