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「お前は追放だ!」と近衛を解雇された男爵令嬢、生まれ故郷の辺境都市にて最強衛兵となって活躍する 〜赤虎姫と呼ばれた最強の人形使いはTS転生貴族令嬢!?〜   作者: 自転車和尚
第四章 獣たちの狂乱

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第一五七話 平定者 〇一

「さあ到着しましたわよ、ライオトリシアッ!!!!」


「……いえ、ここはヴルカノでございます」

 腰に手を当て今にも高笑いをしそうな皇女エリーザベト・ヴァイラ・ゼルヴァインの一歩後ろに控え、首を垂れる『破城鬼(デモリトル)』グウィード・デュ・コンスタンタンはそっと事実を伝えた。

 ヴルカノは帝都からライオトリシアに向かう道中からは少し外れた城塞都市の一つで、この街を支配するヴィセンテ・ウルバーニ子爵は辺境地域にあっては珍しく第二皇子派に属する貴族でもある。

 第二皇子テーオドリヒ・ヴァーミル・ゼルヴァインとエリーザベトの関係はそれほど悪くないのだが、彼女がグラディスに懐いていることもあり、派閥の貴族からするとあまり良い印象がない。

 とはいえ帝室に連なる血筋であるエリーザベトを邪険に扱うことはないだろうが、彼らが来ても子爵家の人間がここへと馳せ参じないのは不敬にも程がある。

「……そうだったかしら、まあライオトリシアはもう少し大きな都市だった気がしますわ」


「ヴルカノは要塞を元にしておりますしな」


「ではライオトリシアではございませんわね!」


「……はい、ここはヴルカノでございます」

 過去の戦争においてヴルカノは帝国拡大期における激戦地に建設された要塞の跡地に造られており、小高い丘を利用して造られた緩やかな階段の先に城塞が聳えている。

 戦争中期にはすでに要塞としての機能は過去のものとなり、どちらかというと帝国の威光を示すために維持されているといった様子ではあるが、それでも街並みは整然としており美しさを感じるものだ。

 道をゆく警備兵の数は多く物々しい雰囲気を感じさせる……エリーザベトは不思議そうにそれを眺めた後、手に持った扇を口元に当てた。

 それに気がついたグウィードは、部下の一人に視線を送るとそれに応じた一人の護衛騎士が懐から折り畳まれた書類を取り出すとおもむろにそれを読み上げる。

「……ここ数年だそうですが、山賊化した帝国兵による襲撃が相次いでいるとか」


「またか……辺境地域は無法地帯だな」


「山賊の中に人形使い(ドールマスター)がいることもあって、攻めあぐねているようですね」

 戦争終結後しばらくしてから軍を離れた帝国兵が山賊化し旅人を襲うという事例が増え、その対処に帝国軍が駆り出されているのだが、帝都に近い地域ではそれができても、辺境地域になると軍を派遣することが難しく、結果的に地方貴族に丸投げされているケースが増えている。

 ライオトリシアのように独自の部隊を組織し山賊への攻撃を行う都市もあるが、大半は都市そのものを攻撃する山賊への対処のみに止めていた。

 そのため街道沿いの防衛などはあまり手が回っておらず……先日のように人形馬車(ヴァリストラ)目当てに攻撃してくる山賊なども後を絶たない。

「ふーん?」


「……子爵は対処しておらんのか?」


「一年ほど前に攻勢に出たそうですが、その時の影響で負傷したとかで……」


「怪我をして前線に出れなくなったか」

 問いに対して護衛騎士は残念そうに頷くが、こういったケースは地方ではよくある光景だとグウィードは過去の経験からよく知っていた。

 最前線勤務で無傷でいられることなどそう多くはない……グウィードも散々に怪我をして動けなくなったこともあるし、後遺症でそれまでの活躍ができなくなった友人なども多い。

 ウルバーニ子爵は戦争中最前線で戦っていた武闘派貴族のイメージがついて回っているが、一度軍で見た彼はどちらかというと一歩引いて戦局をコントロールする方が似合っているように思える。

 第二皇子派の中でも穏健派に属しており、相反するイメージに苦しんでいる……夜会で軽く話をした際にはそう思えたものだ。

 できれば彼が困っているのであれば助けたいが……とグウィードは皇女へと視線を向けると、エリーザベトは軽いため息と共に鋭い視線を彼へと返した。

「おねだりは声に出さなければ対応しないわ」


「……姫殿下(プリンキピッサ)、子爵は知己でして助力をしたいと考えます」


「よろしい、ではその山賊共を殲滅しグウィードの友を助けて差し上げましょう」


「聞いたか? ではその山賊どもがどこにいるのかを調べよ」


「「「はっ!!!」」」

 護衛騎士たちは軽く一礼するとすぐにあちこちへと散らばっていく……護衛騎士たちが駆け出すのを、ヴルカノの住人たちは少し怯えたように見つめている。

 見たこともない巨大な人形馬車と、銀色の髪を靡かせた美女……そして筋骨隆々の大男に完全武装の騎士たちは異様で、何か粗相でもあれば首を刎ねられかねない状況だからだ。

 特になぜか人形馬車の屋根に立ち長い銀髪を風に靡かせる女性は、明らかに貴族然としたその風貌もあり『関わったらまずい』という空気を醸し出している。

 だが美しい女性が目立つ位置に立っているということもあって、子供たちは興味津々にその姿を見上げていた。


『パパー、お姉さんなんで馬車の上に立っているの?』

『ば、ばかっ……指をさすな!』

『銀色だー、細ーい』


「姫殿下目立ち始めておりますゆえ、そろそろ降りていただいた方が……」


「グウィード……どうやらこちらから攻める必要はないみたいよ」


「え? ……護衛騎士もどれっ!!」

 エリーザベトの言葉に目を丸くしたグウィードだったが、微かにだが聞き慣れた駆動音が聞こえたことで、慌てて魔道具を使って護衛騎士たちへと号令のための警告を鳴らす。

 人形馬車がこの街へと入ったのを監視でもしていたのだろう……山賊がわざわざ人形騎士(ナイトドール)を使って略奪しに来たということは、子爵とその軍隊には抵抗する力がないと踏んでいるからだ。

 そしてこの人形馬車はとにかく目立つため、彼らは子爵軍を蹴散らして搭載されているであろう人形騎士を奪い、さらなる破壊と殺戮を繰り返すつもりなのだ。

 これに積まれている人形騎士がなんであるかも理解せずに攻めてくるとは……と、グウィードは屋根に立ったままじっと遠くを見つめているエリーザベトを見上げる。

「姫殿下! フロル・ティタニクスを起動させます」


「わかりました、我が名の元に帝国臣民に安寧と安全を」


「御意……ッ! まわせーっ!!!!」

 グウィードは敬愛する姫殿下へと敬礼を見せると怒号にも似た声をあげて人形馬車の扉を開けて、愛機へと乗り込むために体を押し込んでいく。

 ようやく街を守る帝国軍による警報が街中に鳴り響くが……あまりに遅いな、とエリーザベトは軽く舌打ちを鳴らす。

 周りでは悲鳴と怒号が上がり、街に住む住民たちが逃げ惑っていく……ウルバーニ子爵が実質的に動けなくなったことで、ここにいる帝国軍そのものが恐ろしいまでに弱体化しているのだ。

 実質的な指揮官である子爵が動けないことで、指揮命令系統が完全に狂っているのもあるのかもしれないが、山賊如きに帝国軍が屈してはならないのだ。

「護衛騎士よ、帝国臣民の安全を最優先になさい!」


「「「御意っ!!」」」

 エリーザベトの号令に合わせて護衛騎士たちが一気に動き始める……街を守る帝国軍に先んじて、隊列を組むと街の入り口へと向かっていく。

 彼女が率いている護衛騎士たちは数こそ少ないが、一人一人が一騎当千の猛者たちばかりである……先日山賊の砦を襲撃した際にも、怪我人こそあれど死者は一人も出していない。

 そして……とエリーザベトが扇を軽く閉じるとともに、足元の人形馬車から力強く響く低い鼓動が体を震わせていく。

 英雄にしてエリーザベトが従える人形使い最強の一角……グウィード・デュ・コンスタンタンの操る騎士(パラティヌス)級人形騎士フロル・ティタニクスが重い音を立てて開く人形馬車のハッチから立ち上がっていく。

 それを見たエリーザベトは口元を歪めて笑うと、まるで自らが従える悪鬼に命じるかの如く山賊たちがいるであろう方向へと指を差して叫んだ。


「グウィード、この帝国に仇なす山賊は全て我が名において殲滅します……フロル・ティタニクスよ、前進せよッ!!!」

_(:3 」∠)_ 肩に乗りそうだなこの姫様


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