21-08 挙国会議(2)――准将の虚構、生きていた因縁
クロイツ・ハーパーベルト准将視点
あの隔離施設で、エインズフェローの護送に失敗して捕らえられてから。
宇宙軍の艦艇の一室に拘束された。
だが俺を監禁した連中の服装は、宇宙軍のそれではなかった。
やはり貴族側の手の者なのだろう。
俺が監禁された艦船はその後、どこかへ移動した。
全貴族総会の集まる商都側だと思う。
食事の差し入れはされたが、尋問を受けたり、薬を投与されたりなども無かった。
違法な拘束からの解放を求めたが、「申し開きの場は別途設ける。それまで大人しくしておけ」と返されるだけだった。
数日そうやって拘束されている間に、艦船は再度移動した。
そして奴らは俺を部屋から出した。
船から降り立ったそこは、帝都側の宇宙港だった。
俺は拘束されたまま、車で帝都内の大議場まで連れてこられた。
そして、タイミングを見て議場内に引きずり出された。
広い。天井が高い。
壇上には皇帝が座し、皇太子と第三皇子が並ぶ。
フォルミオン第四皇子は、彼らの二段下に控えている。
あれは……臣下の立ち位置だ。
そして帝室の面々と向かって反対側には、全貴族総会の面々が半円状に陣取る。
貴族達の中にはラズロー中将やカルロス侯爵の姿も見える。
脇の方には、政府の大臣達、宇宙軍統合本部の高級武官達。
視線、視線、視線。
そのすべてが、こちらを値踏みしている。
そして議場中央では、近衛隊に拘束されている、カエサリスとグロスターの両宮廷伯。
どうやら、中将や侯爵の拘束について、陛下の関与を問い質していると言ったところだろう。
「氏名、階級、職責を述べよ」
トッド侯爵の声が響く。
「帝国宇宙軍第八情報部所属、クロイツ・ハーパーベルト准将だ。
私を拘束している理由と、この場はどういった場なのかを尋ねたい」
俺の答えに、ざわめきが波のように議場を撫でた。
トッド侯爵は、俺の問いを受け流すように視線を落とし、手元の資料をめくった。
「よかろう。質問に答えよう。
この場は、”挙国会議”だ。今まで一度も開かれたことは無かったが、帝国貴族の九割以上の動議によって発議した。
この場において、帝室の脱法行為を追及しているところだ」
挙国会議……だと!?
まず開かれることは無いだろうと死文化されていた、あれが?
「そして君を拘束している理由だったな。
君は、帝都北部に広がる環境保護用の保護森林区域内に密かに建てられていた、隔離施設で拘束された。
帝国に届け出なく、違法に保護森林内に立ち入り、勝手に施設を建設していたこと。
そしてその施設で、ラズロー中将やカルロス侯爵、それから”クロップス宙賊団”に拉致されたはずのケイト・エインズフェロー女史を違法に拘束していたためだ」
「……理由はわかったが、正規の軍憲兵や警察などに捕らえられるならともかく、貴族の私兵に捕らえられる理由は無い」
「君達を拘束したのは確かに我々全貴族総会が派遣した部隊だ。彼等には、我々の権限で帝国法に反する行為を検挙する”代執行”権限を与えていた。
そして捕らえた君達は速やかに近衛隊に引き渡している。
法的に問題になる事は無いと、帝国政府の法務省にも確認済だ。異論はあるか?」
貴族達に捕らえられる筋合いはない。
一刻も早く、この拘束を解かねばならん。
そう思ったのだが、貴族側が法的手続きをしっかり固めていて反論を封じられる。
内心苛ついた。
「異論がないようなので、事実確認から始める」
乾いた声。
裁く者の声音だ。
「貴官は、保護森林内に所在する隔離施設および、隣接する諜報部隊訓練施設の責任者であるな」
「……その通りだ」
あそこで拘束されていた部下達からも、既に聴き取りを終えているのだろう。
ここで抵抗する意味は、あまりない。
「所属は宇宙軍情報部。
しかし実質的な上司は、ハインリヒ・グロスター宮廷伯である。違うか」
一瞬、視線がグロスターへ向く。
近衛に囲まれたまま、あの男は微動だにしない。
「命令系統上の調整役として、宮廷伯と連携していた。それだけだ」
「では、ラズロー中将、カルロス侯爵、エインズフェロー女史を隔離していたのは誰の指示だ」
「宮廷伯の指示だ」
再びざわめき。
ラズロー中将の視線が、鋭く突き刺さる。
あの男には、まだ俺の正体は見えていないはずだ。
「皇帝陛下の関与は」
「知らない。宮廷伯に聞いてもらいたい」
俺は淡々と答える。
ここまでは想定内だ。
俺は駒だ。
だが、捨て駒ではない。
この場で軽率な言葉を吐く理由はない。
トッド侯爵は小さく息をつき、議場の入口へ視線を向けた。
「では、別の証人を招喚しよう」
扉が開く。
電動車椅子に乗った、右が義脚である痩せた初老の男。
身体のあちこちに線が繋がれ、その線は彼の背後にある医療機器らしきものに繋がれている。
レバーを使って自分で車椅子を動かしてはいるが、介助の為か、若い女性の看護師が付き添っている。
「久しぶりだな」
男は、俺の前に車椅子を進めて言う。
だが……この男は誰だ?
”ハーパーベルト”としての知り合いには、この男は思い当たらない。
「分からんようだが……まあいい。
まずは、ごほっ、君の来歴についてだ」
咳混じりの声。
「クロイツ・ハーパーベルト、商都生まれ、57歳。
国立帝都大学政治学科卒。
歴史政治学を専攻し、卒業後は研究者としてそのまま帝都大学に在籍していた。
合っているか?」
「……ああ、その通りだ」
この男、大学での顔見知りか?
……だが当時のあらゆる記録を思い返しても、やはりこの男はいなかったと思う。
「十五年前、カランダス星系へ家族旅行中に事件に巻き込まれた。
その際に夫人と子供二人は死亡、君も一時、生死の境を彷徨った」
「……その通りだ。退院するまで一年以上掛かった」
「その際に見た軍属の制服の記憶を頼りに、犯人を追うため軍に入った」
「そうだ」
――それが、ハーパーベルトとしての“設定”だ。
書類も、それを裏付けるように整っている。
「ラズロー中将とは、研究者時代に家庭教師として交流があった」
「そうだ」
ラズローが眉をひそめる。
男は、わずかに口元を歪めた。
「……今回、全貴族総会の全面協力のもと、色々と君について調査させて頂いた。
事故当時のCT画像、君を捕らえた際のCT画像から骨格の比較をおこなったが、相違は無かった。
DNA情報も事故当時のものだけではなく、出生時に登録されたものも調べたところ、現在の君のDNAと一致している。
これらの情報は、君がクロイツ・ハーパーベルト本人であることを示している」
……ちょっと待て。
この男は何故、そんなところまで調べている。
まるで、俺がハーパーベルト本人ではないと確信しているのかのようだ。
だが、グロスターは出生時のDNA情報まで遡ってすり替えたと言っていた。
抜かりはないはずだ。
「君が両親と血縁関係がある実子であることは、出生時の病院の記録まで遡って調べた。
だが、今の君のDNA型を鑑定したところ、君のどちらの親のDNA型とも一致しない。
これは、どういう事なんだろうな」
両親の、DNA型だと……何故今更、そんなものが?
男は合図を出すと、スクリーンにDNA鑑定書が表示される。
俺のDNAと、ハーパーベルトの両親のDNAに対する、親子鑑定だ。
結果は、どちらの親のDNA型とも一致率が低い、とある。
「十五年前の事故当時は、君の……クロイツ・ハーパーベルトの両親は既に病没していた。
だが君が生まれる前。君の両親が若い頃に、出身のクラターロ星系で骨髄バンクに登録していた記録が見つかった。
その時に採取されたDNAサンプルが、冷凍保存されていたのだ」
なっ……なんだと!
グロスターも、両親のDNAまでは見つからなかったと言っていたじゃないか!
帝都から離れた星系まで手を伸ばせなかったのか?
「出生記録も残っているし、病院での取り違えも無かった。
君の両親が養子関連の手続きをした記録もない。
考えられるのは……君のDNA情報だけ、後からすり替えられた可能性だ」
男は、トッド侯爵の方を向いて言う。
「DNA情報のすり替えを証明することは出来ん。
だが、両親のDNAサンプルが残っていた以上――この男がクロイツ・ハーパーベルト本人ではないことだけは、確かだ」
議場の空気が凍る。
「……お前は一体、誰だ。
私が教わった先生は、お前なのか。それとも……」
ラズロー中将が、俺の方を向いて呟く。
胸の奥が、ひくりと疼く。
「この、くそ野郎……」
思わず漏れた。
男の目が細まる。
「十五年前の事故……本当に事故だったのかね」
議場が静まり返る。
「家族を失った研究者が、偶然にも軍属の制服を見て、復讐のために軍へ?
都合が良すぎる物語だ」
やめろ。
それ以上踏み込むな!
「恐らく本物のハーパーベルトは、あの事故で死亡している」
空気が割れる。
「君は、彼の身分を引き継いだ何者かだ」
議場中の視線が一斉に刺さる。
――違う!
そう喉まで込み上がった言葉を、俺は呑み込んだ。
ここで感情を露わにすれば、それこそ“本物ではない”と認めるようなものだ。
「証拠はあるのか」
できる限り平板な声で返す。
「推論だけで人を裁くつもりか。
挙国会議という御大層な名前の割に、随分と粗略な裁きの場だな」
貴族どもが顔色を変える。
「事故後十五年もの間、ハーパーベルトとして振る舞っていた君だが。
DNA鑑定は別人であることを示している。
これは、推論ではない明白な証拠だ」
だが車椅子の男は反論する。
後ろの雑多な貴族どもはともかく、ミツォタキス侯爵もトッド侯爵も動じる様子はない。
「出生時のDNA情報と一致している以上、残っていた両親のDNA情報が間違っているのではないか?」
「父親のものと一緒に、父親の妹の骨髄サンプルも保存されていた。
兄妹の関係である二人のDNA情報は、高い一致性が確認された。
骨髄サンプルから採取したDNAの実物に対する検査である以上、間違いである可能性は低い」
俺の反論は、車椅子の男が封じて来た。
「適合しないのは君のDNA情報だけだ。
であれば、君が別人である可能性は極めて高いな」
ミツォタキス侯爵が追い打ちをする。
そんな古いDNA情報が残っていたとは。
グロスターは何をやっていたんだ、全く……。
だが、俺は気付いた。
「……それで?
仮に私がクロイツ・ハーパーベルトではなかったとして。
それが、中将やカルロス侯爵の拘束と、どんな関係があるというのか」
俺がハーパーベルトでなかったと知られても。
今の尋問に……ラズロー中将やカルロス侯爵の拘束に対する皇帝の関与については関係ない話のはずだ。
「君の身元自体は、中将や侯爵閣下を拘束したことやその経緯とは無関係――そんな主張は、通らないのだよ」
車椅子の男が告げる。
「そもそもDNA情報を洗わなければ別人であると誰も気づかなかった。
そのようななりすましが、どの様にして可能となったかが問題の一つ」
男が問題点を指摘し、指を立てていく。
「そして政治歴史学専攻という一介の大学教授が、十五年前に突如職を辞し宇宙軍に入隊したわけだが。
どうして何も実績も無い者が入隊後に即、准将待遇となり、新設の情報部門を任されたのか。
そこがもう一つの問題。
――つまり君の存在自体が、帝室と帝国宇宙軍上層部との”不適切な関係”を疑わせる」
なっ……!
俺は、とっさに反論の言葉が出なかった。
「便宜上、君の事はハーパーベルトと呼ばせてもらう。
だが、君の正体も気にはなるが、一旦君の事は後回しだ」
ミツォタキス侯爵がそう俺に告げる。
「宇宙軍統合本部、クララット大将。あなたにも、尋問させてもらう。
こちらに来たまえ」
トッド侯爵がそう宣言すると同時に、俺は端に追いやられ、近衛隊によって囲まれる。
グロスター宮廷伯とは近い場所だが、向こうも近衛隊に拘束されており、彼と話ができる状況ではない。
そして、近衛隊の連中に引き立てられて議場中央にやってきた、クララット大将。
よく見るとその男は……確かに俺は、会った事がある。
「宇宙軍に入隊して来た時点で四十を過ぎていたハーパーベルトの為に、第八情報部を設立して宛がったのは、貴方でしょう。
どうして、そのような事を?」
トッド侯爵が、クララット大将に問う。
そうだ……思い出した。
宇宙軍内部に俺の場所とポストを用意したのは、あの男だ。
「さあ、そうだったか。
何せ大分前の事なので、覚えておらん」
クララット大将は、そう嘯いた。
「ガールス元帥。当時の記録を、引き出せるか」
ミツォタキス侯爵が、ガールス元帥……宇宙軍統合本部長に問う。
「しばし待ってくれ……あった。
当時の接見の議事録がアーカイブから見つかった」
老齢であるガールス元帥が発言する。
「出席者はグロスター宮廷伯と、クロイツ・ハーパーベルト氏。
接見したのは当時の内務参謀副長クララット中将と、副官バーキンス中佐。
議事の内容は機密事項として消去されている」
そう言えば軍に入る前に、俺はグロスターと二人でこの男に会ったのだったか。
「ただ……この接見の時点では、ハーパーベルト氏とピメット氏は民間人の扱いだった。
しかしこの接見からわずか三日後に、彼らの宇宙軍入隊と第八情報部への配属が決まっている。
辞令を出したのは……当時の内務参謀副長クララット中将。今目の前にいる、彼だ」
ガールス元帥の発言に、議場内がどよめく。
「クララット大将。どういうことかね」
「……グロスター宮廷伯に頼まれたのですよ。
彼等に軍で居場所を作ってくれとね」
クララット大将は、グロスターとの繋がりを自白した。
「調査向きの人材だと伝えられたのだが、既存の部隊に放り込んでも溶け込めないだろう。
だから、彼らに新設部隊を作らせたのだ。
実際、ラズロー中将の指揮下に入れて軍の内偵に当たらせたら、成果を出してくれたしな。
採用の経緯はともかく、成果を出している以上、詰められる謂われはないはずだ」
その言葉に、議場の空気が一瞬だけ緩んだ。
成果を出している――確かに、それは事実だ。
ラズロー中将と組んで、何年も帝国各地で宇宙軍の現地部隊の内偵を進め、不正の摘発を進めて来た。
俺自身、その自負はある。
だが。
「成果があれば、手続きは無視してよいと?」
静かに、だが明確な棘を含んだ声が割り込む。
車椅子の男。
「部外者に口を挟まれる筋合いはない。
大体、貴様は何者だ。
ここに来て以来、名乗りもしていないだろう」
クララット大将が、車椅子の男に詰め寄る。
「そう言えば、名乗っていなかったか。
――私は元帝国宇宙軍、ダニエル・バートマン。最終階級は中佐だった。
全貴族総会の求めにより、あなた方の尋問を担当することになった。
何故私なのかは、追々明らかになるだろう」
車椅子の男の名乗りに、俺は血の気が引いた。
――ダニエル・バートマン。
十七年前当時の……クーロイ星系、3区コロニー管理責任者。
覚えている奴の顔と比べれば、痩せて頬はこけているが。
言われてみれば、似ている。
目の奥にうかがえる理知的な、全てを見透かすような眼差し。
生きて、いたのか――しかし一体、どこで?
同時に、当時バートマンと対峙した時の事を思い出す。
「バートマン……」
思わず、呟きが漏れる。
「とある星系にて、コロニー管理責任者をしていた。
なり手が居ない為に責任者業務を十年勤めていたが、内務規定通りに長期の責任者業務に対する監査が入った後、不正も無いのに辞めさせられた。
そうして我々には内務規定の遵守を強いておいて、自分はそう言った規定を無視して人を入れる。
一体、貴方は何様だというのかね?」
車椅子の男――バートマンの言葉に、クララット大将は鼻で笑う。
「なんだと思えば逆恨みか。
確かに准将待遇でハーパーベルトを入れたのは、手続き上問題があったかもしれない。
だが、結果として彼とそのチームは正しく成果を挙げている――ラズロー中将と組む前からな。
君が辞めさせられたのは、単に君に瑕疵があったからだろう」
「辞めさせられた……というのは、正確ではないな。
私は、辞めざるを得なくなったのだ。
――あなたが差し向けた監査チームに、直接殺されそうになったからな」
車椅子のバートマンが、クララット大将に告げる。
まさか、バートマンの奴。
俺達があいつを殺しに行ったことに対して、クララット大将を問い詰める積りか。
クララット大将は、バートマンの言葉に目を見開く。
「殺されそうに……バートマン……。
ま、まさか――お前が管理責任者を務めていたという、コロニーは……」
クララット大将から洩れる呟きからすると、彼もバートマンの正体に気づいたらしい。
大将の顔色が変わった所を見ると、あいつも十七年前の件に関わっているようだ。
あの大将は、確か事務方一筋の男だったはずだ。
グロスターから、以前聞いたことがある。
大将まで昇り詰めているだけあって肝は据わっているだろうが、俺と違って尋問に耐えるだけの訓練は積んでいないだろう。
これ以上クララットを責められると、不味い事になりそうな気がする。
バートマンめ――くたばってしまえばいいのに。
……だが。
音声データは自分でプロテクトを解除し、中身を確認した後で処分した。
管理エリアの船も恒星に突っ込ませて、跡形もなく消した。
十七年前の証拠は、もうどこにも残っていないはずだ。
だからこの尋問でクララットの奴が何かを漏らしたとて……。
グロスターと俺は処刑されるかもしれんが、それ以上の事にはならない筈だ。
それに……この場には、マクベスが居ない。
万が一貴族側に捕らえられていれば、有無を言わさず引きずり出されているはずだ。
奴の存在は、皇帝陛下にとってのアキレス腱でもある。
いないという事は、全貴族総会もあの大佐を捕らえられていないのだろう。
アイツは、俺達サイドの切り札だ。
マクベスさえフリーであれば――。
如何に我々が追い詰められようと、逆転の目は十分にある。
……後始末はかなり大変だろうが、ここで破滅することに比べれば些細な問題だ。
「いい加減にしてくれないか」
議場に突然、声が響く。
この声は……陛下だ。
「この”挙国会議”は、国難事項を扱うのではなかったのかね、ミツォタキス侯爵。
それが蓋を開けてみれば、高位貴族の不当拘束と、帝国宇宙軍の高官による不正の疑いだけだとは。
それも、確たる証拠も無い状況だ」
「お待たせしているよう申し訳ありませんな。
ですが挙国会議の本題は、これからなのです。
今しばらく、お付き合い頂ければと存します」
侯爵の返答に、陛下はふん、と鼻を鳴らす。
「……まあいい。今しばらく付き合ってやろう。
だが、少々疲れた。しばらく休憩を取らせてもらっても良いか」
陛下の言葉に、ミツォタキス侯爵はトッド侯爵と少し小声で話したあと、陛下の方に向き直る。
「分かりました。十五分ほど休憩を取りましょう。
陛下の後ろにある扉の奥に、控室を用意しております。
時間が来ればお呼びしますので、そちらでご休憩頂ければと存じます」
侯爵の回答に、陛下は頷いて立ち上がる。
「休憩後の議論が、有意義になる事を望む。
お互い暇ではないのだからな」
そう言い捨てて、陛下は侍従を引き連れて扉を出て行く。
「我々にも休憩場所を用意してもらえるか」
「殿下がたにも、別の控室を用意しております」
皇太子殿下の発言にトッド侯爵が答える。
皇太子と第三皇子が立ち上がり、陛下とは別の扉から控室へと出て行く。
未だにマクベスや彼の配下を証人として出してこない以上、アイツは全貴族総会の手に落ちていないと見ていいだろう。
で、あれば……陛下へ累が及ぶことは、恐らく無い。
カエサリスやグロスターは罪を被って処刑されるかもしれん。
最悪は、俺もそうなるかもしれない。
だが俺が処刑されたとしても、組織は生き続ける。
あの保護森林内の施設とあそこに居たメンバーが、俺達の全てではない。
グロスターの息子は、グロスターの現在の職務には全く関わっていない。
残った組織は、グロスターの息子にでも引き継がせればいい。
そして。
「……くたばりやがれ」
バートマンめ――絶対に、後で始末をつけてやる。
いつもお読み頂きありがとうございます。
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よろしくお願いいたします。




