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マリーよ、竜に乗れ!~無能王女は竜人国で覚醒しました~  作者: 流あきら


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21 ドラコ

「なんだあれは!」


 紫の霧がゆらめくと、魔物の大群があらわれる。

 狼に似た魔物、怪狼(フェンリル)だった。

 沼地からこちらへやってくる。


「数十……いや百匹以上……なぜこんなに」


 騎士団の中から驚きの声があがる。


「一旦退却だ」


 アスランが鋭く命じる。

 

 だが――


鷲獅子(グリフォン)だと!」


 一同はあえぐような声をあげる。

 背後にはいつの間にか空を鷲獅子(グリフォン)が覆っていた。

 出現するまで、誰も気づかなかったのは、衝撃だった。


「多いな」

 アスランの言葉に


「こちらは密集しておりますので、竜変異(メタモルフォーゼ)も……どういたしましょう」

 部下が緊張した面持ちで指示をあおぐ。


障壁(バリア)を張りつつ後退しろ」

 アスランは指示を出し、一同は後退する。


(マリー。集中して)


 その時再び声が聞こえた。


(ドラコ?どうすればいいの?)

(大丈夫。こいつらにはマリーを傷つける事はできない。風を思い浮かべるんだ)


 後退しながら精神を集中するのは難儀だった。

 だがハネスの元での修行の効果も、幾分かはあったのかもしれない。


 そして、空にいる鷲獅子(グリフォン)の大群が一行に襲いかかろうとした。


 その瞬間――


「な、なんだ!?」


 竜人国の騎士団は驚きの声をあげた。

 鷲獅子(グリフォン)は数十メートル先の透明な壁に触れると、一瞬にして体がバラバラになる。


「おい。風魔法を使ったのか?」

「いえ。ただの障壁(バリア)です。何でこんな」

 魔術師らしき数人が戸惑いの表情を見せる。


(いいよ、マリー。その調子だ)


 ドラコの声だった。


 いつのまにか、マリー達の一団は停止していた。

 マリーは目を閉じ、ドラコに言われたように風を思い浮かべていた。

 周囲の視線がマリーに集中するのを感じる。


 マリーは暖かな波動を感じていた。

 そしてマリーの体から光が広がっていく。


「そうか!」

 アスランは何か理解したようだった。


「攻撃しろ!マリーのまわりをあまり離れるな」


 マリーはそっと目をあけた。

 光の渦が、騎士たちを包み込んでいた。

 一人の騎士が前方の怪狼(フェンリル)向けて矢を放った。

 恐ろしい速度で飛んでいくと、十匹以上まとめて貫く。


「なっ……これは」


 弓を射た騎士自身が驚いていた。


「竜の巫女の力だ。竜の真の能力を引き出す力だ」


 アスランは言った。

 その言葉が騎士たちに与えた効果は驚異的なものだった。

 たちまち士気を取り戻し、顔に生気が蘇る。


「勝てるぞ!」

「竜の巫女の力があれば百人力だ!」


 彼らも竜の巫女の存在とその力については知っているらしい。

 

 今度は騎士団が反撃する番だった。

 弓を射かけ、剣をふるい、魔法の炎で攻撃する。

 魔物たちはたちまち数を減らしていった。


(気を付けて、マリー。そろそろ来るよ)

(わかったわ)


「みんな、来るわよ。注意して!」


 マリーの声に、騎士たちは再び表情を引き締める。

 既に大半の魔物は倒していた。


 前方の毒沼(アイトモズル)の上に、黒い霧がただよっている。

 それが見る間に集まり、一つの形をとった。


「闇の竜?」


 確かに(ドラゴン)の形をしている。

 だがそれを構成しているのは生身の肉体ではなく、黒いもやのようなものだった。

 一人の騎士が矢を射かける。

 だがそれは何の手ごたえもなく、闇の竜に吸い込まれる。

 

 魔術師が炎を発する。

 しかし結果は同じだ。

 炎は竜の形をしたもやの向こうへと突き抜けていっただけだった。


(そいつは、剣や普通の魔法じゃきかない。そこの王子の力が必要だ)


 マリーはドラコの言葉を聞くと、アスランに向かって言う。


「アスラン。竜変異(メタモルフォーゼ)よ」


 アスランは余計な事を言わなかった。

 一同は彼の周りから少し距離をとった。


 見るまにアスランの体が光に包まれた。

 そして巨大な黄金の竜の姿に変身する。

 

 闇の竜は恐ろしい叫び声を上げた。

 周囲の紫の霧を吸ってさらに巨大化する。

 

 そして口から緑の霧をこちらに向かって叩きつける。

 空間が歪むような衝撃だった。

 だが魔術師達の障壁(バリア)が何とか持ちこたえる。


(マリー。今度は太陽を思い浮かべるんだ)


 マリーはドラコの言葉通りにした。

 そしてその光が、竜の姿になったアスランに向けて降り注ぐように想像する。


(よし。炎の霧だ。王子にそう言えばわかる)


「炎の霧よ、アスラン!」


 竜に変身(メタモルフォーゼ)したアスランは、大きく息を吸い込むと口から、光り輝く息を吐き出す。

 闇の竜は、それを回避しようとした。

 だがあまりにも強烈で広範囲にわたるものだったので、回避しきれず直撃を受ける。


 闇の竜は断末魔の声を上げて、黒い霧となって虚空へと昇っていき、やがて見えなくなった。

 しばらく騎士団たちは周囲の気配を探る。


「もうこのあたりに魔物の気配はありません」


 マリーは大きく息を吐いた。

 自分でも意識していなかったが、相当緊張していたらしい。


「こいつが魔物たちの主だったのか」


 いつのまにか人型に戻ったアスランが傍らにいた。

 

 やがて、毒沼(アイトモズル)を覆っていた紫の霧が風に吹き飛ばされて消えていく。

 みるみるうちに、毒沼(アイトモズル)が澄み渡る

 水は透明になり、緑の水草が生い茂っていた。


 マリーとアスラン達は呆然とそれを眺めていた。


「これは……一体」


そして霧が晴れた湖のほとりには、一匹の小さな子供の(ドラゴン)がいた。


「やぁ、ありがとう、マリー。これからよろしく」


 ドラコは言った。

読んでいただき、ありがとうございます。


「面白かった!」

「続きが気になる」


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